どん底の自信を救った「チヒ若いからいいね」
「本当にサロンパスですごい打っちゃって、精神的に『私、ゴルフできるかな』ぐらい、すごい自信が落ちていたんです」
李知姫は、直近のレギュラーツアーでの不調(2日間で14オーバーの112位タイで予選落ち)により、今大会も良いスコアで回れる気がまったくしなかったと本音を吐露する。
レギュラーツアーに行けば、周りは若い選手ばかり。「私が若い子を見たら、やっぱり若いから違うなと思う」と年齢の壁を感じていた。しかし、シニアの舞台は違った。
「去年シニアの試合に出たら、『チヒは若いからいいね』ってみんな言うから、『私は若いんだ』みたいな(笑)。体が全然違うねって言われて、私って違うんですか? みたいな感じで、すごい新鮮でした」
現在47歳。同世代の選手が少なく、守りに入りがちだった彼女だが、シニアツアーで元気いっぱいにゴルフを楽しむ先輩たちの姿に圧倒された。
「先輩たちがあまりに元気で、私も頑張ったらああいう感じで元気でゴルフできるかなって。すごいみなさんからパワーをいただいている」
年齢を言い訳にしない先輩たちの背中が、自信を喪失していた「若手」の李知姫に再び火をつけたのだ。
打感を変えた新1Wと、極限の緊張感を乗り越えたマネジメント
今大会の舞台である武蔵カントリークラブは、ティーショットの精度が極限まで試されるタフなセッティングだった。李知姫は「ティーショットを外したらすぐボギーとかになっちゃうので、最後の18番のセカンドショットまで、緊張感がいっぱいで回りました」と振り返る。
攻略の鍵となったのは、今週から投入した新しいドライバーだ。「音がしない静かな感じ」という、打感が異なるタイプへの変更が功を奏し、不安定だったティーショットのリズムを取り戻した。
また、最終日は気温が下がり、雨も降るタフなコンディション。「寒くなったら飛ばなかったので、そこを計算に入れてプレーしました」と、ベテランらしい冷静なマネジメントでコースと対峙。17番で2メートル、18番で3メートルのバーディパットを外したものの、最後は20センチのウィニングパットを沈め、中島真弓の猛追を1打差でかわして逃げ切った。
「JGAのメジャーは今年初めて参加したんですけど、このタイトルを取れたのが本当に嬉しい。何より女子オープンに出られるので、それが私の中で一番」
どん底から這い上がり、大きなモチベーションとなる「日本女子オープン」への切符を自らの手で掴み取った。
不動裕理の雪辱と、「ローアマ一族」の歓喜
一方、通算2オーバーの単独3位でフィニッシュしたレジェンド・不動裕理の表情は厳しかった。
「パッティングが弱気になり、入らなかったですね。チャンスはいくつかあったけど、全然外れてて、ラインも読めてないし、コースにやられました」
そう悔しさを滲ませつつも、「まだまだなので、練習して出直してきます。来年、出るからには優勝したいなと思います」と、早くも次戦への闘志を燃やしていた。
そして、大会を大いに盛り上げたのが、通算9オーバーでローアマチュアを獲得した中嶋常幸の長女、人見佳乃だ。最終日に「75」と粘りのゴルフを見せた彼女には、どうしてもこのタイトルが欲しい理由があった。
「(“日本”とつく大会の)ローアマは、父(中嶋常幸)も弟(中島雅生)も叔母(中島恵利華)も持っているので、私も一つくらい欲しいなと思っていたんです」
まさに「ローアマ一族」の悲願を達成し、「今回は本当に取れてすごく嬉しいし、うちの父とかも、とても喜んでくれていると思います」と喜びを爆発させた。

優勝した李知姫(左)とローアマチュアを獲得した人見佳乃(右)
“若手”シニアの新鮮な驚き、レジェンドの飽くなき向上心、そしてアマチュアの意地。それぞれのドラマが交差した日本女子シニアオープンは、ゴルフというスポーツが年齢に関係なく、いかに魅力的で奥深いものであるかを我々に教えてくれた。
写真/大会提供
