サウジアラビアの政府系ファンド(PIF)による巨額の資金を背景に産声を上げたLIVゴルフが、大きな構造的転換期を迎えている。8月5日、「LIVゴルフ・ニューヨーク(NY)」の開幕前会見に登壇したCEOのスコット・オニールは、新たな「リードインベスター(主要投資家)」と基本合意書(タームシート)を締結し、来季以降の資金を確保したことを発表した。今年4月のメキシコシティから今回のニューヨークに至るまでのわずか4カ月間。オニールCEOら経営陣の公式会見での発言を時系列で追うと、LIVゴルフが直面していた経営環境の変化と、水面下で進められた熾烈な資金調達のプロセスが鮮やかに浮かび上がってくる。

4月のメキシコシティ:「クリックベイト」の強気否定と自立への伏線

今年4月中旬、PIFがLIVゴルフへの資金提供を打ち切るのではないかという噂がメディアで報じられた。「幹部が秘密会議のためニューヨークに呼び出された」といった報道に対し、オニールは4月16日のメキシコシティでの会見で、「クリック数を稼ぐための扇情的な報道(クリックベイト)に過ぎない。我々は普段通りの業務を行っている」と一蹴した。

しかしその一方で、「構造的な変化は避けて通れない。各チームを市場に売り出し、資金を調達する必要が出てくるかもしれない。これはビジネスなのだから」とも語っており、単一ファンドに依存するモデルから脱却し、外部資本を呼び込む「自立型ビジネス」への移行を早くも示唆していた。

実際、LIVゴルフには投資家を惹きつけるだけの十分なビジネス基盤が構築されつつあった。前年すでに、ロレックス(Rolex)やHSBC、アラムコ(Aramco)といった世界的大手ブランドから約5億ドル(約750億円)近いスポンサー収入を得ており、ニューヨーク大会でもセールスフォース(Salesforce)やクアルコム(Qualcomm)、PING、キャロウェイ(Callaway)、リーボック(Reebok)といった超一流企業がパートナーに名を連ねていた。

画像: スコット・オニールCEO

スコット・オニールCEO

放映網も世界200以上の地域、10億世帯に達し、オーストラリア大会では550万人以上の視聴者を獲得。「アメリカの単一市場(3.4億人)に留まらず、75億人のグローバル市場を狙う」という、若くグローバルなファン層の開拓実績が、次なる資金調達における強力な武器となっていた。

5月のヴァージニア:現実となった「移行期」と「オプショナリティ」の確保

それからわずか3週間後の5月5日、「LIVゴルフ・ヴァージニア」の会見で、LIVの変革は一気に加速する。

会見の冒頭、チーフ・コミュニケーションズ・オフィサー(CCO)のイラナ・フィンリーが「LIVゴルフは移行の旅に入った」と宣言。PIFによる資金提供が今シーズン終了までであることを実質的に認めたのである。

オニールCEOも「朝起きてから寝るまで、食事中もゴルフコースを歩いている時も、ディール(出資交渉)の合意のことばかり考えている」と熱狂的に語り、財務アドバイザーの「AlixPartners」や「Ducera Partners」、さらには事業再建経験の豊富な新役員をボードに迎え入れ、猛烈なスピードで新たな投資家探しに奔走している事実を明かした。

この局面で、破産手続きや法的整理を危惧する声に対し、オニールはかつてNBAフィラデルフィア・76ersのゼネラルマネージャー(GM)だったサム・ヒンキーから学んだ「オプショナリティ(optionality=不確実な状況下で選択肢の柔軟性を確保すること)」という金融用語を用いて冷静に回答した。不透明な状況だからこそ、組織にとって最善のリターンをもたらすあらゆる選択肢をテーブルの上に残し、冷徹かつプロフェッショナルにファンド調達を進めている姿勢を印象付けたのだ。

8月のニューヨーク:新投資家との基本合意と「能動的なパートナー」への目覚め

そして迎えた8月5日のニューヨーク大会。オニールCEOはビジネス面での歴史的な前進を発表した。

「非常に素晴らしいニュースがある。リードインベスターが、当社の取締役会で承認されたタームシート(基本合意書)に署名し、今後のLIVの資金を賄うことが決定した」

出資者の名称や具体的な金額は非公開とされたが、最も注目すべきは選手たちに提示された新たな契約構造だ。従来の巨額な「現金支給」という形に加え、LIVゴルフの「エクイティ(株式・持分)」の付与や、肖像権をはじめとするNIL(Name, Image, Likeness)権の返還という画期的な条件が提示された。オニールはこれを、選手が自らの価値でさらなるリターンを得る「リンゴをもう一口かじるようなもの(セカンド・バイト・アット・ザ・アップル)」と表現。「選手が過半数株式を所有するリーグなど、プロスポーツ界の歴史上かつてない試みだ」と胸を張った。

この「選手による所有」という理念は、すでに現場で自律的に動き始めている。会見前日の8月4日には、ブライソン・デシャンボーが主導して選手だけの30分間のミーティングが開催され、極めて活発な意見交換が行われた。さらに資金調達の過程では、一部のチームキャプテンたちが自ら進んで「CEOの投資家向けプレゼン(売り込み)に同行したい」と申し出たという。選手たちが単なる「雇われプロ」から、リーグの価値を高める「能動的な共同経営者」へと鮮やかに覚醒した瞬間だった。

「チームの資産価値」に賭ける勝算と2027年以降の未来

米主要スポーツ界(NBA、NFL、NHL等)で30年のキャリアを持つオニールCEOは、「スポーツビジネスにおける本当の真価は『チーム(Teams)』にある」と断言する。

かつてわずか1300万ドルだったNBAユタ・ジャズが18億ドルで買収され、1.88億ドルだったNFLフィラデルフィア・イーグルスが80億ドル以上の評価を得たように、LIVゴルフリーグ全体の黒字化とともに13あるフランチャイズチームの資産価値(エクイティ)は跳ね上がる。新投資家はその爆発的なリターンを狙って出資を決めたというわけだ。

記者から「この取引が最終決定すれば、2027年シーズンはあるのか?」と問われたオニールは、間髪入れずに「'28年、'29年、'30年もある」と即答した。

PIFの巨額資金に依存した「現金主義」から、選手自身がオーナーシップを共有する「エクイティ主義」への大転換。新投資家との正式契約と来季スケジュールの全貌が明らかになるまで、LIVゴルフが踏み出したこの壮大な「スポーツビジネスの実験」に注目したい。

写真/Getty Images


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