
プレーオフでデシャンボーに惜敗したリチャード・T・リー(提供/LIVゴルフ)
勝利をすり抜けた「アドレナリン」の代償
プレーオフ1ホール目の18番(パー5)。デシャンボーがティーショットを池に打ち込むという絶好の展開から、リーはパーオンに成功し、優勝を決めるバーディパットを打つ圧倒的有利な状況を作った。 しかし、ファーストパットを外して迎えた約60センチ(2フィート)のパーパット。これを沈めればプレーオフ継続という場面で、ボールは無情にもカップを逸れてボギー。その瞬間、彼の初優勝の夢は儚く散った。
【動画】リチャード・T・リー、60センチのパーパットを外す【LIVゴルフ公式X】
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x.com「当然の疑問ですが、一体何が起きたのですか?」と問う記者に対し、リーは極限状態での残酷な心理をありのままに語った。
「あそこには滑りやすいラインがあり、少し微妙なライだったんだ。短いパットだったから、ただ強く打とうとして、少し強すぎたんだと思う。アドレナリンが少し出ていたんだろうね」
世界トップクラスの強豪を相手に互角に渡り合い、勝利が目前に迫った瞬間に分泌されたアドレナリン。それが、普段なら絶対に外さないはずの短いパットのタッチを狂わせた。ゴルフというゲームが持つ、あまりにも残酷で繊細な一面がそこにあった。
ワイルドカード史上最高位のプライドと次戦への誓い
悲劇の敗戦となってしまったが、リーが残した「単独2位」という成績は、LIVゴルフのワイルドカード選手として史上最高位であり、初のトップ10入りという歴史的快挙である。
彼がこの大舞台で堂々としたプレーを見せられた背景には、並々ならぬ自信の裏付けがあった。
「LIVプロモーションズ(今年1月の予選会)ではたった3枠しかなく、そこで完璧なプレーをしなければならなかった」
わずかなチャンスを自らの手でもぎ取ってきたという自負が、メジャー覇者との直接対決でも彼を支えていた。パターをマレット型に変えてから向上したというパッティングのスタッツも、彼に確かな自信を与えていた。
「今週はいける気がしていたんだ。素晴らしいプレーができたよ。来週また挑戦したい」
残酷な敗戦直後であっても、決して下を向くことなく次戦への誓いを立てたリー。チームのサポートを持たない一匹狼が、自らの腕一本で世界の頂点に肉薄したこのシンガポールでの戦いは、彼のキャリアにおいて最も誇り高き“敗北”として刻まれるだろう。南アフリカへと向かう次戦、彼の不屈の闘志が再びリーダーボードを沸かせてくれるはずだ。
