突然の悲劇。頼れるウェッジが「杖」代わりに……?
初日から強固なチーム力を見せつけたクラッシャーズGCだが、チームを牽引するデシャンボーの身には、ラウンド中に信じられないアクシデントが起きていた。
事件は12番ホールを歩いている最中のこと。手に持っていた55度のウェッジのトウ側を地面につき、杖のように体重をかけた瞬間、シャフトが突然ポッキリと折れてしまったのだ。「ゴルフ科学者」としてあらゆる事態を想定して戦う彼にとっても、このハプニングは完全に予想外であった。ラウンド後の会見で、本人は「どう説明していいか分からないが、奇妙な出来事だった」と呆れ顔で振り返っている。
1打の代償と、王者の揺るぎないメンタル
このウェッジ破損は、デシャンボーのスコアに直結する手痛い代償となった。最も信頼するウェッジが使えなくなったことで、下り傾斜の難しいライからのアプローチを別のクラブで打たざるを得ず、結果として12番でボギーを叩いてしまうことになった。
しかし、王者はこんな不運では決して動じない。「2020年の全米プロ(TPCハーディングパーク)でドライバーが折れて以来のことだ。起こる時は起こる」と、クラブが折れるというショッキングな出来事にもフラストレーションを爆発させることなく、感情を完璧にコントロールした。
事実、ウェッジを1本失いながらも、彼のスコアメイクは揺るがなかった。もともと今季のデシャンボーは、スクランブリング率(パーオンを逃したホールでパー以上をセーブする確率)で全体2位(71.53%)という驚異的な数字を記録するリカバリーの達人であり、この日もそのしぶとさを発揮。自らのプレーに集中し続け、シーズン最難関のラウンドを1アンダー「70」でまとめる精神的なタフさこそが、彼がトップであり続ける最大の理由だ。
チームの底力と、LIVゴルフが描く「無限大」の未来

シャフトが折れながらも個人戦では首位と3打差の9位タイスタートを切ったブライソン・デシャンボー(写真/LIVゴルフ)
この「驚異的なリカバリー力(しぶとさ)」は、チームメイトにも伝播していた。今季の同ランキングで全体1位(72.67%)を走るチャールズ・ハウエルIIIに加え、この日はアニルバン・ラヒリがスクランブリング率90%(全体3位)と大奮闘。チームとして初日のリカバリー率1位(71%)に君臨し、どんな不測の事態やピンチでも決してボギーを重ねない圧倒的な底力を見せつけた。
デシャンボーとハウエルIII、そしてアニルバン・ラヒリの3人が見事に「70(1アンダー)」を揃え、手首を負傷した主力ポール・ケーシーの代役であるトラビス・スミス「74」の奮闘をカバー。主力の欠場を他の3人全員がアンダーパーで補うという強固な組織力で、コリアンGCなどを抑えてチーム首位に立ったのだ。
そして、デシャンボーの視線は目先のトラブルやスコアだけでなく、もっと大きな未来を見据えている。彼はLIVゴルフの金融的な未来について、「厳しい状況や打撃を受けることもあるだろう。しかし、私はこれを機能させるために全力を尽くすつもりだし、フランチャイズゴルフの価値を心から信じている」と熱い展望を語った。
折れたウェッジの不運を冷静に受け流し、仲間と力を合わせてチームを首位へと導き、リーグの壮大な未来を力強く語る。ブライソン・デシャンボーという男のスケールの大きさと絶対的な存在感が、アンダルシアの地に吹き荒れる強風の中で、ひときわ強い輝きを放っている。
