シンガポールのセントーサGCで開催された「LIVゴルフ・シンガポール」。熱帯特有の激しい雨による中断を挟んだ最終日。通算14アンダーで首位に並んだブライソン・デシャンボーとリチャード・T・リーによる勝負の行方は、プレーオフへと持ち込まれた。 激戦の末に勝利をもぎ取ったデシャンボーにとっては、2024年の全米オープン以来となる72ホール大会での個人優勝。しかし、歓喜に沸くはずのチャンピオンの表情には、手放しで喜べない複雑な感情が入り混じるという、意外な結末が待っていた。
画像: 4番でバンカーからのイーグルショットを直接決め、笑顔を見せるブライソン・デシャンボー(提供/LIVゴルフ)

4番でバンカーからのイーグルショットを直接決め、笑顔を見せるブライソン・デシャンボー(提供/LIVゴルフ)

絶体絶命のティーショットと決死のリカバリー

ドラマが起きたのは、18番(パー5)で行われたプレーオフの1ホール目だ。大雨が降りしきる極限のコンディションの中、デシャンボーは当初、手にしていた3番ウッドをドライバーに持ち替えた。しかし、放たれたボールは左の池へと一直線に消えていく。絶体絶命のピンチ。彼はその瞬間の生々しい状況をこう振り返る。

「正直、あのティーショットは打ちたくなかったんだ。でも『天候の回復を待つような男』にはなりたくなかった。スウィングの直前、ボールに水がたっぷりついているのが見えて『よし、ただ右に打ち出そう』と思った。でも、ヒールに当たって水でフェースが滑り、無残にも左へ行ってしまったんだ」

万事休すかと思われたが、彼は決して諦めなかった。キャディのグレッグ・ボーディンに対し「悪いスウィングじゃなかったんだ」と言い聞かせ、自らを鼓舞した。

「ただもう一度チャンスが欲しかった。『ドロップして、3番ウッドで打って、アップ&ダウン(寄せワン)でパーを拾えば、彼もパーにしてもう一度チャンスがあるかもしれない』と自分に言い聞かせたんだ」

その執念が実を結び、彼は見事にパーセーブに成功。相手にプレッシャーをかけ続けた。

魔の60センチパットと、勝者の複雑な胸中

対するリーは、ティーショットを安全にフェアウェイバンカー付近へ運び、3打目でグリーンを捉え、約3メートルのバーディパットを残していた。誰もがリーの勝利、あるいは最悪でもパーでプレーオフ継続を疑わなかっただろう。しかし、リーはバーディパットを外しただけでなく、続く約60センチ(2フィート)のパーパットまでも外してしまい、痛恨のボギー。その瞬間、デシャンボーの優勝が呆気なく決まった。

【動画】リチャード・T・リー、60センチのパーパットを外す【LIVゴルフ公式X】

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予期せぬ幕切れに、デシャンボーは頭を抱えた。

「こんな勝ち方はしたくなかった。私が最初に認めるよ」と、勝者となった彼は率直な思いを吐露した。

「こんな形で相手が外すのを見るのは本当に辛かった。過去にタイガー・ウッズとジョン・デーリーのプレーオフで似たような光景を見たことがあるが、まさか自分がその勝者側に立つなんて奇妙な気分だ」

それでも、彼は最後まで相手を気遣う姿勢を崩さなかった。

「リチャードと彼のゴルフに対して、大きなリスペクトを持っている。彼は真のスーパースターであり、リーグは彼をワイルドカードとして迎えていることを本当に誇りに思うべきだ」

残酷なゴルフの現実と向き合いながらも、敗者への最大限の賛辞を惜しまない。メジャー覇者が見せた真のスポーツマンシップが、雨のセントーサを爽やかに包み込んだ。


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