徹底した強風対策と諦めない心――「AIG女子オープン」激闘の舞台裏

170を超えるバンカーがあるロイヤルリザム&セントアンズでティーショットを2回しかバンカーに入れない安定感が光った(写真/R&A提供)
初日から首位争いを演じた桑木だが、プレー中の土台となったのは徹底した風対策と精密なドライバーショットだった。強い風の中でも軸がぶれないスウィングを意識し、コース内に無数に配置されたバンカーへ%%ティーショットで打ち込んだのは4日間でわずか2回。フェアウェイを捉え続けたティーショットがスコアメイクを支えた。
最大のターニングポイントは、エスター・ヘンセレイトとの死闘となったプレーオフ1ホール目だ。ティーショットをブッシュへ打ち込む大ピンチに陥り、「終わった」と頭をよぎったものの、小田亨キャディからの「ここで3打目を寄せたら相手にプレッシャーをかけられる。諦めたら終わり」という言葉で意識を切り替えたと語る。100ヤード以内の練習を積み重ねてきた48度のウェッジで放った第3打は、狙い通りピンそばへと寄るスーパーショットとなり、劇的な勝利を引き寄せた。
【動画】桑木がターニングポイントと語ったプレーオフ1ホール目セカンドショットは07:00~【LPGAジャパン公式YouTube】
桑木 志帆 最終日ショット集|2026 AIG女子オープン
youtu.be激闘を終えた夜は、早朝の出発に向けたパッキングに追われながらも、クラブハウスやホテルでビールやハイボールを口にし、勝利の余韻に浸った。優勝の反響は凄まじく、SNSのフォロワーは1万人以上急増。会見では、応援に駆けつけた両親との再会時に開口一番「チャーハンちょうだい」とおねだりしたという、等身大でチャーミングな素顔も見せた。
メンタルが弱いことを課題としていた桑木だったが、プレーオフを制し自分に打ち勝った(撮影/岡沢裕行)
ゴルフ界に新しい風を吹き込む華やかな服装とネイル

会場内の警備員やギャラリーからネイルやウェアを褒めてもらったという桑木(撮影/岡沢裕行)
桑木を象徴するのが、ゴルフ場でもひと際目を引くファッショナブルなスタイルだ。韓国メディアから「厳格なゴルフ場文化を打ち破ったファッション」と評された個性的で華やかなウェアや、細部まで整えられたネイルは現地ギャラリーからも大好評。
「いいパンツを履いているね」と声をかけられる場面もあったという。
海外の舞台において、ファッションは自身を表現する大切な武器だ。「アメリカツアーに行くなら名前を覚えてもらいたいし、目立ちたい。インパクトがあるスタイルは自分に合っている」と語る通り、自分の魅力を最大限に発揮する姿勢がプレーの勢いにも繋がっている。
憧れの先輩・渋野日向子への感謝と、未来を担うジュニアたちへの想い

2019年にAIG女子オープンで優勝した渋野(写真/Getty Images)
今大会の快挙の陰には、同じ岡山県出身で憧れの先輩である渋野日向子の存在があった。2019年に渋野がAIG女子オープンを制した姿をテレビで観て刺激を受けた桑木にとって、渋野は「昔から本当にお姉ちゃんのような存在で、日向子ちゃんの背中を見て育ってきた」と語るかけがえのない存在だ。優勝直後には「本当すごいね! またご飯行こう」と祝福のメッセージが届き、改めて感謝の念を深めていた。
偉大な先輩の背中を追い続けてきた桑木が、次に目指すのは「自分がジュニアたちの憧れになること」だ。今大会で優勝を決めたウィニングボールを現地のジュニアへプレゼントしたエピソードからも、次世代への強い想いが窺える。
ジュニアゴルファーに対し、「ピンだけを狙うのではなく、右に置いてそこからバーディを取るマネジメントの楽しさだったり、考えながらゴルフをする楽しさを知ってほしい」と語る桑木。良くも悪くも注目される立場となった今、「ジュニアゴルファーの子たちから憧れられる存在になるため、これからもキラキラできるように頑張りたい」と力強く未来を見据えた。
来年からアメリカツアーにチャレンジする桑木、今季はあと1勝を目標に国内でプレーする。桑木の国内復帰戦は来週「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」の予定だ。(文/幅克成)


