「泣きそうなくらい嬉しい」完璧主義だった女王を救ったスランプの気づき
かつて圧倒的な強さで女子ゴルフ界に君臨(2019年に世界ランキング1位になり、合計163週間キープ)したコ・ジンヨンだが、近年は苦しい時期を過ごしていた。今大会を5位タイで終え、約1年ぶりにトップ10(10位以内)に入ったことに対し、「泣きそうなくらい」と素直な喜びを吐露した。
長年、彼女を縛り付けていたのは彼女自身のストイックさだった。以前は「ゴルフが自分の人生の100%」だと信じて過酷な努力を続け、「より良い人間になる前に、まずは良い選手でありたい」と張り詰めた完璧主義の思想を持っていたという。
しかし近年、スランプを経験する中で、「ゴルフは私の人生のすべてではない」と気づけた。自分を追い詰めるのではなく、自分を支えてくれる友人、家族、マネジャー、スタッフへの感謝が芽生え、「ゴルフはただのゴルフ(golf is just golf)」と受け入れられるようになったのだ。
心の余裕は、そのままプレーの余裕へと直結する。最終日はミスをしても「まだコース上にいるんだから」と自分を許すことができたという。新婚である夫の存在もそのメンタル維持に大きく貢献した。
「人間、死ぬ時に『なぜあのホールであんなショットを打ってしまったんだろう』なんて考えない。この気づきは、より良い人間になるための大きな転換点になった」
呪縛から解き放たれた女王の至言は、我々の胸に深く突き刺さる。
「将来、子供は何人欲しい?」世界トップを争ったネリー・コルダとの1年半ぶりの競演
そんな劇的な精神的成長を遂げた彼女の最終日は、特別なペアリングとなった。かつて世界ランク1位を激しく争ったネリー・コルダと約1年半ぶりに同組でラウンドしたのだ。
「昨日の夜、『最後にネリーと一緒に回ったのはいつだったかな』って考えていたの」と再会を心待ちにしていたコ・ジンヨン。共に成長してきた二人が、久しぶりの競演で語り合ったのは、ゴルフの技術やスコアのことではない。なんと「将来、子供は何人欲しいか」といったプライベートな話題に花を咲かせたという。
ネリーには現在婚約者がおり、自身は2カ月前に結婚式を挙げたばかりという互いの環境の変化に「なんだか不思議な感覚だったけれど、いつも通り本当に楽しかった」と笑顔を見せた。かつてはコース上で火花を散らしたライバル同士が、同じように人生の新たなステージへと進み、コースを歩きながら未来の家族について語り合う。過酷なツアーの裏側にある、なんとも微笑ましいエピソードである。
3年ぶりの大観衆。心地よい緊張感の中で取り戻した輝き

約1年ぶりにトップ10フィニッシュを果たしたコ・ジンヨン(写真は25年ホンダLPGAタイランド、写真/姉崎正)
新時代を築いた2人のスーパースターの競演に、ファンも黙っていなかった。最終日は、本人いわく「約3年ぶり」となるほどの大観衆が彼女たちのグループを追いかけた。
かつての完璧主義を脱ぎ捨て、「ゴルフはただのゴルフ」と笑えるようになったコ・ジンヨン。彼女はその大ギャラリーの前で「心地よい緊張感」を楽しみながらソリッドなプレーを披露し、多くの拍手を浴びた。
結果にとらわれず、周囲への感謝と人生そのものを楽しむことで、彼女は再びリーダーボードの上位へと戻ってきた。大歓声の中で本来の輝きを取り戻した元世界1位の新たなゴルフ人生は、ここからさらに豊かで、素晴らしいものになっていくはずだ。
