ゴルフは物理学である。そう豪語し、常に論理的かつ科学的なアプローチでコースをねじ伏せてきたブライソン・デシャンボー。しかし、そんな「ゴルフ科学者」でさえも、時には深いスランプの闇に迷い込むことがある。「LIVゴルフ・コリア」でチーム優勝を果たした彼の裏側には、怒りに任せてクラブを叩きつけるほどの苦悩と、最新テクノロジーを駆使した前代未聞の解決劇があった。
画像: 満面の笑みでシャンパンファイトをするブライソン・デシャンボー

満面の笑みでシャンパンファイトをするブライソン・デシャンボー

絶好調からの暗転と、練習場での苛立ち

今大会、デシャンボー率いるクラッシャーズGCは通算23アンダーでチーム戦を制し、リーグ単独トップとなるレギュラーシーズン通算10勝目を挙げた。キャプテンのデシャンボー自身は通算11アンダーで単独3位に入った。結果だけを見れば素晴らしい成功だが、そこに至る道のりは決して平坦ではなかった。

初日の序盤、彼は6アンダーまでスコアを伸ばし、完璧なゴルフを展開していた。しかし、そこから歯車が狂い始める。大会途中からスウィングが狂い、本人の言葉を借りれば「ネバーネバーランド(行方不明)に行ってしまった」状態に陥ったのだ。手が前に出過ぎてクラブが適切にターンオーバーしない。頭で理解していても、体が言うことを聞かない。その結果、初日は「65」でまとめたものの、2日目は「68」、3日目には「71」と、日を追うごとに見事にスコアを落としてしまっていた。

そのフラストレーションは頂点に達していた。というのも今大会、クラッシャーズGCは大黒柱のひとりであるポール・ケーシーがケガで欠場し、急遽リザーブのトラビス・スミスが代役を務めるという緊急事態に見舞われていたのだ。代役のスミスが必死に食らいつき、結果的に8位タイに入る大健闘を見せるなか、キャプテンの自分がここで崩れるわけにはいかない。

最終日前夜、デシャンボーは暗くなるまで練習場に残り、苛立ちからクラブを地面に叩きつけていたという。完璧を求める男が、責任感に押しつぶされそうになりながら闇夜の中で苦悩する姿は、ゴルフというスポーツの残酷さを物語っていた。

物理学の謎を解き明かした「AI」との対話

ドライビングレンジでも解決の糸口を掴めなかったデシャンボーが向かった先は、なんとスマートフォンの画面だった。

彼は部屋に戻った後、AIに相談し、「アルファ・トルク」や「ガンマ・トルク」といった物理学の観点からクラブを自然にターンオーバーさせる方法を探ったのである。スウィングの不調をコーチではなく生成AIに相談し、トルクという物理学の概念を用いて議論を交わすプロゴルファーは、世界中を探しても彼一人だろう。

画像: 生成AIとの対話で「グリッププレッシャーが重要」という結論に到達したデシャンボー

生成AIとの対話で「グリッププレッシャーが重要」という結論に到達したデシャンボー

最新AIとの対話を通じて彼が導き出した答えは、驚くほどシンプルなものだった。彼は最終的に「グリップのプレッシャーをリラックスさせる」という答えに辿り着いた。

「グリップの力を抜き、自然にクラブが折り返るのに任せる」

AIの論理的な助言が、彼の中の迷いを吹き飛ばしたのだ。その結果、翌日の最終ラウンドで自由な手の感覚を取り戻した彼は「65」を叩き出し、見事なV字回復でチームを優勝へと導いた。

見事に復活を果たした後、彼は会見でこう語っている。

「このゲームは残酷(brutal)だ。絶好調だと思っていても、どん底に突き落とされる。だが、それこそがゴルフの美しい部分であり、我々はこのゲームをリスペクトしなければならない」

AIという最新テクノロジーを使っても、最後はゴルフという不確実なゲームに対する深いリスペクトに行き着く。自らの肉体と物理法則、そして最新テクノロジーを融合させる彼独自のスタイルは、ゴルフの新たな可能性を確かに示している。

写真/LIVゴルフ


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