ツアープレーヤーNo.1決定戦「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の初日が幕を開けた。タフな18ホールを終えたプロたちが向かうのは、流した汗を洗い流すお風呂――ではなく、やはりドライビングレンジだ。スコアが良くても悪くても、ラウンド中に生じたわずかなズレを翌日に持ち越さないため、彼らは独自の「リセット術」を持っている。初日の過酷な戦いを終えた5人の選手は、いったい何を考えながら球を打っているのか。今回は「名探偵H」が現場に潜入し、そのこだわりに迫った。

5アンダー単独首位発進の阿久津未来也「18ホールで崩れた感覚をニュートラルに戻す」

画像: トップで止まり、それから切り返しの始動を何度も確認していた阿久津未来也

トップで止まり、それから切り返しの始動を何度も確認していた阿久津未来也

5アンダーと見事なロケットスタートを切り、単独トップの阿久津未来也。関西オープンからミズノオープンまでの3連戦は予選通過が遠のく苦しい時期を過ごしたが、そのトンネルを抜けるような好プレーを見せた。そんな彼にとって、ラウンド後の練習は「ニュートラルへの回帰」が大前提だ。

「スタート前よりもラウンド後のほうが体は動くのですが、18ホールを回るうちに体使いのバランスはどうしても崩れていきます。その日1日、球がつかまる・つかまらないといった偏った感覚を、真ん中に戻す作業を最優先しています」

阿久津はウェッジからアイアン、ウッドへと番手を上げていくルーティンを決して崩さない。さらに、コース内で狂いやすい「トップからの切り返しのタイミング」を、コーチと確認し合いながら徹底的に修正、確認をしている。

「ドリルとかがあれば練習で調整できるかと思うのですが、現状取り入れているドリルがないので……」と阿久津。この丁寧なズレの解消こそが、難関・宍戸でビッグスコアを生み出したという。

左脇にスティックカバーを挟み「大振り癖」をブロックする大西魁斗

画像: 弾道はボール位置によって変えるという大西は、アライメントスティックを足元に置いて確認している

弾道はボール位置によって変えるという大西は、アライメントスティックを足元に置いて確認している

前日の雨をものともしないグリーンの速さに「これからどんどん硬く、速くなる」と警戒を強める大西魁斗は初日、5バーディ2ボギーの「67」でラウンドし、7位タイと今季一番の好スタートを切った。彼がドライビングレンジで毎日欠かさず行っているのが、アライメントスティックのカバーを左脇に挟んで球を打つ、いたってシンプルなドリルだ。

「コースを回っている時はスウィングが大振りになりがち」という大西は、このカバーを脇に挟むことで、インパクト付近で腕が体から離れてしまう悪癖を物理的に抑え込んでいるという。

これにより大振りを防いで理想的な腕の収まりをキープし、「明日へのリセットとして、この感覚を頭に戻す調整をしています」と大西は語り、このコンパクトな一体感を取り戻す作業を命綱にしているのだ。

宍戸用の「抑え打ち」で縮こまった体を解放させる出利葉太一郎

画像: ドライバーを持つと、これまで抑えていたスウィングから「マン振り」くらい振りちぎっていた

ドライバーを持つと、これまで抑えていたスウィングから「マン振り」くらい振りちぎっていた

宍戸の深いラフを警戒し、コース内では球を低く抑えてフェアウェイをキープ(FWキープ率は7/14で50%)している出利葉太一郎は、5バーディ1ボギーの「66」でラウンドし、2位タイと初優勝に向けて絶好のスタートを見せた。

しかし、その優れた対応力が、自分本来の弾道やスウィングを見失う危険性があるという。

「コースの中で抑えるショットばかり打っていると、自分のスウィングがどんどん小さくなり、手先での操作感が強くなりすぎてしまうんです。だから練習場に帰ってきたら、あえて1回自由に、体をゆるくリラックスさせた状態で大きく振れるように戻します」

