「感覚」ではなく「数値」で納得したい。コーチとの二人三脚
小学4〜5年生の頃から、穴井詩プロなどを指導する石井雄二コーチに師事している後藤。長期にわたりタッグを組む理由は、意外にも彼女の「理系脳」な一面にあった。
「石井コーチは常にデータを取って、それを理論的に解説してくれるんです。私は自分の感覚だけに頼るのが苦手で、弾道測定器などの数値で『何が悪いのか』を明確に示してもらえないと納得できないタイプ。そこがすごく合っていました」
そして、石井コーチの指導方針が、彼女の最大の武器である「飛距離」を開花させた。
「私は昔から思い切り振りちぎるタイプ。でもコーチは『スウィングを抑える必要はない』と、決して否定しませんでした。私の長所を最大限に伸ばしてくれるスタイルだからこそ、今の自分があるんです」
277ヤードの正体は「胸椎」の柔軟性と「他競技」の経験

並みいる飛距離自慢の女子プロを退け、JLPGA公式ドラコン女王に輝いた後藤あい(撮影/中村修)
277.8ヤードという驚異的な飛距離。167センチの上背があるとはいえ、なぜそこまで飛ぶのか。彼女が挙げたキーワードは「胸椎(きょうつい)」だ。
「手先でスピードを出すのではなく、体の回転スピードを速くすることを意識しています。私は股関節よりも、胸周り(胸椎)の柔軟性に自信があるんです。ここを柔らかく、速く回せることが飛ぶ理由かなと思います」
その高い身体能力のルーツは、幼少期のスポーツ経験にもあるようだ。
「水泳、ソフトボール、サッカー……いろいろやっていました。球技が好きで、運動神経は悪くないと思います」
全身を使ってボールを操る感覚は、他競技によって培われたものなのだろう。
「軽・軟」シャフトでミート率が最大化
使用するシャフトも、ハードヒッター向けのカチカチなものではなく、意外にも「軟らかくて軽い」モデルを愛用しているという。
「『疲れない』のが一番。でも、自分のリズムでしっかりしなってくれるシャフトのほうが、気持ちよく振り切れるんです。ただ飛ばすだけでなく、ミート率や初速効率を突き詰めた結果が、今の飛距離に繋がっています」
課題はショートゲーム。「転がし」だけでは勝てない
圧倒的な飛距離を持つ一方で、課題も明確だ。
「100ヤード以内やグリーン周りはまだまだです。これまでは『転がし』が得意ならそればかりやってしまう癖があったんですが、試合では使えない場面もある。今はロブショットなど、アプローチのバリエーションを増やす練習を『量』をこなしてやっています」
石井コーチからの「まずは量をやらないと質は上がらない」という教えを守り、ショートゲームの引き出しを増やす日々だ。
「感情を消す」ことで掴んだ史上7人目の快挙
プレーをみてもあまり感情を表に出さないタイプ。アマチュア優勝を果たした「SkyレディスABC杯」でもそうだった。
「意識的に『変えない』ようにしているんです。昨年、レギュラーツアーでトッププロの方々と回らせていただいた時、皆さんが良い時も悪い時も態度が変わらないことに凄みを感じました。それ以来、『感情を出さないゴルフ』を徹底しています」
とはいえ、中身は等身大の17歳。
「心の中では『よし!』ってガッツポーズしてます(笑)。プライベートで友達といる時はテンションが高いので、試合中の私を見たら驚かれるかもしれません」
アイドルよりも「練習」と「食事」

授賞式会場でインタビューを受ける後藤あい
ゴルフを離れれば、趣味は料理という一面も。
「練習や試合を頑張った後のご褒美は、友達と行くしゃぶしゃぶ食べ放題! 遠征先でジンギスカンなどの名物を食べるのも楽しみの一つです」
今どきの女子高生ならアイドルや音楽に夢中になりそうだが、彼女は「全く興味がない」と笑う。
「周りの子が盛り上がっていても『誰?』状態です(笑)。音楽も聴かずに無心で練習場にいることが多いですが、そのおかげで周囲の雑音に左右されず、ゴルフだけに集中できている気がします」
ストイックなまでにゴルフと向き合う17歳。最後に見据える未来について尋ねると、瞳を輝かせてこう答えた。
「まずはプロテスト合格。そして最終的には、憧れのローリー・マキロイのように、圧倒的な飛距離と完璧なショートゲームを兼ね備えた、世界で戦える選手になりたいです」
“和製マキロイ”の誕生か。後藤あいの2026年シーズンから、目が離せない。
