驚異の「パーオン率100%」と、後半を襲ったパットの不調
最終日、首位を猛追するイン・ルオニンのショットは、まさに「神がかり的」だった。前半の9ホールで5つのバーディを奪い、ハーフターン(9番終了)の時点では首位のジーノ・ティティクルに「1打差」にまで肉薄する凄まじいチャージを見せ、リーダーボードを一気に駆け上がったのだ。
この日の彼女の圧倒的なショット力を示すデータがある。18ホール全てでパーオン(GIR)に成功し、フェアウェイキープも13回を数えた。メジャー級と恐れられるマウンテンリッジ・カントリークラブのシビアな難コースにおいて、パーオン率100%という数字は異常とも言える精度の高さである。さらに言えば、2022年シーズン以降で「18ホール全てでパーオン」を達成したラウンドは、彼女にとってこれが7回目であり、これはLPGAツアーの最多タイ記録でもある。彼女のアイアンショットの精度が、歴史的なレベルであることを証明する圧倒的なデータだ。
しかし、首位の背中を完全に捉えたはずの彼女を、後半はゴルフの残酷な一面が襲う。ショットが完璧にグリーンを捉える一方で、グリーン上での不調が彼女を苦しめたのだ。
「バックナインでは、ピンの上(下り傾斜)につけてばかりだった。今週だけで、3パットを7回もしてしまった」
ラウンド後のインタビューで、ルオニンは大会を通じた自身のパットの不調と、後半のマネジメントを悔やんだ。
どんなに素晴らしいショットを放っても、カップに沈める最後の1打が決まらなければスコアは伸びない。ショットのキレが最高潮に達し、優勝の二文字が現実味を帯びていただけに、グリーン上での不調がルオニンにとってどれほど残酷だったかは想像に難くない。優勝という決定的な結果が、グリーンの上で手のひらからすり抜けていった。
ライバルであり大親友。次なる勝利への誓い
この結果により、ルオニンは直近の19カ月間で実に5度目の2位を記録することとなった。あと一歩で頂点に届かないもどかしさは計り知れないが、当の本人の目は決して死んでいない。
「もうすぐ、クールなことが起こるはずよ」
彼女は自身のゴルフが確実に良い方向へ向かっていることを信じ、力強く前を向いている。
そして、この日優勝を飾ったのは、彼女の大親友であり最大のライバルでもあるジーノ・ティティクルだった。実は昨年のCMEグループツアー選手権などでティティクルが優勝した際、ルオニンはスケジュールの都合で祝福の場にいられず、後でティティクルから「なんで私の祝勝会にいなかったのよ!」と怒られていたという微笑ましいエピソードがある。

ジーノ・ティティクルにシャンパンシャワーを浴びさせるイン・ルオニン(写真/Getty Images)
「だから今回は、真っ先に駆けつけたの」
ルオニンは敗者の悔しさを微塵も見せず、満面の笑みでティティクルに祝福のシャンパンを浴びせた。
勝者であるティティクルもまた、ルオニンに向けて最高の言葉を残している。
「コース上ではお互いを倒そうとする最強のライバルだけど、コースを出れば最高の親友。プロの過酷な生活を分かち合える存在がいるのは本当に大切なこと。私たちはこれからも長く、何度も優勝争いのバトルを繰り広げるはずよ」
フェアウェイの上では最強のライバルとしてしのぎを削り、ホールアウトすれば互いの健闘を称え合う大親友。過酷な勝負の世界で芽生えた二人の美しい関係性は、ゴルフというスポーツの素晴らしさを何よりも雄弁に物語っていた。イン・ルオニンの次なる勝利の瞬間には、今度はティティクルが真っ先に駆けつけ、最高の笑顔でシャンパンを浴びせるはずだ。
