7月23日からスコットランドのグレンイーグルスで開催されるシニアメジャー「ISPS HANDA(全英)シニアオープン」。日本からは横田真一と岩本高志の専修大学の先輩・後輩コンビが出場する(ウェイティング1位で谷昭範が吉報を待っている)。この栄えある大舞台は、難解なコースセッティングだけでなく、そこに至るまでの「移動」という思わぬところで選手たちに過酷な洗礼を浴びせている。開幕を直前に控えた練習日、クラブにまつわる深刻なトラブルに見舞われながらも、決して言い訳をせずに前を向く岩本と、オーストラリアのスコット・ヘンドの「逆境力」に迫る。

岩本高志の「荷物遅延」と、焦りを消した前向きな姿勢

画像: 自身2度目のシニアメジャーに挑む岩本高志

自身2度目のシニアメジャーに挑む岩本高志

全米シニアオープンに続く海外メジャー2戦目に挑む岩本高志は、予期せぬトラブルで足止めを食らっていた。土曜日には現地入りを果たしていたものの、肝心の荷物(クラブ)が届いたのはなんと月曜日の昼過ぎだったのだ。

「普段からこんなに空くことがなく、いつもクラブを握っているタイプなのでちょっと心配だった」と、丸2日間クラブに触れられなかった焦りを率直に吐露する。しかし、そこからがベテランの真骨頂だった。荷物が到着するや否や、すぐにコースへ飛び出して1ラウンドを敢行。「意外と昨日今日の練習とスムーズに打てたんで、悪くないかなと思います」と、不安を払拭する頼もしい笑顔を見せた。

さらに、彼にとって吉報だったのがコースとの相性だ。今大会の舞台となるキングスコースは、ラフの深さが50mm(フェスキュー/ライグラス)に設定されたタフな難コースである。同大会に出場するタマヌーン・スリロットも「グリーンが難しい上に、フェアウェイが狭いホールがあるから注意しないといけない。ティーショットとグリーン上がキーになる」と警戒を強めている。

しかし、そんな過酷なセッティングを前にしても岩本は動じない。スコットランド特有の荒涼としたリンクスを想像していたというが、「意外と林もあるし、丘陵コース。なんか日本にもあるんじゃないかと思うようなコースでした」と、大物感あふれる適応力を見せている。もちろん試合になれば難しさは増すが、「そこまでびっくりしない感じ」とコースへの順応に自信を覗かせた。

【画像】岩本高志が「なんか日本にもある」と話す開催コースのグレンイーグルス【PGAツアーチャンピオンズ公式X】

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「前回(全米シニア)は初めてのメジャーで予選通過できたんで、今回はもちろん予選通過したいですし、前回の順位(トータル9オーバー、51位タイ)よりも上を目指して頑張りたい」 クラブ遅延というハンデを軽々と乗り越え、岩本の視線はすでにリーダーボードの上位を真っすぐに捉えている。

スコット・ヘンドを襲った「破損と盗難」、そして未見のコース

岩本の遅延トラブルでさえ青ざめる事態だが、5月開催の「ハサン2世トロフィー」でPGAツアーチャンピオンズ初優勝を飾り、好調で乗り込んできたオーストラリアのスコット・ヘンドには、さらに耳を疑うような悲劇が襲い掛かっていた。

なんと、愛用していたドライバーが壊れてしまい、さらに米国からの移動中、預けていた手荷物のバッグからバックアップ用のドライバーが盗まれてしまったのだ。

プロにとって、ミリ単位の感覚をすり合わせたクラブを次々と失うダメージは計り知れない。「信頼できるゴルフクラブを見つけるのは本当に難しい」と、ヘンドは偽らざる本音と嘆きを漏らす。

さらに彼を追い詰めるのが、「コース未経験」という事実だ。クラブ喪失という悲劇に加え、開幕直前の練習日の段階で、彼はまだ本戦が行われるキングスコースを下見すらできていない。

「まだ(コースを)見ていないんだ。私が知っているのは外側にあるライダーカップのコース(PGAセンテナリーコース)だけ。だから今日のプロアマで、自分たちが何に立ち向かうのかしっかり見てこようと思う」

相棒を失ったぶっつけ本番という、まさに絶望的な状況。それでも彼は、決して屈していない。

「やっと信頼できるPINGのクラブを見つけて、ドライビング自体はとても良い状態だったんだ。残っているこの1本のドライバーが壊れないことを祈りつつ、どうにかこの調子を維持していきたいね」と、手元に残された最後の武器を信じて戦い抜く覚悟を決めている。

絶望的な状況にありながらも、彼を突き動かしているのはシニアメジャー制覇への執念と、未来を見据えた高いモチベーションだ。

「(PGAツアーチャンピオンズで優勝できたから)次の目標はシニアメジャーでの優勝だ。どんなトロフィーでも嬉しいけれど、ここで勝てたら最高だね。なぜなら、優勝すれば出場権が得られる来年の全英オープンはセントアンドリュース開催だからね」

残された1本のドライバーでただ耐え凌ぐのではなく、明確に「次」を見据えて勝負に出る。その姿勢こそが、彼がトッププレーヤーである証だ。

トラブルを力に変えるシニアの逞しさ

世界を股にかける海外遠征では、時にコントロール不可能なトラブルが容赦なく選手を襲う。クラブの未着や破損、盗難といったアクシデントは、平常心を奪い、パフォーマンスを大きく狂わせるには十分すぎる理由だ。

しかし、岩本高志とスコット・ヘンドが見せたのは、不運を嘆いて立ち止まる姿ではなく、現状を受け入れ、今ある武器で最善を尽くすという極めてポジティブで逞しいメンタリティだった。あらゆる逆境を乗り越えてきたシニアプロたちの底力と「逆境力」が、グレンイーグルスの過酷なメジャーセッティングでどのような輝きを放つのか。彼らの不屈の挑戦に、心からの拍手を送りたい。

写真/大会提供


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