男子ツアーの格式高い舞台として世界中に知られるロサンゼルスの名門、リビエラCC。クラブ創立100周年という記念すべき年に、この地で初めて「全米女子オープン」が幕を開ける。USGA(全米ゴルフ協会)が掲げるセッティング哲学は「過酷だが公平(Tough but fair)」だ。特定の優勝スコアを強要するのではなく、バッグの中にある14本のクラブと、プレーヤーの頭脳という「15本目のクラブ」のすべてを駆使させることを意図している。設計家ジョージ・トーマスの最高傑作に仕掛けられた緻密な罠と、勝負の行方を握る戦略を紐解く。

リーダーボードを激変させる「4つのキーホール」

今大会のセッティングを担当するシニアディレクター、シャノン・ルイラードは、今週の勝負を分けるキーホールとして、2番、9番、15番、18番の過酷なパー4を明確に指定した。これらのホールをパーまたはバーディで切り抜けた選手が、一気にリーダーボードを駆け上がることになる。さらに、スコアを伸ばせるブックエンドのパー5(1番、11番、17番)で確実にアンダーパーを出すことが必須条件だ。

また、設計家のトーマスは「コースの戦略性こそがゴルフの魂」と語り、15通りのルーティングを検証して、現在のレイアウトを完成させたという。そのコースの名物である各パー3にも、周到な建築美と罠が張られている。4番は傾斜を利用してグリーンへ流し込める設計、6番はグリーン中央にバンカーを配してセンター狙いを排除した設計だ。14番は横長グリーンの中心にある隆起(スパイン)と手前20ヤードのうねり(スウェイル)で視覚的に長く見せる心理的罠があり、16番はバンカーに囲まれたアイランドグリーン形状となっている。

大渋滞を回避せよ!10番ホールの「ペース・オブ・プレー」戦略

画像: 出場選手の大半が2オン狙いをする1番ホール(提供/USGA)

出場選手の大半が2オン狙いをする1番ホール(提供/USGA)

絶対女王のネリー・コルダが「短いから簡単なバーディチャンスに思えるが、グリーンもバンカーもタフ。ミスする場所を知ることが最大の鍵になる」と話す10番ホール(短いパー4)には、USGAによる超科学的なセッティング戦略が導入された。USGAが過去のShotLinkデータなどを分析した結果、もう一つのスタートホールである1番ホール(パー5)では、フィールドの大部分の選手が2オンを狙うことが判明している。そのため、そのままでは両方のスタートホール(1番と10番)で「ペース・オブ・プレー(プレー進行の遅れ)」による大渋滞が起きる懸念があった。

そこでUSGAは、木曜日と金曜日の予選2日間に限り、10番ホールであえて後方の「バックティー」を使用し、全員にレイアップを強いることで進行をスムーズにする作戦を決断した。そして、人数が絞られる土曜日と日曜日にはティーを前に移動させ、ワンオンを狙わせるエキサイティングな演出へと切り替える可能性を示唆している。

「商業的基準」から「聖堂」へ。歴史的初開催の舞台裏

そもそも、なぜリビエラでの開催までに40年もの歳月を要したのか。それはリビエラが狭い敷地ゆえに、駐車場や交通手段、動線確保などのロジスティクス上の大きな課題を抱えていたからだ。かつてのUSGAは、1日3万5000人の観客収容や商業的な基準を重視し、それがクリアできなければ開催しない方針をとっていた。

しかし、約9年前に戦略を大転換。「女性プレーヤーにもアメリカで最も偉大な会場を提供する」「ゴルフの聖堂でプレーすること自体に価値がある」という理念のもと、困難を承知でリビエラ開催へと舵を切った。このリビエラを皮切りに、今後オークモントやパインハーストなど、かつて男子専用と目されていた「聖堂」での女子メジャー開催が次々と決定している。

数年前の森林火災からの復興を讃え、17番グリーン後方に第一対応者を招待する「ホステッド・ヒーローズ・パビリオン」が設置されるなど、地域社会との絆も深い今大会。美しい聖堂を舞台に、世界のトップ女子プロたちがいかにして頭脳戦を繰り広げるのか。その歴史的な幕が、いま上がる。


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