アマチュアゴルファーの多くは、練習場でもコースでも常に「10割のフルショット(マン振り)」をベースにスウィングを考えてしまいがちだ。しかし、一打の重みが違うトッププロたちのリアルな「力感」は、我々の想像以上に抑えられていた。そんなゴルフの真実に迫るべく、今週金曜日(6月19日)に開幕を控える「ニチレイレディス」(袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コース)の指定練習日である6月17日(水)に潜入したのは、ツアー担当“名探偵H”。プロたちの「通常ショットの力感」を直撃調査した。

スタンダードは「7〜8割」がプロの常識。10割を振らない明確な理由

画像: 普段は10の内8割の力感でショットしているという稲見、青木たち

普段は10の内8割の力感でショットしているという稲見、青木たち

名探偵Hの問いかけに対し、「普段の試合での力感は基本8割くらいですね」と答えたのは稲見萌寧だ。「練習の時からあんまり10割で振ることはないです。常に8割くらいがスタンダードですね」と語る。

同じく「基本は8割」と口を揃えたのは、青木瀬令奈、山内日菜子、藤本愛菜の面々だ。

青木瀬令奈は「前傾角度をキープできる最大値は8割くらい。58度などのウェッジは、マン振り(10割)したら球が抜けてしまって結局飛ばないんです。飛ばしたいパー5などで10割まで振ってしまうと、どこへ行くか分からなくなってミート率が下がって、飛ばないリスクのほうが大きくなってしまう」と説明する。

藤本愛菜も「フルショットというより、マン振りはあんまりせずにハーフスウィングなどでラインを合わせていくタイプなので、基本は8割です」と明かした。

さらに出力を抑え、「7割」が基本だと答えたのが高橋彩華や菅楓華、泉田琴菜だ。

高橋彩華は「試合での通常ショットは7割くらい。落としても6.5割。練習場なら何回も打てるから10割で飛ばせますけど、試合のプレッシャーがかかるこの1球で10割を出すとスウィングが乱れてしまう」と語る。

泉田琴菜も「基本、10割を使うことはあんまりないです。ドライバーとかも10割で振ると大ミスして結局飛ばないことが多い。通常は7〜8割がスタンダードです」と、大ミスのリスクを徹底して排除する姿勢を見せた。

アマチュアは「10割が自分のスウィングだ」と思いがちだが、それを実戦で制御するのは非常に難しい。彼女たちの言葉からもわかるように、「9割以下の制限されたなかで、いかに効率的に力を使えるか」がゴルフにおける理想なのだ。

最大でも「8〜9割」止まり。プロが「10割」を出す特殊なシチュエーションとは?

画像: どうしても距離を出さないといけないシチュエーションでも8割という高橋

どうしても距離を出さないといけないシチュエーションでも8割という高橋

では、パー5での2オン狙いや、どうしても距離を出さなければならないシチュエーションでは、何割まで出力を上げるのだろうか。

高橋彩華は「ちょっと振れば乗るな、という時でもマックスで8割くらい。9割を超えるとミート率が下がってしまう」と話し、泉田琴菜も「少し振っても9割までいくかいかないかくらい」と、やはり10割を拒むプロは多い。

一方で、状況に応じて「10割」に近づけるプロもいる。菅楓華は「パー5の優勝争いで狙わなければいけない時や、状況に関係なくバンカーを越えるか越えないかというシチュエーションではマックスまで振ることもあります。でも、しっかり芯で当たる範囲です」と言う。

山内日菜子も、パー5の優勝争いで「結構振らないと届かないカツカツの場面」では10割に近いショットを打つことがあるという。ただし、彼女の言う10割とは思いっきり振りちぎるマン振りではない。「しっかり芯で捉えられる完璧な限界値が10割。スウィングの軸がブレない程度の中での10割です」と、あくまでコントロールできる範囲を前提とした最大出力であることを強調した。

画像: ウェッジのフルショットのみ10割に近いパワーで振るという稲見

ウェッジのフルショットのみ10割に近いパワーで振るという稲見

最後に、最もユニークな「10割付近のシチュエーション」を教えてくれたのが稲見萌寧だ。彼女が最も力を入れて振るのは、ドライバーではなく、なんと「ウェッジのフルショット」の場面だという。

「残った距離がちょうど、手前の番手だとギリギリ届かなくて、上の番手だとグリーンで止まらない場面でどうしようかな……という時です。下の短い番手で頑張ったらベタピンにつくという場面では、ちょっといつもより飛ばす雰囲気でやります。ボールを少し右に置いて、高さを出しながら、ちょっとつかまる感じのフェードを打って頑張って飛ばします」

ピンをデッドに攻め切るための「攻めの10割」の存在を明かしてくれた。

名探偵Hの調査ファイル:まとめ

プロによって通常時の力感は「7割派」と「8割派」に分かれたが、共通していたのは「8割前後がフルショット」という点だ。どんなに飛ばしたい場面であっても、それは「芯で完璧に捉えられる限界値」のコントロール下に置かれている。

我々アマチュアが、コースでついつい「10割(あるいはそれ以上)」で力んでミスを連発してしまうのに対し、プロは常に7〜8割の余白を残してミート率と方向性の精度を担保している。女子プロたちのプレーを観戦する際は、彼女たちが一体「何割の力感」であのショットを生み出しているのか、その緻密な脳内マネジメントに注目してみるのも面白いかもしれない。名探偵Hの調査はまだまだ続く……。


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