第1打の恐怖と「4パット」の洗礼、そして夫の支え
長期間の猛特訓を経てティーイングエリアに戻ってきたウィ・ウェストだったが、試合のプレッシャーは想像を遥かに超えていた。
「スタート前はそれほど緊張していなかったのに、いざ1番ホールのティーに立ったら『S-h-i-t』って心の中でスペルを呟いてしまったわ。今は母親だから、放送禁止用語は直接言わずスペルで発音するのよ(笑)」
彼女は赤裸々にその恐怖を振り返る。
「突然、ホールが信じられないくらい小さく見えた。たった2フィートのパットでさえ、『絶対にカップに入らない』って思ってしまったくらい」
メジャー級と評される難関グリーンは、ブランクのあるホストに容赦なく牙を剥いた。11番のひどく難しいピン位置に苦しめられ、12番ホールでは屈辱の「4パット」という洗礼を浴びた。

順手でパッティングしているミッシェル・ウィ・ウェスト。この後、クロウグリップに変更している(写真/Getty Images)
「もし私がまた右下(※順手)でパットしようとしているのを見たら、ロープの外から『絶対にやめろ!』って叫んでちょうだい。これからはクロウグリップ一本で行くわ」
ラウンド後、自虐交じりのユーモアで報道陣を笑わせた彼女だが、実はどん底の中でプロの意地も見せていた。ラウンドの序盤(2番、3番、5番、9番)は本人いわく「非常にダーク」な精神状態だったが、キャディを務めた夫のジョニー・ウェストが「ずっと崖っぷちからなだめてくれていた」と明かしている。その精神的な支えもあり、屈辱の12番以降の上がり6ホールは見事にイーブンパーでまとめたのだ。
「このコンディションと自分のスタートを考えれば、とてもソリッドだった」と胸を張るとともに、「このレベルで戦う選手たちがいかに凄いか、改めて思い知らされた」と、最前線で戦う後輩プロたちへ最大級の賛辞を贈ることも忘れなかった。
「私の一番の喜び」極限の戦いの中でも変わらないファンサービスと奇跡の巡り合わせ
この日、彼女が最も輝いていたのは、スコアボードの数字ではなく、ロープの外のファンと向き合う瞬間だった。12番の屈辱的な4パットの後も決して崩れることなく、必死にパーを拾い続けて迎えた15番のティーボックスでのこと。そこには、彼女のサインとボールを心待ちにしている一人の少年が立っていた。
プロゴルファーにとって、極度の緊張感とプレッシャーの中で戦いながらのファン対応は簡単なことではない。しかし、ウィ・ウェストは歩み寄り、最高の笑顔で少年にボールを手渡したのだ。
「私にとって、子供たちと関わり、彼らにボールをプレゼントすることは一日の最高の瞬間なの」
実はこの時、同伴競技者であった19歳のルーキー、ヤナ・ウィルソンとその光景を見て笑い合っていたという。なぜなら、ヤナがまだあの少年と同じくらいの年齢だった頃、アビアラでの大会を観戦に訪れ、ハイタッチを求めてきたヤナにウィ・ウェストがボールをプレゼントしようとしたところ、「いらない」と断ったという微笑ましい過去があったからだ。
「今日その時のことを2人で笑い合っていたの。あのボールを受け取った子供がどう育つか、人生どう繋がるか分からない。本当に素晴らしいことよね」
かつてボールを断った少女は今、プロゴルファーとして彼女の隣でプレーしている。大会ホストとして、彼女はただ試合を主催するだけでなく、次世代にゴルフの魅力を伝えることを何よりの使命としている。
「あのボールを受け取った子供たちが、未来の素晴らしいゴルファーに育ってくれることを願っているわ」
どんなにスコアメイクに苦しもうとも、ホストとしての品格と子供たちへの愛情を失うことはない。
「この緊張感を味わえて、本当に良い経験になったわ。明日はとにかくもっと低いスコアを目指すだけ」
極度のプレッシャーに身を置きながらも、ゴルフ界の未来を照らすミッシェル・ウィ・ウェスト。彼女の存在そのものが、この大会にとってかけがえのない財産である。
