
「ゴルフ日本シリーズJTカップ」でメジャー初優勝を飾った小木曽喬(撮影/姉崎正)
「日本で勝ちたい」

最終18番、グリーン右からアプローチ(撮影/姉崎正)
東京よみうりCCの名物ホール最終18番パー3。小木曽は下から1メートルのウィニングパットを沈めると、両手で控えめなガッツポーズを作った。涙はなく晴れやかな笑顔が夕日を浴びて輝く。続いてグリーンサイドで待ち受けたツアー仲間から祝福のウォーターシャワー。水の冷たさよりも喜びが勝った。
優勝インタビューでも涙はなかった。
「途中イーグルもあってうまくスコアを伸ばせた。苦しい時間もあったんですけど、そこをしっかり耐え抜けたのが、こういう優勝につながったかなと思います。ずっと日本で勝ちたいと思いながら今年プレーしていたので、それが最後JTカップという大きいところで勝てたのは、頑張ってきたご褒美かなと思います」
この日は吉田、宋永漢(ソン・ヨンハン)と並んで通算8アンダー首位からスタート。5番パー4で2メートルを入れてバーディを先行させると、6番パー5でグリーン右から15ヤードをチップインイーグル。優勝へ大きく前進した。後半は13番パー4で2メートルのフックラインを読み切って単独首位に浮上。続く14番パー4は残り117ヤードの第2打を奥80センチにつけて連続バーディ。17番パー5は2メートルを決めてリードを広げた。
最難関ホールの18番には2位に3打の余裕を持って臨んだ。4Uの第1打をグリーン右のラフに外し、アプローチを右上1メートルに寄せたが、ファーストパットを1メートルオーバーして苦笑いした。ペットボトルの水を飲んで仕切り直しをし、最後のパットはど真ん中から沈めた。
「この1年やってきたことを全部出せたこと、できることがたくさん増えて成長したことが優勝につながったと思います」
前夜は賞金王の金子駆大と食事

初のメジャー制覇で3年シードをつかんだ(撮影/姉崎正)
愛知県出身でテレビのゴルフ中継を見てクラブを握った。中学時代に福井県に移り、福井工大付属福井高3年の2014年日本アマに日本選手に限れば当時史上最年少17歳115日で優勝。2015年プロに転向し、昨季の「ハナ銀行インビテーショナル2024」でツアー初優勝を果たしたが、韓国での開催だったため、以来国内大会での優勝を目標にしてきた。
「日本で勝ちたいとずっと思っていた。このまま勝てなかったら韓国で1勝だけですごい寂しいと思っていた。まさかJTで勝ててうれしいし、びっくりもあります」
この日は同じ愛知県出身で年下の金子駆大が賞金王に輝いたが、地元の後輩からはいい刺激をもらっている。前夜も夕食をともにし、そのときに金子から「優勝してください」との言葉を受けた。賞金王争いで今大会優勝なら金子を逆転する可能性があった蟬川泰果、大岩龍一の優勝は、自分が優勝すれば自動的に消滅し、後輩の賞金王が確定する流れ。「この大会で蟬川と大岩以外が勝てば駆大が賞金王になるということだったので、後輩を賞金王にしたいと思っていた。それがいいモチベーションになった。その中で僕が勝てて本当にうれしかったです」と喜びを言葉にした。
DPワールドツアーを主戦場にしている川村昌弘からは大きな影響を受けたという。福井工大付属中3年のときに寮で同部屋だったのが当時福井工大付属高3年の川村で「意識の高さや練習量の違いとかです。(川村が)プロになってからも挑戦している姿は恰好いいなと思って見ています」と振り返った。
初のメジャー制覇で3年シードをつかみ、今後の活動範囲は自由度を増す。川村の存在もあって少しずつ海外ツアーへの意識が芽生えているが、まだはっきりとは見えていない状況だ。
「僕は海外に興味がなくて日本ツアーが大好きですが、DPワールドツアーは川村さんが出ている場所なので、今こうして優勝させてもらって少しずつ現実味を帯びてきた。浅地さん(洋介)、陣さん(香妻陣一朗)がLIVにいかれたので、自分も挑戦したい気持ちはあります」
メジャー王者になった28歳は少し控えめに世界へはばたく自分の姿を見つめた。
