スタッツが証明する「ボールストライキングの支配力」
舞台となるトランプ・ナショナルGC・ベッドミンスターは、全長7651ヤード(パー71)とリーグ2番目の長さを誇るモンスターコースだ。しかも前回(2023年)大会から9番、13番、16番ホールにロングティーが新設され、総距離が125ヤード以上も伸ばされている。
通算6アンダー・3位タイにつけるセルヒオ・ガルシアも「週前半の雨の影響もあり、いくつかのパー4は極めて長くなっている。ティーショットをフェアウェイに置き、優れたロングアイアンを何本も決めなければスコアを作れない」と脱帽するほどのセッティングだ。
しかしニーマンは、フィールドで唯一この過酷な難関コースを2日間、36ホールにわたり「ノーボギー」で駆け抜けるという驚異的な安定感を見せている。この圧倒的な強さは、第2ラウンド終了時点での公式スタッツにも如実に表れている。
● SG(ストロークス・ゲインド):オフ・ザ・ティー:+2.79(全体1位)
● SG(ストロークス・ゲインド):アプローチ:+8.28(全体1位)
● パーオン率(GIR):86.11%(36ホール中31ホールでパーオン/全体1位)
ティーイングエリアからグリーンを捉えるまで、すべての局面においてフィールドを支配。さらに今季、中距離アイアンの精度を示す指標「SG: Approach Medium」において+0.398(リーグ単独首位)を叩き出している卓越した技術こそが、2日間ノーボギーという偉業を裏付ける最大の根拠だ。まさに「ショットメーカーのマスタークラス」と呼ぶにふさわしい完璧なパフォーマンスである。
滴る汗すら集中力に変える「マインドフルネス」
圧倒的な技術に加え、ニーマンの強さを支えているのが強靭で洗練されたメンタリティだ。連日の猛暑による過酷なコンディションを問われた際、彼は涼しげにこう語った。
「実は、この暑さも嫌いじゃないんだ。滴る汗が顔を伝い、濡れたシャツが肌に張り付くような極限状態こそが、逆に自分を『今、この瞬間』に引き留めてくれる。余計なことを考えず、目の前の一打に完全に没頭できるから、むしろプレーを助けてくれているようにさえ思えるよ」
さらに、ユニークなセルフコントロール術も明かしてくれた。
「プレッシャーや未来への雑念が頭をよぎりそうになった時は、自分の両手で太ももをポンと叩くんだ。自分が『今、この場所』に立っていることを物理的に実感することで、心を一瞬で現在に引き戻すことができる」
不快指数が高まる過酷なコンディションやプレッシャーさえも、自分の集中力を研ぎ澄ますトリガーへと変えてしまう。この極めて強固なマインドセットこそが、難コースの罠をことごとく無効化している理由なのだ。
「年間5勝の2025年」を超え、成熟した自分へ

出場選手のなかで唯一36ホール、ノーボギーでラウンドしているホアキン・ニーマン
ニーマンといえば、LIVゴルフで年間5勝を挙げた2025年シーズンの圧倒的な強さが記憶に新しい。当時のような「無敵の状態」に戻りつつあるのかという問いに対して、彼は現状に甘んじることなく、静かに首を振った。
「2025年の自分とまったく同じになることは、絶対にあり得ない。人は常に変化し、進化し、日々新しい人間へと生まれ変わるものだからね。ただ、あの頃よりも今のほうがずっと成熟しているし、ゴルファーとしてもより良い選手になれていると感じている。年を重ねるごとに、もっと賢く、知的に成長していきたい。僕が考えているのはそれだけさ」
過去の栄光にすがることも、目の前のタイトルやポイントレースに心を奪われることもない。どこまでも「自己の天井(限界)」を突き詰め、一歩ずつ成長することだけに深くフォーカスする。この知性的でストイックな姿勢がある限り、27歳の若きキャプテンの天井がどこにあるのか、誰にも予測はできない。
完璧な技術、暑さすら味方につける精神力、そして尽きることのない向上心。異次元の強さでベッドミンスターを支配するホアキン・ニーマンの快進撃は、週末のニューヨークでどのようなクライマックスを迎えるのか。12位タイで上位を追う浅地洋佑の巻き返しとともに、残り36ホールの戦いから絶対に目が離せない。
写真/LIVゴルフ提供
