12月中旬のこと。週刊ゴルフダイジェスト&月刊ゴルフダイジェストでおなじみの斎藤大介トレーナーからあるお誘いを受けた。なんでも彼が数年前から通っているイラスト講座があり、ゴルファーに向けたスペシャルな回が開催されるのだという。イラストとゴルフ!? 一見つながりがなさそうに見える2つだが、どのようにゴルフスキル向上に役立つのか。さっそく体験させてもらった。

講師:増村岳史(ますむら・たけし)氏

アート・アンド・ロジック株式会社のファシリテーターであり、取締役社長。アートを“脳トレ”の一種として再定義し、ビジネスマン向けのアートとデザインの研修講座を実施している。ゴルファーのためにアレンジした講座を開くのは今回で3回目。過去にはプロとして活躍する六車日那乃や吉田鈴、藤井美羽などが受講したことがある

斎藤大介(さいとう・だいすけ)トレーナー

柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持ち、ヨガの国際資格RYT200も取得。2016年より米女子ツアー選手のトレーナーを務め、20~22年は渋野日向子の専属トレーナーとして活動。現在、国内外の選手をサポートしている。週刊ゴルフダイジェストで「らくらくゴルヨガ」を連載中

絵を描くとゴルフに必要な“イメージ力”を鍛えられる

画像: 3回目となった今回は「ビジュアルメモ講座」を開講。増村氏は元ゴルフ部出身者でもあり、理想像を可視化することの大切さを伝えている

3回目となった今回は「ビジュアルメモ講座」を開講。増村氏は元ゴルフ部出身者でもあり、理想像を可視化することの大切さを伝えている

「“ゴルフ”って、どんなスポーツ? 」と聞かれたら、なんと答えるだろうか。今回のイベントの主催者である「ART&LOGIC(アート・アンド・ロジック)」の代表・増村岳史氏は次のように語る。

「ゴルフとは、“イメージを具現化する”スポーツだと私は思います。多くのスポーツ(例えばサッカーやラグビー)は、プレー中に反射神経を求められます。しかしゴルフの場合は、体を動かすまでに思考する時間が多く、その時間を使ってコースマネジメントを行い、理想の弾道やスウィングする姿を思い浮かべてプレーをする。その際に最も重要なのはイメージする力です。これは、絵を描く際には必ず必要なことです。ですので絵を描くこととゴルフをすることは似ているのです」

【ゴルフに役立つポイント①】“絵を描く”と、体の動きをイメージしようとする

画像: 表情→胴体→全身の順で、見本を真似て描く練習を行った

表情→胴体→全身の順で、見本を真似て描く練習を行った

そして、“イメージ力”を鍛えられるのが、今回受講することになった“ビジュアルメモ講座”だ。過去、すでにプロとして活躍する六車日那乃や吉田鈴などが受講済み。今回は、子育てをしながらツアーでの初優勝を目指す神谷和奏、月刊誌にパッティングプロコーチとして登場してくれた五十嵐(小暮)広海をはじめ、斎藤トレーナーのもとでプロテスト合格を目指す女子プロの卵たちなどが参加した。手元には大きく分けて3つのドリルが配られた。やることはシンプルだ。それぞれの見本をよく見て、その隣に真似て描いていく。最終的には言葉と絵の両方を組み合わせて、ゴルフ人生のキャリアプランを表現することがゴールである。

画像: 動きを絵にするためには、イメージをより明確に持つことが必要になる。①全身まで描けるようになると動作付きのイラストを描く段階へ(左上)。②動作を描くために実際に動きながら形を確認する(左下)。➂自分で動くと絵と非対称になるため他者の動きを見て再確認(右上)。④①よりもスウィング中の動きをイメージしながら描けている(右下)

動きを絵にするためには、イメージをより明確に持つことが必要になる。①全身まで描けるようになると動作付きのイラストを描く段階へ(左上)。②動作を描くために実際に動きながら形を確認する(左下)。➂自分で動くと絵と非対称になるため他者の動きを見て再確認(右上)。④①よりもスウィング中の動きをイメージしながら描けている(右下)

