痛みを飲み込むメジャーチャンピオンたち
50歳を過ぎたプロゴルファーたちにとって、痛みは日常の一部だ。2021年大会王者のアレックス・チェイカ(ドイツ)は、シニアツアーの生々しいリアルをこう言い表す。
「ティーアップする選手の50%は、何らかの肉体的問題を抱えていると言っていい。私たちはもう20歳ではない。痛みを飲み込んで、毎週のように全力でプレーするしかないんだ」
チェイカ自身、深刻な椎間板ヘルニアによる背中の痛みに苦しめられている。過去にはこの負傷で12試合を欠場し、今大会を迎えるにあたっても直近4週間は満足な練習すらできず、治療と注射に時間を費やしてきた。「私の身体は他の誰とも同じように、ゆっくりと壊れていっている」と語る彼の言葉には、隠しきれない悲哀が漂う。

メジャー3勝のパドレイグ・ハリントン(写真は25年全米プロ、撮影/岩本芳弘)
メジャー3勝のパドレイグ・ハリントン(アイルランド)も例外ではない。彼は首のディスク交換手術を経験し、現役時代の33%のトーナメントを首のケガで棒に振ったと明かす。さらに2020年からは右膝の手術が必要だと宣告されているが、6年経った今もだましだましプレーを続けている。「Instagramで軟骨を再生する方法の広告を見ては、あと2〜3年待てば画期的な治療法が出てくるんじゃないかと期待しているよ」と笑い飛ばすが、常にギリギリの状態で戦っていることに変わりはない。
「ゴルファーなら誰もが身体にチョークポイント(負担が集中する弱点)を持っている。それを見つけ出し、トレーニングの50%をそのケアに費やさなければならない」とハリントンは語る。これが、シニアツアーで生き残るための鉄則なのだ。
クラブプロたちが挑む「もう一つの過酷な戦い」
そして今大会には、怪我とは違う「もう一つの過酷さ」と戦う男たちがいる。それが、全米各地のゴルフ場でレッスンや運営に従事するクラブプロたち、通算35名からなる「コアブリッジ・フィナンシャル・チーム」だ。
フロリダ州のストーンブリッジ・カントリークラブで働くジャスティン・ヒックスもその一人。彼らはフルタイムでツアーを戦う選手たちとは異なり、日々の業務の合間を縫ってこのメジャー大会に照準を合わせなければならない。
「私の所属するセクションのハイシーズンは夏です。だから春のこの時期にメジャーを戦うのは、NFLのチームに『レギュラーシーズンが始まる前にプレーオフやスーパーボールを戦え』と要求しているようなものです」と、ヒックスはその難しさを表現する。絶対的な練習量の差というハンディを背負いながら、飛距離で圧倒する若手シニアたちに立ち向かうのは容易なことではない。
それでも彼らが戦い続ける理由
肉体は摩耗し、時には本業との両立に苦しみながらも、なぜ彼らはこの厳しい舞台に立ち続けるのか。
2022年覇者のスティーブン・アルカー(ニュージーランド)は、その理由を極めてシンプルに語る。
「私はまだハングリーだ。ゴルフのチャンピオンシップで勝ちたいという飢えがまだある。それはとても素晴らしいことなんだ」
そして、クラブプロのヒックスの言葉が、彼ら全員の思いを代弁している。
「ゴルフは私の人生の大部分を占めてきた。ゴルフが関わらない仕事に就くことなど、到底想像もできない。ゴルフを仕事としてプレーできることは、本当に素晴らしいことだから」
満身創痍の身体に鞭を打ち、限られた時間の中で最高峰の舞台に立つ。スコアボードには表れない彼らの「誇りと痛み」、そしてゴルフへの尽きることのない「情熱」こそが、この全米プロシニア選手権を最も美しく、感動的なメジャー大会にしているのである。

