過酷なコンディションを制した対応力とマネジメント
例年通り、猛暑の福岡県で熱いバーディ合戦の4日間が繰り広げられました。今大会は予選・決勝ラウンドを通して熱中症対策のため6時からのトップスタートとなり、選手だけでなくボランティアの皆さんや大会関係者も早朝から準備を進めギャラリーを迎えました。
寒冷地向けのベント芝は気温が高くなると傷みやすくなるため、刈り高を短くできず、大量の散水も必要になります。その結果グリーンが軟らかくなり、スピードを速くできません。そのため選手たちには暑さへの耐性だけでなく、「キャリーでピンまで打つ距離感」や「しっかりとカップまで届かせるパッティング」といった高度な対応力が求められました。

「大東建託・いい部屋ネットレディス」でツアー初優勝を飾ったプロ2年目の加藤麗奈(撮影/岡沢裕行)
加藤選手は初日を5アンダー(12位タイ)でスタートすると、2日目に「64(8アンダー)」を叩き出して首位に浮上。3日目も5アンダーと伸ばして通算18アンダーとし、2位に2打差をつけて最終日を迎えました。最終日は前半に5つのバーディを奪うと、後半の苦しい時間を乗り越え、最終18番ホールで約2mのパットを沈めて見事にツアー初優勝を飾ったのです。
今季7試合でコンビを組み、この初優勝をサポートしたベテランの李進伍(リ・ジノ)プロキャディに話を聞きました。
「グリーンのコンディションに合わせてスピン量を抑えるため、1番手から2番手大きめのクラブを持って距離を合わせるようにしていました。パッティングではラインを薄めに読んでしっかり打つ練習、そしてアプローチ練習を繰り返し準備していました」(李キャディ)
今季、永峰咲希選手とのコンビで1勝、そして加藤選手と2勝目を飾った李キャディの存在は、プロ2年目の加藤選手にとって大きな力になったことでしょう。加藤選手について「ショットは曲がらず負けん気も強い。これで自信をつけたはずですから先が楽しみです」と、キャディも驚くメンタルの強さと攻め切るマインドに太鼓判を押します。

ベテランの李進伍キャディ(左)とのコンビでつかんだ初優勝(撮影/岡沢裕行)
安定感を生む、大きな筋肉を使った再現性の高いスウィング
では、加藤選手のスウィングを見てみましょう。
オーソドックスなスクエアグリップで握り、テークバックでは手元を遠くにワイドに上げていきますが、右への重心移動自体は多くありません。手元を胸の正面に保ったまま遠くへ上げることで背中や胸がしっかりと回り、大きな筋肉を捻る動作につながって手打ちを防いでくれます。

オーソドックスなスクエアグリップで握り、手元を遠くにワイドにテークバックする(撮影/姉﨑正)
右腰を回しすぎないトップから、切り返しではしっかりと左へ重心移動していることが見て取れます。左へ重心を移動させてから切り返し、手元を下ろした後に体の回転を入れるという「動き出しの順番(キネマティック・シークエンス)」が非常に整っており、彼女のショット力の高さがうかがえます。
ローリー・マキロイやザンダー・シャウフェレなども同様に左への重心移動の幅が大きなタイプですが、軸の取り方は右軸やセンター軸などさまざまです(加藤選手は左軸)。スウィングの個性とも言える部分ですので、アマチュアのみなさんもご自身のタイプにマッチした選手を参考にすると良いでしょう。

切り返しで左へしっかり重心移動する(撮影/姉﨑正)
インパクトでは左足のカカトがわずかに浮いており、重心を左に移動させた後に力強く踏み込むことで生まれる「縦方向の出力(縦の地面反力)」が表れています。
そして左腕とクラブが一直線になり、左手の甲の向きがアドレス時と見事に一致している点にも注目です。これはアドレスで作ったフェース向きがインパクトでも寸分違わず再現できている証拠であり、彼女の調子の高さを物語るバロメーターとなっています。

左腕とクラブが一直線のままインパクトを迎えられている(撮影/姉﨑正)
わずか0.2秒というダウンスウィングの中で、思い描いた方向にボールを打ち出せるほどのコントロール力。この研ぎ澄まされた感覚があったからこそ、今大会のように直接ピンを狙っていかなければならない過酷なコンディションでも、自身の強みであるショット力を最大限に発揮できたのでしょう。
吉田鈴選手、倉林紅選手に続いて今季3人目の初優勝者となった加藤麗奈選手。セッティングが一段と厳しくなる残り3試合の公式競技(メジャー大会)で、どのようなプレーを見せてくれるのか今から楽しみです。
