有休(PTO)を使ってLPGAツアーへ
ウリエルはかつてツアーで本格的に戦っていたClass A(A級)のプロゴルファーだが、現在はVisaでフルタイムの会社員としてビジネスの最前線で働いている。彼女が今大会に出場できたのは、会社に有給休暇(PTO)を申請したからだという。
「外から見ればLPGAの選手はセレブのようで、世界中を旅して最高のコースでプレーできる素晴らしい仕事に見えるかもしれない。でも、私は過去の経験から、それがどれほど肉体的に過酷で、家族や友人から離れて過ごさなければならない厳しい世界かを知っている」と彼女は振り返る。
現在の職場については、「VisaはオリンピックやNFL、F1などをスポンサードしていて、元プロアスリート向けのプログラムもある。私が朝や仕事終わりにゴルフの練習を重ねていることを理解してくれる素晴らしいチームに恵まれている。ビジネスの経験を積みながら、長期的な視野でキャリアを築けるのは本当にエキサイティングなことだ」と、仕事とプロスポーツの舞台を両立できる環境に深い感謝を口にした。
さらに彼女は、ビジネスの世界とプロスポーツの両立についてこうも語っている。
「このレベル(プロ)に達する人間は、他の人とは違う何かを内に秘めています。それはどんな仕事をするにしても、間違いなく自分の『強み(エッジ)』になるのです」
プロスポーツの過酷な環境で培ったマインドセットが、一般企業でのビジネスにおいても強力な武器になっていることを示す、説得力のある言葉だ。
休日は仲間と「ホワイトクロー」。等身大のゴルフ愛

アラーナ・ウリエル。カリフォルニア州出身の29歳。アーカンソー大で活躍後、2018年のQシリーズを突破し19年にLPGAツアーデビュー。同年は自己最高の9位タイを記録。2021年には平均飛距離約269ヤードで全体14位に入った飛ばし屋
そんな「会社員プロ」の彼女にとって、今回の週末(決勝ラウンド)進出は嬉しい誤算だったようだ。実は、彼女がツアーで予選を通過したのは「2024年の全米女子オープン」以来のことだった。第一線から退き、フルタイムで働きながらこの世界最高峰の舞台で再び予選を通過した事実は、この快挙の凄まじさをより際立たせている。
「本当なら今日は、プールサイドでマルガリータを飲んでいると思っていたわ。週末もプレーできるなんて全く予想していなかった。でも、毎日すべてのショットに全力を尽くした結果、長い時間が経ってもまだ自分に(プロとして戦える)実力が残っていることが分かって嬉しい」とジョークを交えて喜びを語った。
彼女の「実力が残っている」という言葉は決して誇張ではない。今大会のコースはフェアウェイが非常に狭く、海風が選手を苦しめる難コースだが、彼女は第1ラウンドを「74」で耐えた後、第2ラウンド、第3ラウンドと連続して「72(イーブンパー)」にまとめ、通算2オーバーという堂々たるスコアでプレーしているのだ。単なるまぐれではなく、確かな実力で週末を戦っていることが分かる。
彼女の普段のゴルフライフは、ツアーのヒリヒリするような厳しさとは無縁の、とても親近感が湧くものだ。休日はゴルフ仲間と一緒に、アルコール飲料の「ホワイトクロー」とホットドッグを片手に、スクランブル方式の大会を楽しんでいるという。「私がチームにいると毎回勝っちゃうから、持ち回りのトロフィーはあまり動かないんだけどね」と笑う彼女。遠く離れた地で戦う彼女の姿を見て、地元のゴルフ仲間たちも「先週一緒にホワイトクローを飲んでた彼女が!」と大いに盛り上がっているに違いない。
ビジネスの世界からLPGAに持ち込む「魔法」
過酷なプロの世界から一度離れ、ビジネスの世界で新たなキャリアを積んだ今、彼女のLPGAツアーに対する視点は大きく変わった。予選通過を果たした今の目標を問われると、彼女は力強くこう答えた。
「これからはプロゴルフに違った形でアプローチしたい。ポジティブなリーダーとして、ファンや他の選手たちにLPGAの『魔法』を還元したいの。企業という外の世界に身を置いたことで、このツアーでプレーすることがどれほど特別で驚くべき機会なのかを、客観的な視点から共有できるようになった。LPGA、そして今はVisaの良い代表として、周囲にポジティブな影響を与えたい」
有給休暇を使ってツアーに現れた異色のプロゴルファーは、確かな実力とビジネスパーソンとしての広い視野を持ち合わせている。メキシコのギャラリーに、彼女なりの「魔法」を届ける週末のプレーに期待したい。
