海外メディアが注目した独自のプレースタイル

「65・65・65・67」の通算18アンダーでDPワールドツアー初制覇を果たした金子駆大(写真/Getty Images)
オーストリアの起伏に富んだコースで開催された「オーストリアン アルパインオープン」。標高の高さによる飛距離の計算や、刻々と変わるコンディションへの対応など、選手にはタフなマネジメントが求められる一戦だった。その中で金子は終始安定したプレーを披露、リーダーボードの上位をキープし続け、ついに頂点に立った。
この活躍を受け、海外メディアや現地の解説者が注目したのが、彼の独特なプレースタイル。パワーゲームが主流となりつつある現代のゴルフにおいて、金子の個性的なスウィングや、アームロックスタイルによるパッティングは新鮮に映ったようだ。現地のメディアからは「個性的でありながら、極めて再現性が高い」、「自らのスタイルを高い精度で実行している」と、その技術力の高さが評価された。

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)

金子駆大のドライバーショット(2025年10月)(撮影/岡沢裕行)
周囲のパワーに圧倒されることなく、自身のスタイルを海外の舞台でも証明した形となった金子だが、彼がこの舞台に立つ前から、世界を見据えて明確に取り組んでいた課題があった。それが、ドライバーの飛距離向上である。
胸を少しだけ大きく回す意識を持つ
日本ツアーでもそのショットの正確性で実力を発揮していた金子だが、海外の環境を経験したことで、改めて「飛距離」の重要性を痛感したという。
現在の金子のドライバーの飛距離はキャリー270ヤードくらい。海外で戦うためにはあと20ヤードほどキャリーを伸ばして、トータル300ヤードを目指したいと言う。

ドライバーのキャリーをあと20Y伸ばすために「胸を大きく回して、手は高く」(撮影/アラキシン)
「キャリーで290ヤード飛ばせるようになれば、誰でも戦えると思います。もちろん他の技術も必要ですけど。そこで飛距離を伸ばすために取り組んでいるのが『胸を回すこと』。かつ、手の位置を高くしてスウィングアークを大きくすることを目指しています」
実は以前からコーチとスウィングアークを大きくする取り組みは行っていたが、国内ではその必要性がそこまで高くなかったと金子。
「まずはティーショットで300ヤードオーバーを目指したいですね。それができればもっと楽に戦えると思います。海外のドラコンプロに教えてもらったことがあるんですが、やっぱり胸を回すように言うんです。ただ回すだけならできるんですが、腰も回って力が抜けてしまっては意味がないので、そのバランスが難しい。飛距離は欲しいですけど、持ち味の正確性を欠いては意味がないですから」
腕力だけに頼るのではなく、身体の芯である「胸」を確実に回転させ、高い手の位置から大きなスウィングアークを作る。しかしその際、下半身まで一緒に回ってパワーが逃げてしまっては意味がない。持ち味である「正確性」を維持しながら、いかに捻転差を保って出力を上げるか。この絶妙なバランスの模索こそが、世界へ挑む彼にとっての大きなテーマであった。
パッティングは金子の生命線
ドライバーの飛距離アップという大きな課題に向き合う一方で、今回のオーストリアン アルパインオープンで勝利を手繰り寄せたのは、やはり金子の最大の生命線であるパッティングであった。

「できるだけシンプルに、体主体で打つ」という金子(撮影/姉﨑正)
この大会が開催されたコースは標高が高く、通常よりもボールが飛びやすい特性を持っていた。そのため、ショットの縦の距離感を合わせるのが非常に難しく、多くの選手がグリーンを外したり、難しいラインのパットを残したりしてスコアメイクに苦しんでいた。そのような状況だからこそ、グリーン上での勝負が勝敗を大きく左右することとなった。
金子の生命線であるパッティングは、このタフな試合でも遺憾なく発揮された。読みづらい芝に対しても、自身のストロークを崩すことなく安定してカップインを続けた。ショットが万全ではない局面でも、グリーン上で確実にパーを拾って流れをキープし、チャンスでは確実に沈める。やはりグリーン上の安定感が、今回の優勝に直結している。
これまでの様々なコースを経験してきた金子だからこそ、強く実感している事実がある。それはグリーンの芝質やクオリティに関する、日本との環境の違いであった。
いち早く順回転させるストロークを徹底
グリーンのきれいさに関して言えば、海外よりも日本のほうが圧倒的にきれいだと言う金子。だからこそ、順回転で転がりのいいパッティングが求められると実感している。

左前腕とグリップを一体化する「アームロック」でのストロークの精度を高めた(写真/Getty Images)
「日本にいるときからデータを計測しながら、できるだけ早く順回転させるようなストロークができるように意識しています。もともと(パッティングスタイルが)アームロックなので、ロフトを立てながら当てるタイプ。それが立ちすぎると転がりが悪くなるので、低く長くヘッドを動かす意識を持っています」
金子が採用しているアームロックスタイルは、手首の余計な動きを排除してストロークの再現性を高めるメリットがある。しかしその一方で、インパクト時にパターのロフト角が立ちすぎてしまい、ボールを地面に押し付ける形になりやすい。それが転がりの悪さに繋がるため、ヘッドを「低く長く」動かすことで適切なインパクトロフトを保ち、理想的な順回転を生み出しているのだ。
ストロークに関しては、ある程度の自信は持っているものの、現状はラインが読めずフラストレーションをためていると言う。
「いいストローク、いい回転をさせるには、ラインが読めているという自信も必要です」
どれほど正しいストロークができ、美しい順回転を生み出せたとしても、狙うべきラインそのものに確信が持てなければ、繊細なタッチを出すことはできない。技術への自信とライン読みの自信が噛み合って初めて、パッティングは本当の武器となる。今回のオーストリアでの勝利は、彼が積み重ねてきたストロークの技術と、現地のグリーンに対応した決断力が最高の形で結実した結果と言えるだろう。
欧州での経験の先にある、最高峰へのルート
今回のオーストリアン アルパインオープンでの海外初優勝は、金子駆大が自身の技術と冷静に向き合い、世界で戦うための課題を一つひとつクリアしてきた結果。現状に満足せず、ドライバーの飛距離向上に取り組みながら、最大の強みであるパッティングを磨き続ける。彼の言葉からは、データと客観的な分析に基づいた論理的な姿勢が伝わってくる。
そして、このDPワールドツアーでの活躍と勝利は、彼自身のキャリアにとってさらに大きな意味を持つ。周知の通り、現在このツアーの年間ポイントランキング上位者には、世界最高峰の舞台であるPGAツアーへの出場権が与えられるシステムが確立されているからだ。昨年の中島啓太がこのルートでPGAツアーへの出場権を取得したのは、記憶に新しい。一発勝負の予選会ではなく、シーズンを通して欧州のタフな環境で結果を積み重ねることで、最高峰のツアーへと直結するこのルートは、今や日本勢にとっても現実的な王道となっている。

DPワールドツアーで日本人選手として史上7人目の優勝を飾った(撮影/姉﨑正)
世界基準の環境に身を置き、自身の課題をクリアしながら勝利を挙げた金子。彼が取り組んでいるスウィングの進化とパッティングの探求は、夢の舞台へと繋がっている。自らの考えを信じ、技術を磨き続ける金子が、これからどのような道のりを歩み、さらなる高みへと駆け上がっていくのか。彼の活躍に今後も目が離せない。
