スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化できる、コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」。このアプリを活用しているゴルフコーチ・北野達郎氏に、LPGAツアー「AIG女子オープン」で、日本人7人目の海外女子メジャー優勝という快挙を成し遂げた桑木志帆のスウィングを解説してもらった。

こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回はLPGAツアー「AIG女子オープン」で、日本人7人目の海外女子メジャー優勝を達成した桑木志帆選手(以下、桑木選手)の後方からのアイアンスウィングを、スポーツボックスAIのデータと共に解説させていただきます。

画像: AIG女子オープンで初メジャー優勝を果たした桑木志帆。今回は彼女のアイアンスウィングをAIで分析(写真/R&A提供)

AIG女子オープンで初メジャー優勝を果たした桑木志帆。今回は彼女のアイアンスウィングをAIで分析(写真/R&A提供)

今回は桑木選手のスウィングの特徴から「右足ベタ足のインパクト」に重点を置き、アマチュアのベタ足と桑木選手の違いや、両手と右ひざのデータの違いなども含めて解説させていただきます。

右足ベタ足のインパクトで、両手も体の近くを通っている

まずは桑木選手のアドレスとインパクトを比較しましょう。桑木選手と言えば「右足ベタ足のインパクトで、両手が体の近くを通る」のが特徴的ですが、その特徴はデータにも明確に表れています。

「Pelvis Thrust」(以下、骨盤の位置)は、骨盤がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したかを表す指標です(マイナスは背中側へ、プラスはボール側へ。アドレスの位置を0cmとします)。

桑木選手のアドレスとインパクトを比較すると、インパクトで骨盤の位置がマイナス1.8cmとなっており、インパクトにかけて骨盤がより後方(背中側)へ動いていることがわかります。

画像: 画像1:アドレス(左)とインパクト(右)の比較/インパクトで骨盤はわずかに後方へ動いている

画像1:アドレス(左)とインパクト(右)の比較/インパクトで骨盤はわずかに後方へ動いている

スポーツボックスAIが独自に調査した、インパクトでの骨盤位置のLPGAツアーレンジ(プロの平均的な範囲)はマイナス1.8cm〜プラス4.8cmです。そのため、桑木選手はLPGAツアープロの中でも、インパクトで骨盤がより後方へ動くタイプの選手であることがわかります。インパクトで骨盤が前に出ないことで両手がより体の近くを通り、結果としてインパクトの再現性が高まるのです。

右足ベタ足だけでは不十分!? アマチュアと桑木選手の違いは「右ひざ」の動きにあり!

続いて、アマチュアと桑木選手を3Dアバターで比較してみましょう。画像2の左がアマチュア、右が桑木選手の3Dアバターです。

「Hand Thrust」は、両手がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したかを表します(以下、両手の位置。マイナスは背中側へ、プラスはボール側へ。アドレスの位置を0cmとします)。

両者ともインパクトで右足はベタ足になっていますが、データで比較すると、アマチュアはプラス12.9cmと両手が前へ浮いているのに対し、桑木選手はプラス7.6cmにとどまっています。桑木選手のほうの両手が、より体に近い位置を通っていることがわかります。

画像: 画像2:アマチュア(左)と桑木選手(右)の3Dアバター比較1/両者とも右足はベタ足だが、桑木選手のほうが両手が体に近い

画像2:アマチュア(左)と桑木選手(右)の3Dアバター比較1/両者とも右足はベタ足だが、桑木選手のほうが両手が体に近い

両者とも右足はベタ足でありながら両手の位置が異なる理由、そのポイントは「ひざの使い方」にあります。「Trail Knee Flex」は右ひざの屈曲角度を表すデータです(以下、右ひざの角度。ひざが伸びきった状態を180度とします)。

アマチュアの右ひざの角度は、切り返しで151度、インパクトで148度と、切り返しからインパクトにかけて右ひざが徐々に曲がっていきます。これに対して桑木選手は、切り返しで146度、インパクトで153度と、切り返しからインパクトにかけて右ひざが伸びていることがわかります。

画像: 画像3:アマチュア(左)と桑木選手(右)の3Dアバター比較2/アマチュアよりも桑木選手のほうが、切り返しで右ひざが深く曲がっている

画像3:アマチュア(左)と桑木選手(右)の3Dアバター比較2/アマチュアよりも桑木選手のほうが、切り返しで右ひざが深く曲がっている

この「右ひざの動き」の差がどこから来るかというと、アマチュアは一見右足がベタ足に見えても、切り返しからインパクトにかけてひざで地面を踏み込む動きがありません。そのため「懐(ふところ)」のスペースが狭いままとなり、結果として両手が前へ押し出されてしまうのです。一方の桑木選手は、トップから切り返しにかけてひざで地面をしっかりと踏み込み、その地面反力を受けることで右ひざが伸ばされます。これにより懐に両手が通る十分なスペースが生まれ、両手が体の近くを通るようになるのです。

ですので、アマチュアの方で「右足をベタ足にしているのに、両手が前に出てしまう」とお悩みの方は、桑木選手のように切り返しでひざを使って地面を踏み込み、インパクトにかけて右ひざが伸びていくような足の使い方ができるよう意識してみてください。懐にスペースができることで、両手を体の近くへ通せるようになるはずです。

画像: 桑木志帆が優勝したことで、25年の山下美夢有に続き、AIG女子オープンで日本人が連覇(写真/R&A提供)

桑木志帆が優勝したことで、25年の山下美夢有に続き、AIG女子オープンで日本人が連覇(写真/R&A提供)

今回は桑木志帆選手の後方からのアイアンスウィングを分析させていただきました。昨年の山下美夢有選手に続いて、AIG女子オープンを日本人が見事に連覇しましたね。年内は国内ツアーに専念し、来年から本格的にアメリカのLPGAツアーへ参戦予定の桑木選手から、今後も目が離せません!


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