ドライバーでボールを選んだらダメ!ボールは1つに決める!
今回のボールフィッティングに参加してくれたのはシングルの宝地戸さん、ホームコースで月例などにも出ている鈴木さん、年間50ラウンドするリュウさんというゴルフに熱心な読者3人。フィッティングの前に、まずは座学でボールについての基本的な知識をおさらい。タイトリスト ゴルフボールスペシャリスト松野志樹氏によると、大きなポイントがいくつかあるという。

左から鈴木貴裕さん(ゴルフ歴27年 平均スコア88)、リュウ・セキさん(ゴルフ歴5年 平均スコア92)、宝地戸展幸さん(ゴルフ歴43年 HC2.8)
一つは「ボールの重要性」。タイトリストの調べでは、ゴルフに熱心な人でもボールの種類やモデルの違いがプレーに影響を与えると理解し、一つのモデルに決めて使っている人は全体の2割ほど。残りの80%はそこまでボールにこだわりがなく、値段や打感、見た目や好きなプロが使っているからという理由で、いろんな種類を交ぜて使っているという。しかし、ボールはすべてのショットで使う唯一のギア。常に同じボールを使用することで、ボールの性能の違いによる影響を防ぐことができ、プレーの安定性を高めるための第一歩になるという。
「一年を通じて、常に一つの同じボールを使えば、ボールのパフォーマンスが変わらないのでプレーが安定します。冬になると飛ばないからとボールを替える人がいますが、ゴルフボールは温度変化に弱いので、寒い冬は軟らかいボールも硬いボールも同様に性能は落ちます。軟らかいボールだけ飛距離が落ちないという現象は起きないからです」(松野氏)
では、どうやってボールを選べばいいのか?
「ティーイングエリアから」ではなく「グリーンから」がタイトリストの選び方
「ドライバー、パターを使う回数は腕前による差が出にくいです。グリーンを狙う2打目やアプローチなどのショートゲームでスコアに差が出てきます。いかに早くグリーンをとらえるか。そしていかにピンに近づけられるか。これがボールに求められる一番の性能です。いわゆる〝ディスタンス系〞と呼ばれる飛距離に特化したボールはスピンがかからず止まりにくい。これではピンを狙っていけません。飛んだとしてもグリーンを狙ったショットやアプローチで止まらなければスコアアップは望めない。重要なのは各番手に合った適正なスピン量になるボールを選ぶことなんです」(松野氏)

タイトリストゴルフボールスペシャリストの松野志樹氏
「タイトリストのボールフィッティングはスコアアップに重点を置いています。そのため、グリーンからティーイングエリアに向かって行っていきます。その理由は“スコアリングショット”と呼んでいるフルアプローチ(グリーンを狙うフルショット)とショートゲームの打数が最も多いからです。実際にフィッティングで使うのは50Yのキャリーを打つウェッジ、7番アイアン、ドライバーの3本。ウェッジからスタートし、アプローチで寄った数種類に絞り込んだらアイアンへ。そこからさらに絞り込んでドライバー。最終的に性能が一番良かったものと、打感など試打者の好みを聞いておすすめします」(松野氏)
タイトリストの「プロV1」ファミリーはすべてのクラブでパフォーマンスを発揮できるように作られていて、ディスタンス系と比べてもドライバーの飛距離がほとんど変わらない。変わったとしても、わずか2ヤード程度。アイアンのフルショット、アプローチではスピンがしっかり入りグリーンで止められる、〝トータルパフォーマンス〞の高いボールなのだ。
また、ボールに対する誤解もあるという。「ヘッドスピードでボールを選ぶべきか?」という松野氏の質問にリュウさんと鈴木さんは「そうだと思う」と回答。だが自分のヘッドスピードを把握している人でも、それはドライバーでのもの。ゴルフではさまざまなヘッドスピードでプレーするので、ドライバーが飛んだとしてもアイアンやウェッジではスピンがかからない可能性もある。かといってスピンがかかればいいかというとそうではなく、各番手を適正値の範囲で打てるボールを選ぶべきだという。
「タイトリストには〝女性専用〞というボールはありません。どのボールも女性が使えるんです。一般的に〝レディス〞と呼ばれるボールや〝飛び系〞はコアが軟らかく、カバーは硬め。表面が硬く内側を軟らかくすると打ち出しは高くなるものの、スピンは減ってしまいます。しかし女性の9割、男性の7割はスピンが足りていません。スピンを減らしすぎるボールはスコアメイクを助けるとは言えません。軟らかくないとつぶせないと思う人もいるかもしれませんが、硬いと言われるボールでもちゃんと変形しています。飛距離に関しては硬い、軟らかいは関係なく、誰が打っても飛ぶようになっています。ボール選びのポイントをまとめると、①ボールは一つに決める②トータルパフォーマンスの高いボールを選ぶ③ドライバーでボールを選ばないこと。この3つが大切なんです」(松野氏)
ディスタンス系はスピンは少ないが高さが出る

