現代の“主流”が詰まったスウィング

キアラ・ロメロ。カリフォルニア出身の20歳。オーガスタ女子アマは3度目の出場。昨年、アマチュア年間最上位者に送られる「マーク・マコーマック メダル」を獲得。この選手、覚えておいて損はない

解説:横田英治プロ。ゴルフダイジェスト・アワード2025「レッスン・オブ・ザ・イヤー」受賞。岸部桃子プロら女子プロを指導するとともに、ゴルフサロン「CLUB HOUSE」を主宰
世界ナンバーワンプレーヤーのスウィング、さすがに興味がありますね。予選2日目のドライバースウィングを見てみましたが、第一印象はやはり「上手い」。体が大きく、いかにも筋力がありそうな体躯も魅力的です。スウィングタイプは異なりますが、レキシー・トンプソンを彷彿とさせる雰囲気があり、非常に人気が出そうです。
彼女のスウィングを一言でいえば「オーソドックス」。今のゴルフ界の主流と言えるポイントが凝縮されています。
まず、それが顕著に表れているのがアドレスです。

アドレス:ボールポジションはかなり左寄り
ボールポジションはかなり左寄りで、足のラインは若干クローズ。それに対して腰から上はすべてスクエアに構えています。ボールを左に置くのは、ヘッド軌道の円弧の左半分でコンタクトし、フェード系のボールを打つため。一方、少しクローズスタンスにしているのは、体から遠くなるボールに対して、少し近づいてしっかりと届かせる意図があります。グリップも女性としては珍しくスクエアですね。
ドライバーの球筋はフェードと言いましたが、実際に見ていると、彼女はストレートからほんの少しドロー回転のボールを打っています。クラブが下から入り、タメが強くなったときにつかまってドローになる程度で、球がねじれるようなことはありません。
徹底した「左軸」と「遠心力」の活用
テークバックは若干フェースを閉じ気味に上げていきますが、スクエアグリップなので、フェースアングル自体はスクエアの範疇に収まっています。

テークバック:ややシャットに上げるが、フェースアングルはスクエアの範疇
特筆すべきは、スウィング軸です。右サイドに全く動かず、左サイドに軸を保ったままトップに向かい、終始左軸をキープして振り抜いています。これもまた、現代の主流と言える動きです。切り返しは非常にゆったりしており、クラブや体の質量を巧みに使っている印象を受けます。上体の筋力は強いはずですが、決して力任せにならず、遠心力を上手く利用していますね。これなら、意図しないような曲がる球は出ないだろうと感じさせてくれます。
最大のポイントは「スウィングアークの大きさ」
彼女のスウィングにおける最大のポイントは、テークバックとフォローの幅の広さにあります。
テークバック: クラブヘッドが9時のポジションに来たとき、ヘッドが体から一番遠い位置にある。

テークバック:ワイドでヘッドの位置が非常に遠い
フォロー: 同じく3時のポジションでも、やはり体とヘッドの距離が非常に遠い。

フォロースルー:ここでも体と最大限遠い位置にヘッドがある
これは、先ほど述べたように遠心力を最大限に生かしている証拠です。俗に言う「スウィングアークが大きい」状態ですが、これには飛距離アップ以外にも大きなメリットがあります。
アークが大きくなると、インパクトゾーンが「船底」のように低く長くなります。すると、多少打点が前後にずれても、フェースアングルや入射角が大きく変わらないため、ボールが曲がりにくいスウィングになるのです。個人的には、飛距離以上にこの「安定感」こそが彼女の強みだと感じます。
「筋力」と「脱力」が融合
こうした緩やかな軌道で振れるのは、切り返しの「間」の取り方が上手く、筋力に頼らず脱力してクラブを振れているからです。もし上体のパワーに頼りすぎてしまうと、軌道は船底型ではなく、V字のような急角度なものになってしまいます。そうなるとインパクトゾーンが狭くなり、フェースアングルも不安定になりやすいのです。
強靭な肉体に目が行きがちですが、実はその筋力を「ヘッドを上手く使うための脱力」に転換できている。飛んで曲がらない、非常に完成度の高いスウィングの持ち主。近い将来、アメリカを代表するような選手になるでしょう。
PHOTO/Yoshihiro Iwamoto

