3番での「トリプルボギー」から始まった大逆襲
プロアマ問わず、多くのゴルファーにとって、ラウンド序盤でのトリプルボギーは、その日一日のスコアメイクを諦めかけかねないほど致命的なミスだ。初日の櫻井を襲った悪夢も、まさにラウンドが始まってすぐの3番ホールで起きた。
しかし、そこから崩れるどころか、彼女は信じられないような精神の切り替えを見せた。トリプルボギーのショックを引きずるかと思われた直後から、彼女のプレースタイルは息を吹き返す。正確なショットと研ぎ澄まされたパッティングで次々とボールをカップに沈め、終わってみれば1ラウンドで「9つ」ものバーディを奪取。最終的に4アンダーという素晴らしいスコアにまとめ上げ、リーダーボードの上位に名を連ねたのである。
ラウンド後の囲み取材で櫻井は、その劇的なラウンドについて尋ねられると、「3番ホールでトリプルボギーを叩いたときは、かなり(落ち込んだ)状態でした。でも、頭を切り替えてリフレッシュした結果、トータルで9個のバーディを奪うことができました。信じられないような、本当に素晴らしい気分です」と語った。
「おかしくなってしまった」独自のメンタルコントロール
一体、彼女はどのようにしてトリプルボギーの絶望から立ち直ったのか。その秘訣を問われた櫻井の口から出たのは、彼女の強心臓ぶりを象徴する言葉だった。
「私は普段、トリプルボギーなんて叩きません。だから、あの状況がなんだかおかしくなってしまったんです。それで気持ちを切り替えることができました」
普通なら焦りや怒りに支配される場面で、自らのミスを「普段はないことだから」と客観視したのだ。この特異とも言えるポジティブな自己対話こそが、続くホールでのバーディラッシュを生み出す起爆剤となった。メキシコのタフなコースセッティングも、風の読みの難しさも、精神的に完全にリセットされた彼女の前では障害にはならなかった。
メキシコの地をポジティブに楽しむルーキーの自覚
今週の舞台であるメキシコ・マヤコバの環境も、彼女のポジティブなメンタリティを後押ししているようだ。
「気候はとても暑いですが、本当に美しい場所です。コースも美しく、私はここを心から楽しんでいます。そして何より、人々がとても温かくてハッピーですね」
異国の地での環境の変化をストレスに感じるのではなく、リゾート地特有の明るい空気感と同化し、プレーの活力に変えている様子が窺える。
LPGAツアーという世界最高峰の舞台で戦うルーキーイヤー。当然ながら、すべてが順風満帆というわけではない。現在の自身のプレーについて問われると、櫻井は等身大の言葉で締めくくった。

初日4アンダーの4位タイでスタートした櫻井心那(写真は25年ミヤギテレビ杯ダンロップ女子、撮影/姉崎正)
「自分が本来すべきプレーが完璧にできているわけではありません。でも、今年は私にとってのルーキーイヤーです。すべてが新しく、そのすべてに慣れようとしながら、この経験を楽しんでいます」
思い通りにいかない状況を拒絶するのではなく、新たな経験として受け入れ、楽しむ。序盤のトリプルボギーから這い上がり、9つのバーディを奪ってみせた櫻井心那の初日は、彼女が持つ計り知れないポテンシャルと強靭なメンタリティを証明するラウンドとなった。
なお、同じくルーキーイヤーを戦う原英莉花も初日を4アンダーの4位タイで終えており、日本の若き才能たちが異国の難コースで揃って旋風を巻き起こしている。この日本の新星たちが、残り3日間でどのようなドラマを見せてくれるのか。メキシコの地で、彼女たちのさらなる躍進に期待が高まる。
【リビエラマヤオープン 初日・日本人選手成績】
・4位タイ(4アンダー):櫻井心那、原英莉花
・10位タイ(3アンダー):勝みなみ
・27位タイ(1アンダー):西村優菜
・43位タイ(E):岩井明愛、吉田優利
・85位タイ(3オーバー):岩井千怜、笹生優花
・97位タイ(4オーバー):渋野日向子
