レッスンでは「合う・合わない」を探っていく

東京都港区のゴルフスクール「広尾ゴルフインパクト」のインストラクター・後藤悠斗プロ
より効率的に上達する手段の一つとして「ゴルフレッスンを受ける」選択肢が、世のゴルファーにはある。しかしただレッスン代を払ってスタジオに足を運ぶだけで自然と上達するわけではない。
レッスンをする側の「教える技量」はもちろん、レッスンを受ける側の「教わる姿勢や意識」も同時に重要で「受ける側もしっかりとやることをやってもらわないと、正直僕らが何を言ったって仕方ない、そう思ってしまうんです」と後藤は言う。
ではそもそもレッスンを受けるメリットとは何か。大前提として、人によって体格やフィーリングは異なる。身長や腕、脚の長さ、可動域、体の動かし方の癖……これらが各々違うのだから、合うスウィングのスタイルも人それぞれになるわけだ。

レッスンを受ける側が意識したいポイントとは?(写真はイメージ)
だからこそレッスンでは「ちょっとずつ選択肢を少なくしていってその方に合うもの、バチッとハマるやり方を探していくんです」と後藤。
「だからどんな課題に取り組むにせよ我々は探り探りなんですよ。最初から『これをやるといいですよ』『あなたにはこれです』と明確に1つの答えに決め切るというよりかは『この方はこれをやったら良くなりそうだな』って、1つずつ試していくのが実際のレッスンでもある流れです。
これが10個くらいの選択肢の中から最初の1回でハマる方もいれば、10回かかる方もいます。この辺りはインストラクター側の技量だと思います」(後藤、以下同)
レッスンを受けて客観的に自分のスウィングを見てもらえる環境になければ、取り組んでいる練習の効果がどれほど出てきたのか、そもそもその練習が自分のスタイルに合っているのかどうかを、すべて自分自身で判断しなければならない。
そして、自分自身でそういった判断を下すのは非常に難しい。裏を返せば「判断を専門家である他者にしてもらえる」こと、そしてたくさんある選択肢の中から「その人に合うスタイルに近づいていくスピードが速い」こと。これらがレッスンを受けるメリットというわけだ。
「もちろんレッスンを受けていない方だって、いろんな練習に取り組むうちにいつか合うものにぶつかるかもしれません。自分をちゃんと客観的に評価できて、正しい取り組み方ができるほど自分に合うスタイルにたどり着くのにかかる時間は短くなるでしょうし、できなければ何年かかったっておかしくない。
だからこそインストラクター側もその方の個性をレッスンの中で探って、合う・合わないの判断や合いそうな選択肢の提示をしっかりしなければいけません。もちろんレッスンを受けていない方にとっても、練習の取捨選択はより早く上達するために必要な要素です」
教わる側の「やる気」はとても大事
さて、ここからが本題。後藤が教えてくれたように、インストラクター側は数多くある選択肢の中から生徒に合うものを探っていく。ということは「教わる側に、練習に対するやる気がないとそもそも判断できなかったり時間がかかってしまうし、やっぱり上手くなりづらいです」とのこと。
「この記事をわざわざ読んでくださっている方なら当てはまらないと思うんですけど、レッスンをやっていると例えば『私はゴルフやりたくないけど、やれって言われたから嫌々やっている』みたいな方も中にはいます。そういう方ってやっぱり上手くなりづらいです。
今のは極端な例だとしても、取り組んでいる課題に対する真剣さや上達に対するモチベーションってやっぱり大切ですよ。やる気と言うと『根性論かよ』と思うかもしれません。ただ、生徒さん側のやる気って、その方自身の成長速度だけでなく、レッスンの仕方にも影響が出てしまいます」
具体的にどう影響が出るのか。後藤は「これは単純に僕の力不足とか言い訳もあるかもしれないんですけれど」と前置きして続ける。
「まずゴルフの楽しみ方っていろいろあって。『上手くなる=楽しい』という方もいれば、そうでない方もいます。お金を払ってレッスンを受けに来ている方ですから、上手くなりたいとは思っているのだと思いますが、どこまで熱心に取り組めるか、モチベーションにもやっぱりばらつきがあるわけです」
例えば、取り組む課題によっては1つのドリルをひたすら反復する時もあれば、ずっと同じことばかりを言わなければいけない時もある。「たしかに上達のためには必要かもしれませんが、人によってはつまらないと感じてもおかしくありません。『上手くなる=楽しい』という方の中でも、程度はあるわけです」と後藤。
「で、さっき例に挙げたように嫌々やっている方や、コミュニケーションをしていく中でモチベーションがあまり高くなさそうな方に対しては、やっぱり『この方が少しでも楽しめるようになったらいいな』とか『ゴルフを嫌にならないでほしい』って思うわけですよ。
そのために、うちのスクールだったら50分間ですけど『50分間の練習が身になるようにしよう』とか『面白くしていこう』『楽しませよう』、何より1番は『つまらなかった』にならないようにしたいなってすごく考えるんです。
で、そういう意識が先生側に働く割合が多ければ多いほど、やっぱり伝えられる情報って少なくなってしまいます」
レッスンは上達を助けるためのものだが、人と人とのコミュニケーション、そして商売である以上、教える側も気を配る。「効率的に上達を目指せる教えが良い」という人もいれば「ストイック過ぎるのは無理」という人もいて、それぞれに対応が求められる。しかしやる気が感じられず「楽しませよう」の割合が極端に増えていくと、レッスンの効率も落ちてしまうわけだ。
「先生側に『上手くさせる』以外の部分……『楽しませよう』『つまらないと思っていないかな』みたいなことを思わせないくらい、上達に対してのやる気、真剣さがある方は絶対に上手くなるよなって思います。本当に上手くなりたくてレッスンを受けているという方は、意識してみてください」
協力/広尾ゴルフインパクト


