日本男子ツアーの最高峰、メジャー2戦目「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の最終日。通算8アンダーで並んだ岩田寛、片岡尚之、タイチ・コー(許龍一)によるプレーオフにもつれ込んだ激闘は、見事にバーディを奪った岩田が2024年以来となる今大会2度目の優勝を飾る幕切れとなった。しかし、王者が魅せた執念のバックナインに勝るとも劣らない、上位陣による凄まじい奮闘がこのサンデーバックナインを極限まで盛り上げたのも事実。ホールアウト直後、過酷なサバイバルレースを戦い抜いた選手たちが語った、清々しくも悔しいリアルな胸の内をお届けする。

タイチ・コー(通算8アンダー・2位タイ)

画像: プレーオフ後、今週の戦いを見てファンになったという方が涙を流していたことが印象的(撮影/岡沢裕行)

プレーオフ後、今週の戦いを見てファンになったという方が涙を流していたことが印象的(撮影/岡沢裕行)

「最後を追い上げられたのは大きな自信。今夜からそのままモロッコへ飛びます(笑)」

最終日に7バーディ、3ボギーの「67」を叩き出し、後続にプレッシャーをかけ続けたタイチ・コー。

「良いスタートを切って1番、2番で連続バーディを奪えました。前半はスウィングの感触があまり良くなかったのですが、その中でもメンタルを強く保ってプレーできたことは嬉しいです。後悔があるとするなら6番(パー5)。フェアウェイの真ん中からOBを打ってしまってボギーにしたことですね。ただ、ゴルフはそういうゲーム。それ以降も自分のプレーをキープできましたし、何より難関の17番、18番で素晴らしいアイアンショットを打って連続バーディを奪えたことは大きな収穫です」

画像: 表情豊かなタイチ・コーは、多くの観客を寄せ付けていた(撮影/岡沢裕行)

表情豊かなタイチ・コーは、多くの観客を寄せ付けていた(撮影/岡沢裕行)

かつて中島啓太とアジアパシフィックでプレーオフを戦った経験があり、「全く同じシチュエーションだったので、今回は絶対に勝ちたいと思っていました」と強い気持ちで臨んだものの、一歩及ばず2位タイでフィニッシュ。

「とても悔しいです。でも、最後の最後であそこまで追い上げられたのはすごく嬉しいですし、自分のゴルフへの自信になります。実は、今日の夜の便でモロッコに行くので、今から急いで車で空港に向かいます(笑)」

悔しさを滲ませつつも笑顔を見せたアジアのスターは、今夜そのままアジアンツアー「ロイヤルゴルフ・ダルエスサラーム」が開催されるモロッコへ向けて旅立っていった。

片岡尚之(通算8アンダー・2位タイ)

画像: 「不甲斐ないゴルフをしてしまった」と悔しさを滲ませた片岡、全英オープンに期待がかかる(撮影/岡沢裕行)

「不甲斐ないゴルフをしてしまった」と悔しさを滲ませた片岡、全英オープンに期待がかかる(撮影/岡沢裕行)

「絶対に来ると思っていた寛さんのスイッチ。プレーオフまで持ち込めたことは自信に」

単独首位からスタートしながらも、最終ラウンドは「72」とスコアを落とし、プレーオフの末に惜敗した片岡尚之。

「寛さんがすごかったです。最終日は自分自身が不甲斐ないゴルフをしてしまった。でも、寛さんに関してはスタートする前から『絶対に最後、優勝争いをする相手になる』と確信していました。前半は寛さんも打っていた(スコアを落としていた)んですけど、絶対にどこかでスイッチが入って来るなと思っていたら、案の定、怒涛の追い上げで追いつかれてしまった。その中で、自分も16番でバーディを獲り返して、17番、18番でいいパーセーブができてプレーオフまで持ち込めた。そこは自分の中でも凄く自信になった部分です。ただ、やっぱり最後(プレーオフ)でバーディを獲れなかったのは悔しいですね」 と悔しさを滲ませた。