アイオノマーカバーのボールを手に取り説明する松野氏
ディスタンス系のカバーに使われているアイオノマーは摩擦が少なく、50Yキャリーではフェースを滑って打ち出しが高くなり、スピンは入りにくいが高さが出る。ウレタンカバーの「プロV1」「プロV1x」ではスピン量がほぼ同等となる。「50Y以内のショットではカバーの素材による影響が大きい。それ以上の距離になると各素材の働きによって性能差が出ます」(松野氏)
ディンプルで弾道が変わる

プロV1とプロV1xを両手に持ちディンプルの説明
「プロV1」は中弾道、「プロV1x」は「プロV1」より少し上がりやすく中高弾道。「高さの違いを生んでいるのは?」との質問に「スピン量?」と答えた宝地戸さんだったが、正解は「ディンプル」。「実は『プロV1』と『プロV1x』ではディンプルが異なります。ディンプルには“翼”の役割があり、弾道、飛び方が変わります」(松野氏)
3ピース、4ピースだから飛んで止まる

ボールの構造を詳しく説明
「いいボールは“飛んで止まる”といいますが、どうやって両立させているんですか?」と質問するリュウさん。「店頭で1ダース2~3000円台のボールのほとんどが2ピースですが、2ピースには基本的には性能は一つしか持たせられません。カバーを硬くすれば飛ぶけどスピンが入らず、カバー軟らかくすれば止まるけど飛ばない。そこにもう1層入れた3ピースになると飛ぶ性能と止まる性能の両方を持たせられるんです。『プロV1』は3ピース、『プロV1x』は4ピースですが、層が多ければいいわけではなく、求めた性能を満たしてくれたのが今の構造なんです」(松野氏)
性能誤差がないため“プロ用”は存在しない

ツアープロが使用するボールも市販されているボールも同じと言い切る
世界のツアーで72%、国内男子ツアーで61%が「プロV1」ファミリーを使用。その理由は、「タイトリストの一番の売りは“均一性”です。性能誤差が限りなく少ないんです。そのため“プロ用”のボールは存在しません。すべての製品が同じだからです。ボールを忘れたプロがコースのショップで買うこともあるくらいです」(松野氏)
読者3人のボールフィッティングの結果は?
ボールフィッティング① 50Yキャリー
「通常営業のグリーンであればスピン量が5500rpm以上あれば止まります」(松野氏)
ボールフィッティング② 7番アイアン
「7番アイアンの理想のスピン量は6500~7800rpm、落下角は45~55度」(松野氏)
ボールフィッティング③ ドライバー
「ドライバーはボールスピード、打ち出し角、スピン量のバランスが重要。落下角の理想は30~42度」(松野氏)
リュウ・セキさんの結果
リュウさんがボールに求めるもの「もっと飛距離が欲しい」

①50Yキャリーの結果(左):「Velocity」は打ち出しが高い/②7番アイアンの結果(真ん中):「プロV1x」のほうがスピンが入って球が安定する/③ドライバーの結果(右):「プロV1x」のほうがスピンが入って球が上がり飛んだ
リュウ・セキさんへの推奨ボール

リュウ・セキさん
「これまでは値段や打感でボールを選んでいたので、いろいろな種類のボールを使っていました。でもボールを替えるだけで、同じクラブで同じように振っているのに全く違う球が出てビックリ。ディスタンス系だとスピンがかからないことを実感。ボールの大切さが分かりました」(リュウさん)
宝地戸 展幸さんの結果
宝地戸さんが今回知りたかったこと「『プロV1』は自分に合ってるのか? 」

①50Yキャリーの結果(左):「Velocity」は球が高いがスピンが入りにくい/②7番アイアンの結果(真ん中):どちらもスピン量、弾道の高さが適正の範囲内/③ドライバーの結果(右):ドライバーの弾道は「プロV1」のほうが高さは適正
宝地戸展幸さんへの推奨ボール

宝地戸展幸さん
「20年ほど『プロV1x』を使い続けてきて、今年から『プロV1』にしたら飛距離が伸びた気がするんです。打感も軟らかく、平均スコアもよくなり、大叩きしなくなりました。今回、『プロV1』が自分に合っていると数値で出たので、これからも安心して使い続けられます」
鈴木 貴裕さんへの結果
鈴木さんがボールに求めるもの「飛距離もスピンも両方欲しい」

①50Yキャリーの結果(左):「プロV1」のほうがスピンが入って低く出る/②7番アイアンの結果(真ん中):スピン量は適正より少ないが弾道は適正な高さ/③ドライバーの結果(右):ドライバーの数値はどちらも適正
鈴木貴裕さんへの推奨ボール

鈴木貴裕さん
「今までは月例とか、ここぞという時だけ『プロV1』を使ってきました。でも、それ以外の時は別の値段の安いボールを使っていたんです。正直、ボールでここまで変わるとは思っていませんでした。『プロV1』と『プロV1x』に高さとスピン量の違いがあることも勉強になりました」
PHOTO/Hiroaki Arihara
協力/ザ・カントリークラブ・ジャパン




