「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は一般ユーザーの目に触れないクラブ開発競争の裏話を教えてもらった。
画像: 最近は、異素材複合フェースがひとつのトレンドだ(写真はイメージ)

最近は、異素材複合フェースがひとつのトレンドだ(写真はイメージ)

なぜ同じようなタイミング?

みんゴル取材班(以下、み):今年初めにキャロウェイが3層フェースの「クアンタムドライバー」、その半年後にプロギアが4層フェースの「RS DUOドライバー」を発表しました。宮城さんはこのタイミングについてどう考えますか。

宮城:研究開発はほぼ同じ時期にスタートしていると思います。新しいクラブを発売するには、生産体制を整えたりR&Aと折衝したりするリードタイムも必要なので、ただの後追いで半年に製品を出すのは不可能です。

み:ミズノも「JPX ONE」を出しました。ちょっと前までカーボンフェースが飛ぶとかやっぱりチタンがいいとか議論していたのに、想像の上をいく製品が次々出てきて異素材複合フェースがひとつのトレンドになっています。

宮城:「クアンタム」はカーボンが裏面、「RS」は表面、「JPX ONE」はカーボンではなくナノアロイという違いはありますが、チタンと異素材を接着するという発想は同じです。

み:前々から不思議に思っていたことがあります。なぜ同じ発想の製品が同じタイミングで示し合わせたかのように登場するのか。昔を振り返ってみると、1982年にミズノ、ダイワ精工、ヨネックス、ヤマハの4社が先を争うように発売したカーボンドライバー。2009年にテーラーメイドとナイキが採用した可変スリーブ。また、ボールでは2000年にブリヂストンとタイトリストが揃ってウレタンカバーボールを出しました。どれも今までとはまったく異なる素材や構造です。これってたまたまなんでしょうか。

宮城:偶然ではなく必然です。開発者の頭の中にはつねにいろいろなアイデアがあり、実用化の可能性を探っています。この材料を使えばもっと性能を出せるとか、この材料とこの材料をくっつけたらどうなるかとか。でも、どんなに優れたアイデアでもそれが世に出るとは限りません。社内で企画が通る通らないはともかく、こういうものを作りたいという相談を工場に持ちかけて、それは無理ですと断られることはよくあります。

み:製造技術が追いつかないために日の目を見ないアイデアがたくさんあると。

宮城:しばらくして量産技術が確立されたときに、みんながそれぞれ温めていたアイデアが一斉に製品として出てくるわけです。異素材フェースでいえば一番のネックは接着方法でした。フェースは常に動くものです。しなやかなチタンと硬いカーボンを貼り合わせても何千、何万発と打っているうちに剥離してしまいます。それを解決したのがメッシュシートです。性能には直接影響しないパーツですが、これがなければ作れません。

み:ヘッドの生産は中国の工場に集約されていますが、そうしたパーツメーカーからの逆提案もけっこうありますか?

宮城:こういう製法はどうでしょうとか、ウチでこれができますといった話はもちろんよくあります。ヘッドメーカーが独自に開発した技術もありますが、よくよく聞いてみると実はどこそこのメーカーでいまこういう風に作っているからといったケースもあり、大手メーカーがそのまま乗っかることはないでしょう。ただし、他社のパテントに抵触しないように一部を変更して採用することはあります。可変スリーブもスリーブ専門業者があってそこからの売り込みがあります。先ほど話題に出たテーラーメイドとナイキの件も同じ業者から持ちかけられたという可能性も考えられますね。


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