
黄金世代では5人目のメジャー制覇者となった河本結
目の前の一打に集中し掴んだメジャータイトル

徹底したコースマネジメントが優勝へのカギとなった
熾烈な優勝争いの中にあっても、河本結の心は冷静だった。「メジャーを勝った実感はなくて、とにかく目の前の1打に集中してプレーしたので、やっと4日間が終わったという感じのほうが強いです」と、安堵の表情を見せた。
勝負の分かれ目はサンデーバックナインのマネジメントにあった。15番(98ヤード・パー3)では「狙いにいくと3パットの危険がある」と判断し、確実にカップ横に止める選択をした。そして最大の見せ場は17番(511ヤード・パー5)のセカンドショットだ。ピンまで残り230ヤード、木が視界に入る状況で、以前の彼女なら迷わずユーティリティを握っていただろう。しかし、彼女が選択したのは7番アイアンでの「刻み」だった。
この判断について河本は、「その考えはたぶん、若い頃の自分だと絶対になかった。ガンガンいっていたと思う」と振り返る。「そこで自分で、『いや、7番アイアンで刻む』となれたことが、今週のこのコースにすごく向いているマネジメントだったし、良いメンタル状態だった」と、自身の精神的な成長を「大人になった」という言葉で表現した。その後のサードショット(残り86ヤード)を58度のウェッジで30センチにピタリと寄せバーディを奪うと、続く18番(415ヤード・パー4)でも残り180ヤードから6番アイアンでピン横1メートルにつけるスーパーショットを披露。連続バーディで鮮やかに優勝を決定づけた。
「特に17番は、これまでの約10年間でやってきたことが実になったと感じた瞬間でした」
米ツアーでの挫折とスウィング改造
かつて挑んだアメリカツアーでは思い描く結果を出せず、どん底を味わった。
「アメリカに行ってすごく辛かった時期があって、本当に記憶がないくらい」と振り返る。しかし、その経験が彼女を強くした。「今はちゃんと冷静に、もしこういうミスをしてしまったらこうなってしまうっていう、いろんな想定ができるようになった」と、精神面での大きな成長を口にする。
技術面でも妥協はなかった。数年がかりで取り組んできたスウィング改造。
「スウィングがほぼスライスだったんで、つかまらない球じゃなくて、ちゃんとつかまった球を打てるスウィングにした」と、球筋の改善に取り組んできた成果が、今大会の安定したショットを生み出した。
日常のすべてをゴルフに捧げる徹底した準備
復活の裏には、プレー以外の部分での徹底した準備もあった。「マネジャーさんが栄養士の資格を取ってくれて、朝晩作ってくれているんです」と、食事面での徹底した管理を明かしている。
さらに、「とにかく体にすごく意識を向けているので、自分の前から、横からの『軸』を意識して歩いたり。(ゴルフだけでなく日常生活での意識が)ここという時の勝負どころのパットに繋がる」と語るように、日ごろからの準備がゴルフに結びつくと考え、徹底したセルフプロデュースを行っている。
母の日に届けた最高のプレゼント

最終日に着るウェアを決めた時点で「優勝してトロフィーを抱えている姿」がイメージできていたそう
この日は「母の日」。大会のイメージカラーである緑とピンクをコーディネートに取り入れ、ピンク色で母への感謝の気持ちを表現した。
「母の日だからプレゼントしたいな、優勝を届けたいなと思っていたんですけど、試合に入ったら自分のゴルフに集中していました」と振り返るが、最終ホールのグリーン脇で待っていた母の姿を見た瞬間、喜びが爆発した。
「母と弟だけじゃなくて、本当に多くのギャラリーさんがついてくださったので、感謝しかないなと。本当に幸せだなと思いました」。

会場には河本の家族が駆けつけていた
最愛の家族の前で完全復活を遂げた彼女の視線は、すでに次なる高みを見据えている。
今後の目標を問われると、「今は年間女王を獲ることが自分の中では一番大きな目標。まずはそこに行くために、何が最善かを考えてゴルフと向き合っている」と力強く断言した。米ツアーへの再挑戦についても「それを獲ったらまた考えるかもしれないが、今はまずはそこ(年間女王)」と、国内の頂点に立つことを最優先事項に掲げている。
挫折を知るヒロインは、周囲への感謝を胸に、さらなる高みを目指していく。
撮影/姉﨑正
