カップ位置が変わる激戦。新パターで魅せた大出瑞月の驚異的な粘り

厳しい条件のライからでもアプローチで寄せ、難しいパットをパーセーブして会場を盛り上げた大出(撮影/大澤進二)
プレーオフ1ホール目、まずは19歳の吉﨑マーヤが脱落。2回目、4回目とカップ位置が切り替わるなか、戦いはミニョンと大出の一騎打ちへ。
パー5の18番で行われた激戦、2オンを狙えるパワーを持つミニョンに対し、大出は3オンで必死に食らいつかなければならない不利な状況が続く。しかし、「これを外したら終わり」という痺れる局面の下りパットを何度もねじ込み、ミニョンにプレッシャーを与え続け、観客を大いに盛り上げた。
正規の18番で短いバーディパットを外した際は「あれが入らなかったほうが意味がわからない」と悔やんだ大出だったが、極限状態をすべてクリアしていく自らのプレーに「私も成長してるのかな」と確かな手応えを感じていた。
何度も同じ競技委員のカートに乗り、同じ競技委員と会話を交わしながら集中力をキープし続けたが、その裏で「全身の筋肉が重くて、今すぐ寝たいくらい」と、身体の疲労はすでに限界を迎えていた。
「私はプレーオフに弱い」──ミニョンが掴んだ割り切りと、耐え抜く精神

持ち前の飛距離と正確なパッティングで勝利を掴み取ったイ・ミニョン(撮影/大澤進二)
一方のミニョンにとっても、この時間は己のトラウマとの戦い。過去に日本ツアーで経験した3度のプレーオフは、いずれも敗北している。
「自分自身、プレーオフに弱いことは分かっていたので、全然期待せずに臨んだ」という割り切ったスタイルだった。

冷静なイメージがあるイ・ミニョンだが、心臓が飛び出るほど緊張していたという(撮影/大澤進二)
当然、心臓が飛び出そうなほどの緊張に襲われ、手は震える状態。しかし、「期待しない。自分のプレーだけをすればいい」と目の前に集中した。さらに、長く過酷な戦いのなかで、ミニョンの脳裏にはかつて韓国ツアーで5〜6ホールに及ぶプレーオフを耐え抜いて勝った記憶がよみがえっていた。
「耐えて、耐えて、耐える人が勝つ」。年齢的な体力の回復の遅さを自覚するなかでも、「相手も同じように疲れているはず」と自分を鼓舞し、一打に想いを込めてショットしたという。
7ホール目の決着。大出の清々しい心境と、ミニョンが掴んだ「プレゼント」

2時間6分の激闘を終えた二人(撮影/大澤進二)
運命の7ホール目。ピンまで184ヤードのショットをコントロールして放ったミニョンの1打は、ピン手前4メートルへとピタリ。この難しいフックラインを気迫で沈めてバーディを奪い、ついに2時間6分の死闘に終止符を打った。
惜しくもパットが外れて敗れた大出だったが、その表情には清々しい達成感が表れていた。
「あんまり悔しくないんです。ミニョンさんだし、そもそも勝てる相手ではないと思って始めたから。前を走る2人とプレーオフができて本当に良かった」とハングリーさが少なく見えるのは、これまで予選落ちなどの不調が続いた大出ならではの考え方かもしれない。

プレーオフを共にした2人については、「強いなぁ……」と感じていたイ・ミニョン(撮影/大澤進二)
スタート前は成績のことなど一切考えず、「早く終わって家に帰ってのんびり休もう」と考えていたというミニョン。24位タイからのツアー史上最大の大逆転劇に、「今日の優勝は、思いがけない素敵なプレゼントをもらったみたい」と、最高の笑顔を魅せた。
お互いの限界を引き出し合った2人の姿は、新袖の雨を忘れさせるほど美しく、大観衆の胸をいつまでも熱く震わせ続けるだろう。

