10番を終えて6アンダー。頭をよぎった「58」の記憶
韓国・釜山のアシアドカントリークラブは、決してパワーだけでねじ伏せられるコースではない。デシャンボー自身が「芝の種類が普段と大きく異なり、ラフからはフライヤーも出る。グリーン周りで非常に面白い、信じられないようなショットが要求される。ここではごまかしが効かない」と語るように、高い精度が必要とされる難コースだ。しかし、デシャンボーは前半から持ち前の攻撃的なゴルフでバーディを量産していく。
圧巻だったのは中盤までのスコアメイクだ。10番を終えた時点で6アンダーまでスコアを伸ばした彼の快進撃は、見る者すべてに特別な何かが起こることを予感させた。デシャンボーもその時の心境を振り返り、「このままいけばまた59や58のラウンドになるかもしれない」と、歴史的スコアを鮮明に意識していたことを率直に明かしている。
実は彼は、開幕前の会見で「58を出したグリーンブライアーの時の、あのとてもイージーだったスウィングに戻すために懸命に練習している」と語っていた。初日に見せたアイアンのキレは、まさにその成果だ。ラウンド後の会見で、記者から「LIVキャリアで最高レベルのアプローチデータだった」と指摘されるほど、彼の言葉は見事に裏付けられていたのである。
難コースの罠と、立ちはだかる「芝」の洗礼
だが、ゴルフの神様はそう簡単には微笑まない。後半に入ると、アシアドCCの罠が次々とデシャンボーに襲いかかった。
まずは13番(パー3)。本人が「完璧なショットだと思ったが、12ヤードも飛びすぎて坂を下り、結果的に3パットしてしまった」と振り返る手痛いボギーを叩く。さらに15番(パー5)では、完璧なショットが不運にも35ヤードも大きく跳ねて池に消えた。「あそこが少し勢いを狂わせた」と悔やむように、コースの容赦ない洗礼によって、終盤は一転して失速を余儀なくされてしまった。

後半は失速したが、前半の貯金で初日首位タイで終えたブライソン・デシャンボー
チームの窮地を救うキャプテンの執念
しかし、終盤のデシャンボーを突き動かしたのは、個人のスコア以上に「チーム」への強い想いだった。
今大会、クラッシャーズGCは主力メンバーのポール・ケーシーがケガで欠場し、急遽リザーブのトラビス・スマイスが代役を務めるという緊急事態に見舞われていた。実際に、この日スマイスは「2オーバー」と苦戦を強いられていた。
代役の仲間が苦しんでいるからこそ、キャプテンである自分が1打でも多く稼いでチームを牽引しなければならない――。最終18番ホールに差し掛かり、ようやくスコアボードでチームの成績を確認したデシャンボーは、キャプテンとしての強い責任感を燃やした。
「単なる2打差ではなく、3打差のリードに広げたい」
その一心で目の前のアプローチに全神経を集中させ、見事な寄せワン(アップ&ダウン)を決めてチームのために最後の1打をねじ込んだのだ。
そのキャプテンの執念に、チームメイトも最高の形で応えた。この日、5アンダーの「65」をマークして首位タイに立ったのは全体でわずか3人のみ。そのうちの2人が、他ならぬデシャンボーとチームメイトのチャールズ・ハウエルIIIだったのだ。二人の共闘により、クラッシャーズGCはトータル10アンダーを記録。2位に3打差をつける圧倒的な強さで、見事にチーム首位に立ったのである。
チームゴルフの「価値」を信じて
デシャンボーは、開幕前の会見でチームゴルフの未来について問われた際、このように熱弁を振るっていた。
「他のモデルと比較しても、私はチームゴルフのビジネスプランに対して非常に楽観的だ。チームゴルフが世界規模で、そして草の根レベルでゲームにもたらす『価値(バリュー)』を確信している。それを実現するために、私は自分の持てるすべての力を注いでいる」
熱弁を振るう彼の姿からは、単なるいちプレーヤーの枠を超え、新しいゴルフの形を牽引していくリーダーとしての矜持が痛いほど伝わってくる。明日以降、ファンは彼の豪快なショットだけでなく、キャプテンとしてチームを鼓舞し、仲間と共に戦う熱き姿にも魅了されるに違いない。
写真/LIVゴルフ
