「65歳11カ月19日」の偉業と、2人を繋ぐ深い絆

LPGA31勝(メジャー7勝)のジュリ・インクスターがLPGA記録となる65歳11カ月19日で予選通過し、12位タイでフィニッシュした
現在65歳のインクスターは、今大会で見事に最年長予選通過記録を塗り替えた。以前の記録は2004年にジョアン・カーナーが打ち立てた「65歳と26日」だったが、インクスターは「65歳11カ月19日」での突破という歴史的な金字塔を打ち立てたのである。さらに、最終的に通算9アンダーの12位タイという堂々たる成績で4日間を完走してみせた。
2人の関係は、インクスターがアメリカ代表キャプテンを務めた2017年のソルハイムカップで、インをキャプテン推薦で抜擢した時から始まった。インは「ジュリは私のゲーム(実力)だけを見て、見返りなど関係なく引き上げてくれた」と恩義を感じている。
今大会中、2人は自分たちの凸凹コンビぶりを自虐と親愛を込めて「Frick & Frack(フリックとフラック:いつも一緒にいる2人組のスラング)」と呼び合い、無邪気に笑い合っていた。
「飛距離がなくてもスコアは作れる」生きた教材
インクスターの戦いぶりは、同伴競技者であり、親子ほど年の離れたパートナーであるインの目に、どのように映ったのだろうか。
「彼女はピンに全然近くない時でも、パットの距離感が素晴らしく、自分の長所をすべて生かしていた。チッピングも本当に素晴らしかった」
【動画】ジュリ・インクスター、「魔法のショートゲーム」を発揮した2日目17番のカラーからのバーディパット【LPGA公式X】
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x.comインは感嘆の声を漏らした。全盛期に比べて飛距離が落ち、アイアンショットがピンに絡まなくても、ゴルフはスコアを作ることができる。インクスターは、長年培ってきた「魔法のショートゲーム」と、リスクを徹底的に管理するコースマネジメントによって、それを自らのクラブで証明してみせたのだ。
2人は最終日の会見で、「もし(ベストボール方式ではなく、難易度の高い交互打ちの)オルタネートショット方式だけの大会だったら、私たちはトップ5、あるいは優勝争いに入っていただろう」と自信たっぷりに語り合っている。飛距離がなくてもミスを減らしてスコアをまとめるインクスターのマネジメント力が、最も過酷な方式でこそ活きたという何よりの証左である。
永遠にプレーするための「回復力」と「愛」
女子ツアーはこの先、アムンディ・エビアン選手権やAIG女子オープン(全英)など、過酷なメジャーシーズンが本格化する。パワーだけでは通用しない極限のセッティングにおいて、インクスターのプレーは、若きインにとって何よりの生きた教材となった。
「メジャー大会では、ただ上手く打てばいいわけじゃない。時には泥にまみれて耐え忍ぶ必要がある。彼女は、決して簡単な状況じゃなくても、どうやってスコアをまとめるかという真髄を教えてくれた」とインは振り返る。
さらに、1つのボールを交互に打つ過酷なフォアサム形式(オルタネートショット)を振り返り、「私たちがこの方式で好成績を出せたのは、すべてジュリのおかげ。私たちは本当に泥臭くプレーした」と、レジェンドへの深い敬意と感謝を口にした。
会見でインは、インクスターから学んだ最大のものは何かと問われ、こう答えている。
「それは『回復力』と『愛』です。正しいアプローチで向き合えば、ゴルフは永遠にプレーできるのだと教えてもらいました」
インからの最大級の賛辞を聞いたインクスターは、「彼女が素晴らしいプレーをして私を引っ張ってくれたからよ。私はただ彼女の隣にいられて嬉しかっただけ」と謙遜し、優しい笑顔を見せた。
【動画】ジュリ・インクスター、65歳のフェアウェイウッドショットを後方から撮影【LPGA公式X】
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x.com試合後、「今後、LPGAツアーに出場する予定はありますか?」と問われたインクスターは、「全くないわ(笑)」と即答している。
ツアーの一線から退き、穏やかな日々を楽しむレジェンドだが、クラブを握ればそこには一流のプロフェッショナルとしての凄みが宿る。華やかな飛距離がなくとも、泥臭くスコアをまとめ上げる「勝つための技術」。インクスターが後輩のインに、そして我々に背中で見せてくれたゴルフの神髄は、記録以上に深く、永遠に語り継がれることだろう。
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