国内女子ツアー最終戦「JLPGAツアー選手権リコー杯」を制し、22勝目を飾った鈴木愛。粘り強いゴルフには、改めて彼女の地力の強さを感じた。そんな鈴木愛のスウィングをみんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修が解説。

岩井千怜選手との2ホールのプレーオフでパーセーブを続けて歓喜のガッツポーズを見せた鈴木愛選手。初日からコースの難しさを口にしていましたが、想定の100ミリよりも深くなったラフ、散水を止めて硬く仕上がったコーライグリーンが、バーディはおろかパーですら簡単に取ることを許しませんでした。

通算22勝目を最終戦の公式戦で飾った鈴木愛

鈴木選手は8月の「ニトリレディス」で優勝の後、9月以降は5試合連続の予選落ちが続き「今までで一番しんどかった」という秋を過ごしていました。ドライバーショットが左に曲がり「左のラフからしかセカンドを打っていない」という程ドライバーショットに苦しむ日々。ドローヒッターが嫌がる左へのミスが止まらず、「フォローを抜いていくポジションが自分の中で見つからない」と悩みを深くしていたと言います。

画像: 今季2勝目(通算22勝目)を最終戦「JLPGAツアー選手権リコー杯」で飾った鈴木愛

今季2勝目(通算22勝目)を最終戦「JLPGAツアー選手権リコー杯」で飾った鈴木愛

その中で「マスターズGC」あたりから、左を嫌がって右を向き過ぎていたアライメントを左に取るように修正し、徐々に復調していきました。それでも自身の感覚では優勝できるレベルに戻っておらず、「1番上になることを想定していなかった」と優勝会見で話しました。勝てた要因を聞くと「連続ボギーにしなかったこと」と、「成長している」というアプローチとパットのショートゲームにあったと答えます。

画像: 好調とは言えないパッティングだったが、ピン「G Le2 エコー」が大活躍したという

好調とは言えないパッティングだったが、ピン「G Le2 エコー」が大活躍したという

グリーン上で手にしていたのは、2019年に優勝した際に使用していたピンの「G Le2 エコー」というレディスモデル。鈴木選手曰く「調子が悪くなったときに使う唯一のパター。あれ(G Le2 エコー)を常に使っていると、他が全部難しく感じちゃうぐらい私の中ではやさしい。なのであれはよっぽど調子が悪い時にしか使わないモデル」という切り札を使用し、大活躍しました。

そしてアプローチは、練習日に現地を訪れていた中嶋常幸プロから金言をもらったと話します。
「逆目のラフからはPWを開いて少し上に向けて打つと簡単だよ」とアドバイスを受け、練習日に試してみると本当にやさしくピンに寄せられたことから、本戦でのパーセーブ率が大きく変わったと教えてくれました。

意図はルーティンに現れる

現地でスウィングを見ていたら、鈴木選手のスウィングイメージがルーティンから垣間見えて来ます。鈴木選手はドライバーを打つ前には、小さく腰から腰までの幅で1回、肩から肩までを1回、3回目はフルショットに近い大きさで素振りをします。そのときの体の正面からクラブを外さない感覚や、振り抜く方向がインサイドアウトではなく、真っすぐに振り抜こうとする意図が見て取れました。

画像: 少しずつ大きく3回の素振りでチェックしながら集中力を上げていく

少しずつ大きく3回の素振りでチェックしながら集中力を上げていく

ちなみに古江彩佳選手のルーティンは、腰から腰までの素振りを2回繰り返して3回目はフルショットに近い大きさのスウィングをしています。古江選手もフェースが返り過ぎないようにしながら体の正面からクラブを外さない意識が見て取れます。申ジエ選手も同じように小さく素振りをしますがもう少し手首の動きが入ります。それぞれの選手の打つ前の素振りに注目してみるとその意図が見えて来ます。

画像: 古江彩佳もクラブを体の正面から外さないように腰から腰の小さいスウィングを2回繰り返す

古江彩佳もクラブを体の正面から外さないように腰から腰の小さいスウィングを2回繰り返す

開催コースの宮崎CCはドローヒッターが有利とされていますが、連続出場する中で「5年くらい前からドローを打つのをやめて、ここに来るとフェードを打つのがルーティンになっていた」と左の林に打ち込む悪いイメージを払拭するため球筋も変えていたと話します。

画像: スウィングプレーン上に下りて来たクラブがインサイドアウトではなく真っすぐに振り抜けている

スウィングプレーン上に下りて来たクラブがインサイドアウトではなく真っすぐに振り抜けている

ほとんどのホールが左ドッグレッグという宮崎CCをフェードで攻め、全体2位の平均パット26.25というショートゲームで勝ち取った22勝目。永久シードまで残り8勝、32歳を迎える来季も勝利を積み重ねることでしょう。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

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