「ブリヂストンレディスオープン」の練習日。パッティンググリーンやドライビングレンジを眺めると、耳にワイヤレスイヤホンを装着して調整に励む選手たちの姿が目につく。近年、モチベーション向上や集中力アップのツールとしてスポーツ界に定着したイヤホンだが、繊細な感覚が要求されるトッププロゴルファーたちは、練習中の“音”とどのように向き合っているのだろうか。使用するメリット、そしてあえて外す理由など、それぞれの考え方に迫った。

緊張緩和と「脳へのスイッチ」。イヤホンを活用するメリット

画像: 練習中はイヤホンをしていることが多い申ジエ、最近はポッドキャストも多いという

練習中はイヤホンをしていることが多い申ジエ、最近はポッドキャストも多いという

練習中にイヤホンを積極的に活用しているのが申ジエだ。「1日中ずっと聞く」という申は、音楽だけでなくポッドキャストやオーディブル(朗読本)で経済や歴史に関しての音読を聴きながら、ゴルフに集中している。

「こんなこと(知識)があるんだ~って学べますし、リズムも関係なく練習できるので楽しいです」と意外な一面を見せた。

試合前の練習ではEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)を好んで聴くと言う申ジエ。

「朝にEDMを聴くと、試合の緊張感に対応するように体が無意識に反応してくれてます。自分のペースに持っていき、脳のスイッチを入れるためのツールとして活用しています」

また、髙野愛姫もイヤホンを愛用する一人だ。髙野の場合は「イヤホンをつけると、自分の中の感覚(打感)が変わってしまう」というデメリットを認識しつつも、「試合の日は、自分の感覚よりも緊張をほぐすほうを優先している」と、メンタルコントロールにおけるメリットを重視していた。

音楽のテンポやリズムは気にせず、時にはお気に入りのYouTubeやVlogを流しながらリラックスしてスウィングを整えている。

「打球音」と「自分の世界」。使い分けと使わない派の理由

画像: 「ナシ」と言い切る永峰咲希

「ナシ」と言い切る永峰咲希

明確に「ナシ」のスタンスを取るのが永峰咲希だ。

永峰は「イヤホンをつけると、自分の中の感覚も鈍くなってしまう」と、音の遮断がもたらすデメリットを指摘する。さらに「練習中にイヤホンを落とさないようにと気にし始めると、意識がそこばかりに行ってしまう」という物理的なストレスも、使用を避ける理由の一つに挙げている。

一方で、気分やシチュエーションによって使い分ける選手も多い。佐藤心結は「ルーティンではなく、完全にその日の気分で決めている」と話す。イヤホンをつけるメリットとして「周りの音が聞こえなくなり、自分の世界を作りやすくなって集中できる」ことを挙げる反面、音楽のリズムによってスウィングのテンポが狂うことを警戒している。

そのために、使用する際も「片耳だけで、打音がわかる範囲に音量を小さくして聴く」か、パターの打球音そのものに集中したい時はあえて外すなど、臨機応変に変えている。

かつてはスタート前にイヤホンを着用していた青木瀬令奈も、現在はツアー会場の練習日には使用していない。

「プライベートで一般の練習場に行くときは、好きなアーティストの歌詞やエネルギーを感じながら聴く」という青木だが、本戦を控えた会場では「やっぱり打球音をしっかりと聴きたいタイプ。耳に蓋がないようにしています」と、音から得られる情報の重要性を語った。

外部の雑音をシャットアウトして「自分の世界」を作ることにメリットをとるか、あるいは繊細な打球音や打感を五感でキャッチするためにデメリットを避けるか。1打の重みが異なるプロの世界だからこそ、耳元から流れる音ひとつにも、三者三様の緻密なマネジメントが存在していた。

撮影/岡沢裕行


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