表情・胴体・全身と人間のパーツを分けて描き方を練習した後は、いよいよラストスパート。パーツを組み合わせて動作付きのイラストを描く段階へと移ったのだが、ここで思わぬ気づきがあった。

スウィング中の体の動きを描こうとすると、ヘッドやひじの向きはどう描いたらいいのかと悩んで、実際に動きながら体の形を確かめるようになる(左下)。ラウンド中の気づきなどを毎日ノートに書き残しているという参加者のSさんは、言語化することと絵に表すこととの違いに苦戦していた。

「どちらかというと自分は感覚派だと思っていたのですが、スウィングの姿を描いている時に、意外と言葉で考えていることに気が付きました。『こうやってクラブをトップまで上げて、この辺で止まって……』と、動作を言語化していたんです。でも、絵を描くためには『体がどう動いているのか』を頭の中でイメージすることが必要になる。ノートに意識した点を言葉で記す時よりも、自分のスウィングを思い浮かべていたように感じます」

普段の練習において、自分のスウィングをどのくらい客観的に見ることができているだろうか? 練習するだけであれば、気を付ける点に意識を向けるだけでよく、スウィングのイメージははっきりしないままでも問題ない。しかし、絵に起こすとなるとより細部まで思い返す必要が出てくる。その結果、イメージ力が鍛えられるようだ。

画像: 左はステップ1の表情を描くドリル。線の微妙な傾き加減によって表情が変わるため、観察力をも鍛えられる

左はステップ1の表情を描くドリル。線の微妙な傾き加減によって表情が変わるため、観察力をも鍛えられる

【ゴルフに役立つポイント②】“絵にする”と、実現できそうな気がしてくる

画像: 絵を用いて目標を描くと、理想を叶える自分の姿を想像できる

絵を用いて目標を描くと、理想を叶える自分の姿を想像できる

全身や体の動きを絵で描けるようになると、いよいよ目標をビジュアルメモ化する段階へ。ここでもまた新たな発見が!

一昨年、4度目の挑戦でプロテストに合格し、一児の母として育児に奮闘しながら戦う神谷和奏は次のように語る。

「自分が目指すところって、曖昧になりがちなんです。なので以前から、“目標を明確にするトレーニング(ビジョントレーニング)”に興味を持っていました。目標を言葉にするだけだと、書いている時でさえ『実現できるのかな? 』と不安になっていたのですが、絵にしてみると不思議と“できそうな気”がしてくるんです。文字だけだと『これをやらなきゃ』と思い込み、がんじがらめになっていました。絵で見ると『これをやればいいんだ』『これをやったらこうなれるんだ』と、目標に対する自分の解釈の仕方も変わったように思います」

画像: 神谷プロの理想像は、笑顔と勇気を届けられる選手になること

神谷プロの理想像は、笑顔と勇気を届けられる選手になること

先ほど話を聞いたSさんは、これまでは文字のみで書き続けてきたゴルフノートに、今後はイラストも添えていきたいと思ったそう。

「毎日書き続けてきたノートですが、実は『見返したい』と思ったことはなかったんです。マンネリ化しているし、何より読み返した時に“面白い”とは思えなくて。絵が加わると、自分が何を思って描いたのかがよりわかりやすくなる。もともと目標だけでなく、ラウンドした日に意識したことや意識して変わったところなども書き残していたので、調子が悪くなった時に見返せばよりゴルフ人生に役立つノートになりそうです」

アマチュアの私たちは、ゴルフの目標を立てたり『この部分を直したい』と思っても、記録せずにそのまま終わってしまうことが多い。あるいは調子が悪かった日は、本気でどうにかしたいと思っていたはずなのに、時間が経つにつれ熱量が薄れてしまう。やる気に波が出やすいアマチュアだからこそ、その時の気持ちを絵で残すことが上達につながり、ゴルフ人生をより豊かにするかもしれない。

写真/小林司
協力/アート・アンド・ロジック株式会社

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