
ジーノ・ティティクル(写真はホンダ LPGAタイランド2025、撮影/姉崎正)
こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回は米女子ツアー「CMEグループ ツアー選手権」を連覇して、今年の年間女王に輝いたジーノ・ティティクル(以下、ティティクル)の後方からのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させていただきます。ティティクルのスウィングの特徴は、以下の2点です。
①カウンターバランスのクラブを短く持って、操作性を重視している
②左手首の掌屈とクラブのカウンターバランスを活かしたレイドオフのトップ
また、後半ではティティクルのようにクラブバランスの変化がもたらすスウィングへの影響を利用した練習ドリルについてもご紹介しています。
それでは早速チェックしてみましょう!
カウンターバランスのクラブを短く持って、操作性を重視している
まずはアドレスとトップの画像をご確認ください。まず目につくのは、クラブをかなり短く握っている点です。クラブを短く持つとスウィング中の操作性は高まりますが、それに加えてティティクルのドライバーはクラブのバランスポイントがC4.4と非常に手元寄りに設定されています。

画像①アドレスとドライバー/短く持って操作性を高めているティティクルのドライバーは、バランスポイントも手元寄りだ
通常、バランスポイントを手元寄りにするには主に3つの方法があります。
①クラブの長さを短くする
②グリップ側へのウェイト挿入や手元に鉛を貼って、グリップ側を重くする
③ヘッド重量を軽くする
このうち長さは45.375インチですので、おそらく③の「ヘッド重量を軽くする」方法を取っていると思われます。ウッド形状のクラブのバランスを1ポイント軽くしたい場合は、約1.6gヘッドを軽くする必要がありますが、C4.4までバランスを下げるとなると少なくとも10g以上はヘッドを軽くしているでしょう。まるで今年MLBで流行した「魚雷バット(※)」のようですが、ヘッドを軽くした少し長いドライバーを短く持つことで、飛距離と方向性を両立させる、なかなか面白いマッチアップだと思います。
※「魚雷バット」とはボウリングのピンのように先端が細く、中央部分が最も太くなっている特殊な形状の野球用バット。この設計により、バットの芯がグリップ側に寄ることで操作性が向上し、スウィングしやすく、打球を詰まらせることなく芯で捉えやすくなるとされる
左手首の掌屈とカウンターバランスを活かしたレイドオフのトップ
続いて、トップを見てみましょう。「Club-Hand Gap」(以下、クラブと手の前後差)は、後方からのクラブヘッドと両手の前後差を表します(マイナスはクラブヘッドが両手より背中側へ、プラスはクラブヘッドが両手よりボール側へ。クラブヘッドと両手が重なった位置を0cmとします)。ティティクルのトップでのクラブと手の前後差はマイナス30.1cmで、クラブヘッドが手よりも左側にあるレイドオフのトップです。

画像②トップ/両手よりクラブが左側にあるレイドオフのトップ。左手首の掌屈とクラブのカウンターバランスがその要因だ
スポーツボックスAIが独自で調査した、トップでのクラブと手の前後差の米女子ツアーレンジは、マイナス8.1cm~プラス21.3cmですので、ティティクルは米女子ツアープロの中でもかなりレイドオフのトップであることがわかります。このレイドオフのトップは、もちろん左手首の掌屈も要因の1つではありますが、先述の「バランスポイントが手元寄りのカウンターバランス」も要因の1つです。その理由は手元寄りに重量があると、トップでヘッドが下に垂れにくくなるので、クラブが描くスウィングアークはやや短くなりやすいからです。左手首の掌屈とカウンターバランスのクラブは、ティティクルのレイドオフのトップの再現性を高めているといえます。
クラブを逆さに持ったり、クラブを2本持ったりして、スウィングへの影響を知ろう!
それでは、アマチュアの方にお勧めの練習ドリルを1つご紹介します。それは、「クラブを逆さで持つ素振り」と、「バット素振り」です。まず「クラブを逆さで持つ素振り」は、ヘッド付近を手で持ってグリップを地面にセットして素振りします。一方で「バット素振り」は、ゴルフ素振り用のロングバットを使用します。もしロングバットをお持ちではない方は、アイアンを2本重ね合わせて素振りを行うドリルで代用できます。

画像③お勧めの練習ドリル/クラブを逆さに持ったり、2本重ねて持ったりして、素振りでのトップの違いを探ろう!(右の画像はロングバットを使用)
普段の自分のクラブを振るときに比べて、クラブを逆さに持ったときはスウィングがコンパクトかつ速くなりやすく、逆にロングバットやクラブを2本重ねて振ったときはスウィングが大きくゆったりになりやすいです。例えば、オーバースウィングに悩む人ならクラブを逆さに持って振ったり、ティティクルのようにカウンターバランスのクラブを使ってみるのが有効です。逆にスウィングアークが小さくて飛距離に悩む人ならロングバットやクラブ2本素振りで、ヘッドの遠心力を利用して振れるとスウィングアークが大きくなって飛距離アップに効果的です。カウンターバランスとトップバランス、それぞれのクラブバランスが与えるスウィングの影響を知るのもスウィングの改善効果が期待できます。
今回はジーノ・ティティクルの後方からのドライバースウィングを解説させていただきました。今年の年間女王に輝いて、ロレックス(世界女子)ランキングも1位のティティクルが、来年メジャー初優勝を果たすのか、はたまた日本人選手が再び快挙を成し遂げるのか、来年の米女子Aツアーも楽しみですね!
【動画】ジーノ・ティティクルのドライバースウィングを後方からチェック【LPGA公式X】
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