プレーオフでの最後のパットのラインについては、「めちゃくちゃ微妙なライン。スライスと読んでいたんですけど、左に強く打ちすぎると抜けちゃいそうだなというレベル。左フチくらいを狙って打ったのですが、思った以上にスライスしました。でも、最後は自分が狙ったところにしっかりと打てた結果なので良かったです」と振り返る。

「少し試合が空くので、この悔しさをリフレッシュするのにちょうどいい期間かなと思います。次は「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP」もありますし、その先には全英オープンも控えているので、そこに向けてしっかりと調整していきたいです」と、視線はすでに次なる世界の舞台へ向いていた。

坂本 雄介(通算7アンダー・4位)

画像: 「コースが難しすぎる」と4日間の感想を語る坂本、オープンウィークで心身の調整を行う(撮影/岡沢裕行)

「コースが難しすぎる」と4日間の感想を語る坂本、オープンウィークで心身の調整を行う(撮影/岡沢裕行)

「コースが難しすぎて覚えていない。10週連続出場の身体をまずはリセットしたい」

最終日を5バーディ、3ボギーの「69」で回り、優勝には一歩届かなかったものの単独4位という素晴らしい成績を収めた坂本雄介。

「(今日のラウンドは)正直、覚えていないです。コースが難しすぎます。少しもスコアを落とせない緊張感の中、15番(パー5)でリーダーボードを見たときに、トップの選手たちが落としているのが見えて『まだ可能性はあるな』と思ってプレーしていました。とにかく疲れましたね。自分の中で、17番(パー4)のセカンドショットを右の安全な方向に打てなかったところが、今回トップに足りなかった部分だと思います」

過酷な4日間を終え、心身ともに限界に近い状態だったことを明かした。

「来週は久しぶりのオープンウィークなので、ここでしっかりと考え直して次の試合からまた頑張りたい。ゴルフの技術面に関しても考えますが、身体的に10週連続で出場を続けていて筋力もかなり落ちているはず。まずはシーズンが始まる前くらいの状態に身体を戻して、後半戦も同じパフォーマンスを維持できるようにしっかりとコンディショニングに充てたいです」と話した。

出利葉 太一郎(通算4アンダー・6位タイ)

画像: 初の最終組で多くのプレッシャーを抱えたであろう出利葉、この悔しさを胸に、今季1勝を目指す(撮影/岡沢裕行)

初の最終組で多くのプレッシャーを抱えたであろう出利葉、この悔しさを胸に、今季1勝を目指す(撮影/岡沢裕行)

「悔しい後半の失速。でも、この位置で戦えることを自分自身に証明できた」

単独2位からメジャー初制覇を狙ったものの、最終日は「75」と宍戸の罠に捕まり、通算4アンダーの6位タイで大会を終えた出利葉太一郎。

「うーん……やっぱり悔しいです。前半の(ダブルボギーを叩いた)9番(パー4)でのセカンドショット、結果論にはなってしまいますが、少し決断が早すぎたなという反省があります。ただ、これも結果論なので、しっかりと次の試合に生かせたらいいなと思います」 と冷静に今日のラウンドを振り返る。

バックナインではスコアを落とす苦しい展開となったが、その眼差しはすでに前を向いている。

「自分のゴルフ自体の状態はすごく良いですし、このプレーを続けていれば絶対に近いうちに勝てると思っています。今日は最終組で岩田選手と片岡選手の素晴らしいプレーを間近で見せてもらって、本当に良い勉強になりました。次こそは僕が勝つという強い気持ちを持って、これからの2〜3週間でしっかりと準備をして次の試合に臨みたいです。4日間を振り返って、自分がこのメジャーの優勝争いという位置で十分に戦えるんだということを、自分自身にまず証明できた。ひとつひとつステップアップしている感覚はあるので、しっかり準備をして次は勝てるように頑張ります」

天候は曇り、風速1.2m/sと一見穏やかに見えた宍戸の最終日だったが、張り詰めた空気と仕上がった高速グリーンが、選手たちの心技体を限界まで削り取っていった4日間。敗れはしたものの、全力を尽くした若手や実力者たちが残した爪痕は、日本ツアーの未来がさらにハイレベルなものになることを物語っていた。


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