今週は低い球を要求されるシーンが多いため、どうしてもスウィングが鋭角な「ダウンブロー」になりやすい。そのため練習場では、あえてターフをあまり取らずにさらっと払うような打ち方を意識し、本来のフラットなスウィングの軌道へと引き戻している。

「形よりリズム」勝手に出始めたドローを信じる小西たかのり

画像: 13球も横に並べたボールを、ポンポンとリズムよく打っている様子。我々アマチュアがやったら、横のバケツの柄に当たりそうだ……

13球も横に並べたボールを、ポンポンとリズムよく打っている様子。我々アマチュアがやったら、横のバケツの柄に当たりそうだ……

ラウンド後に調整のため練習していたプロたちのなかで、一番風変わりなアプローチをしていたのは、初日をイーブンパー(22位タイ)で終えた小西たかのり。アイアンやドライバーをティーアップして連続で打つドリルを繰り返しているが、その意図を尋ねると「実は、コーチにやれと言われているだけなんです(笑)」と素直な内幕を明かした。

ドリル本来の目的を細かく考えるよりもスウィングの形を意識しすぎず、流れるようなテンポでパンと気持ちよく振り切れるスムーズなリズムを第一に考えていると話す。また、今年から取り組んでいるスウィング改造により、現在は心地よいドローボールが出るようになったという。

「初めてのドローヒッターとしてこの難コースに挑んでいるけれど、自然に振ればそうなる。今はこの心地よさを大事にしたい」と語る小西。緻密なメカニズムを追いかけるのではなく、良いリズムをキープする無欲の調整法が、彼の安定感を支えている。

「ショットの練習はあまりしない」という比嘉一貴

画像: 練習の虫かと思った比嘉は意外にもあっさりとしていた(写真は2026年ソニーオープン 練習日・撮影/岩本芳弘)

練習の虫かと思った比嘉は意外にもあっさりとしていた(写真は2026年ソニーオープン 練習日・撮影/岩本芳弘)

2バーディ3ボギーの「71」でラウンドした比嘉一貴。トップと6打差の36位タイなので、打席練習場に直行するかと思いきや。

「うーん……(練習を)やってもアプローチとパターを重点的にやりますね。ショットに関しては、18ホール回った体が振りやすいスウィングしかできないし、ラウンド後の感覚で調整してしまうと次の日に『あれ、ちょっとおかしいぞ』ってことがあって。本当に悪い時はもちろんやりますけど、いい状態のときに練習してもなっていう考え方ですかね」

続けて、「試合が始まってから追い詰められたように調整していくことは少なくて、試合が始まる前にそういった準備をして臨んでいるので、必要であればやるという感じですね」と、意外な答えが返ってきた。

名探偵Hの調査まとめ

強振して大きく振るプロもいれば、形よりリズムを重んじるプロ、あるいは練習自体を早々に切り上げるプロまで、プロたちの調整法は十人十色。こうなると、ゴルフ界でよく言われる「ラウンド後に練習すれば上手くなる」という格言さえ、ある種の都市伝説に思えてくる。

ましてや、プロのような強靭な体力を持ち合わせていない我々アマチュアが、疲労困憊の状態で闇雲に球を打てば、かえってスウィングの悪癖を助長しかねないのではとも。

極限の緊張感と戦うツアーにおいて、1日の終わりに自らの「基準点」をいかに正確に見つけ出し、そこへ引き戻せるか。プロたちの居残り練習に詰め込まれていたのは、緻密なセルフマネジメントだった。

スコアの良し悪しに一喜一憂する前に、「まずは自分の軸となるスウィングを知る」。それこそが、我々アマチュアの上達をも加速させる最大のヒントなのだと、深く納得させられる調査となった。

※2026年6月4日20時10分、一部加筆修正しました。

女子プロに聞いた最短でスコアを良くする練習法!


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