台湾出身の21歳ウー・チャイェン選手は、神谷そら、仲村果乃選手らと同期の2022年のプロテストに合格し、23年にステップ・アップ・ツアーで3勝を挙げ賞金女王に。24年からレギュラーツアーに昇格し、昨年の同大会では優勝した山下美夢有、2位鈴木愛に次いで竹田麗央選手と並ぶ3位タイで終えていました。

「大王製紙エリエールレディス」でツアー初優勝を飾ったウー・チャイェン
ショット力の高さに定評があり、ドライバーの飛距離とフェアウェイキープ率を合算したトータルドライビングにパーオン率を合算したボールストライキングが24年は11位、25年は6位にランクインしています。残る課題はパッティングにありました。硬くてスピードの速くない台湾のグリーンとは異なる日本のグリーン。そして、転戦によりシーズン中でも硬さや速さも変わることで、対応することに時間を要しました。
クローグリップでつかんだ初優勝
昨年のレギュラーツアー昇格時からコンビを組む大矢真一キャディに話しを聞くと、5月の「Sky RKBレディスクラシック」の2日目の後半から右手を添えるように握る、クローグリップに変更したと言います。特にロングパットの距離感には苦労したようで練習グリーンで長い時間を過ごしていました。勝みなみ選手の日本女子オープン連覇などをサポートした大矢キャディは、プレー中も飾らない言葉で楽しく話す人柄で初優勝に大きな役割を果たしたことでしょう。

右手を添えるように握るクローグリップで初優勝を手にした
スコッティ・シェフラーや高橋彩華選手も採用するクローグリップは、手首の動きを少なくする握り方なので強くヒットする必要がある場面やロングパットではショートしやすい点もあります。その反面、ショートからミドルパットにおいては、パンチが入りにくいこともあり、距離感を合わせやすく方向性にも優れた握り方です。
ウー選手の3パット率を見ると今季は85回の3パットをし、同ランク88位とパットに苦しんでいたことがわかります。しかし12フィート前後のスピードが出ていた今大会での対応は見事でした。ショットが好調でパットが入ったことで2位に3打差をつける初優勝となりました。
もう一つ、ウー選手はアウトかインスタートに関わらず前半は悪く、後半は調子を上げることが多いと大矢キャディ。だから「後半まで我慢しようね」と最終日の前半を1ボギーでターンすると後半に5つのバーディで一気にスコアを伸ばし初優勝を手にしていました。
ストロンググリップで握り体を止めずに振り抜く
それではスウィングを見てみましょう。左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握りフェースを開かずにテークバックします。

左手の甲が見えるストロンググリップで握りフェースを開かずにテークバックする
そもそもストロンググリップはアドレスで左腕を内側に、右腕は外側に回した状態で構えているので、スクエアグリップに比べてテークバックで腕を回す動きが少なくなります。そのぶん、フェースの開閉も少なくなり、インパクトで左手の甲が見えていることからも腕を回してリリースする動きも少ないことが見て取れます。
腕を回転させずに体をしっかりと回転し続けることもストロンググリップで握る際には大切なポイントになります。

腕を回転させずにインパクト付近で体の回転を止めずに振り抜く
グリップの握り方は人それぞれですし、ローリー・マキロイのように左手はストロングで右手はかぶせて握る選手も存在しますが、自分にとって狙った方向に打ち出せる再現性と指や手首を痛めない握り方を見つけることが重要です。ウー選手はストロンググリップで握り、しっかり体を回して振り抜くスウィングで、飛距離と方向性を得ていることがわかります。

流暢な日本語でインタビューに答えたウー・チャイェン
師と仰ぐ涂阿玉プロは日本ゴルフ殿堂入りも果たした日本ツアー69勝、賞金女王7回のレジェンド。ウー選手も日本の年間女王を目指すと話しますから来季の活躍が期待されます。
写真/岡沢裕行
