バックラインはウェッジまで「すべて入れる派」の青木

バックラインをすべて付ける青木(ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ/姉崎正)
「私は一番下のウェッジまで全部バックラインを入れています」と答えてくれたのは青木瀬令奈だ。青木はその明確なメリットを次のように語る。
「バックラインがあることで、無意識に触ったときでもパッと一瞬でしっくりくる『戻るべき基準値』が定まります。試合中は『何本分開いて……』などと細かく考えている暇はありませんから、触覚的な基準があるだけで大きな時短になります。フェースを開いたときも、バックラインの傾き加減でどれくらい開いているかが感覚的に把握できるんです」と、理論派らしい合理的な理由を教えてくれた。
基本は真っすぐ挿すが、1本だけでも気持ち悪さがあれば数値にとらわれず、感覚を優先してフック向きやウィーク向きに微調整するという。

穴井のグリップ:非常にわかりづらいが、写真右のようにイオミックロゴを中心とした際、バット側のドットが画面右側にズレていることがわかる
同じくウェッジまで全番手に入れるという穴井詩は、「やっぱりフェース面の管理がしやすくなるのが一番。バックラインのズレ具合でフェースの開き具合を正確に把握できます」と回答。さらに「指の引っかかりがあることで、ダウンスイングでしっかりと押し込める(下ろしてこられる)感覚があります」と、スウィングへの好影響も明かした。
ちなみに穴井はフックグリップで握るため、バックラインがグリップの左側にズレるように挿している。しかし、そのままだと見た目が気持ち悪いため、ロゴが正面にくるようにグリップ自体を右にねじって調整しているという強いこだわりがあった。
菅沼菜々も「ずっとバックラインありでやってきたから、丸(ラウンド)グリップだと相性が良くない」と語る全番手投入派だ。
「バックラインがあるほうが真っすぐ構えやすいし、いつも通りの再現性が高まります。ちょっと感覚が変だなという時も、これがあると思い出しやすいです」とその重要性を語る。菅沼の場合は、アドレスで少しフェースを被せて構える癖があるため、あらかじめバックラインが少し右側(開いた向き)にずれるように統一して挿している。
「60度だけは絶対に入れない」。泉田琴菜が明かす明確な使い分け

バックライン派だが、60度のみバックラインをいれない泉田※左側が54度、右側が60度のグリップ(撮影/大澤進二)
一方で、基本はバックライン派でありながら、特定の1本だけ「あえて抜く」という独自の選択をしているのが泉田琴菜だ。
「私はドライバーから54度のウェッジまではすべてバックラインを入れていますが、60度のウェッジだけはつけていません」と泉田は明かす。
「バックラインがあるとしっかり握れるし、手探りでどこを握ればいいか迷わないための重要な確認ポイントになります。ただ、60度に関しては、スクエアに構えてノーマルショットを打つことがほとんどありません。バンカーショットも含めてフェースを大きく閉じたり開いたり、色々な使い方を極端にするクラブなので、バックラインがあると開いたときにどうしても指に当たって邪魔(違和感)になってしまうんです。逆に54度までのウェッジは、基本的にロフト通りに打つことが多く、極端な開閉をしないのでバックラインがあっても気になりません」
アプローチの主役となる60度だけをラウンド(丸型)にすることで、どのようなフェースアングルでも違和感なくニュートラルに握れるようにする。自身のプレースタイルに基づいた、非常に説得力のある使い分けである。
バックライン以前の超こだわり! 手が小さい永井花奈の「極細化」への執念

グローブサイズは18㎝、実際にグリップを握らせてもらうと素人目でもすぐわかるくらい本当に細い
最後に、バックライン以外のこだわりを教えてくれたのが、グローブサイズ18cmという平均より小さめのサイズ感の永井花奈だ。
「手が小さい分、普通のグリップだとどうしても太く感じてしまうんです」と永井は笑う。
「ダウンスウィングからインパクトにかけて、ある程度は手を使って振っていかなきゃいけないタイプなのですが、グリップが太すぎると上手く力が入らなくなってしまいます。コントロール感を出すためにも、とにかく細くすることが最優先です」
そのための工夫は凄まじい。下巻きのテープに通常より薄いものを使用し、グリップ自体を通常よりもグッと引き伸ばして装着することで、物理的に細くカスタマイズしているのだという。さらに、クラブ自体の選択にもそのこだわりは及ぶ。
「海外メーカーのウッドだと、シャフトの手元側(バット径)自体がもともと太く作られていることが多いんです。いくらグリップを伸ばして挿しても細くするのには限界があるので、今シーズンからは手元側が細い設計になっている新しいシャフトシリーズに切り替えました。やっぱり細いほうが圧倒的に振り抜きやすいです」と、手の小ささを補って余りある緻密なギア選定を明かしてくれた。
調査まとめ
一見するとどれも同じように見えるプロのグリップだが、ウェッジまでバックラインを入れることで「戻るべきフェースの基準」を作るプロもいれば、ロフト角によって入れる・入れないを明確に線引きして操作性を確保するプロもいた。そして、手のサイズというフィジカルな課題を、伸ばし挿しやシャフト選びという技術でカバーする永井花奈のようなケースもある。
また、バックラインを入れる人のほとんどが、「バックラインのおかげでボールを押し込める感覚がより感じれる」と最初に語っていたことだ。「我こそは感覚派」というアマチュアゴルファーも、試すと新しい気づきがあるかもしれない。
名探偵Hの調査はまだまだ続く……。
