オレゴン州のコロンビア・エッジウォーターCC(6541ヤード・パー72)で開幕する「ポートランドクラシック」。今大会では新たな試みとして、アマチュア界の主要4大会の優勝者に特別出場枠が与えられた。これら4つのビッグタイトルの歴代覇者が、同じLPGAツアーのイベントに集結してプレーする機会を得るのは、ツアー史上初めての画期的な事態である。オーガスタナショナル女子アマ王者マリア・ホセ・マリン(20歳)、NCAAディビジョンI個人王者ファラ・オキーフ(21歳)、全英女子アマ王者バレンタイン・デロン(21歳)の3名だ(資格のあった全米女子アマ王者アスタリスク・タリーは欠場)。いずれも今秋から大学の最終学年(シニア)などを迎える、20〜21歳前後の精鋭たち。ディフェンディングチャンピオンとして連覇を狙う岩井明愛(24歳)にとっても、数歳しか離れていない同世代の「若きライバル」たちの出現は、小さくない刺激となるはずだ。

ライバルであり親友。エリートアマたちの知られざる「素顔」

同じ時代にトップアマチュアとして世界中を転戦する彼女たちは、常に高いレベルで競い合う良きライバルであり、同時に強い絆で結ばれた親友同士でもある。だが、和やかな笑顔の裏には、世界トップを目指すアスリート特有の凄まじい闘争心が隠されている。

画像: NCAA ディビジョンIの個人王者ファラ・オキーフ(写真/USGA提供)

NCAA ディビジョンIの個人王者ファラ・オキーフ(写真/USGA提供)

NCAA王者のオキーフは、開幕前の会見で同世代の親友であるマリンの「狂気」とも言える練習量について、敬意を込めてこう語った。

「マリアは全米女子オープンの練習グリーンで、文字通り辺りが真っ暗になるまでずっとパットを打ち続けていたの。それは彼女がどれだけハードワークしているかを物語っているわ」

一方で、二人の間には胸が熱くなるような友情のエピソードもある。オキーフが全米大学選手権(NCAA)で個人優勝を果たした際、最終日に同組でプレーしていたのが前年覇者のマリンだった。優勝決定後にオキーフが両手を挙げて歓喜した写真がSNSで話題となったが、実はその背後に写り込んでいたマリンは、優勝した本人よりも嬉しそうな満面の笑みで祝福していたのだ。オキーフは後日その写真をマリンに送り、「あなたが私より喜んでるなんて気づかなかったよ!」と笑い合ったという。

【動画】ファラ・オキーフ、NCAA ディビジョンI優勝シーン【ファラ・オキーフのインスタグラム】

そのマリンは現在、LPGAカード獲得への登竜門「LPGAエリート・アマチュア・パスウェイ(LEAP)」で17ポイントを獲得するなどプロへの道を順調に歩んでいるが、今秋からのアーカンソー大学でのシニア(4年生)としての1年間をスキップせず、大学に残る道を選んだ。
「LEAP」とは規定のポイントを「20」獲得するとQスクールを経ずにツアーメンバー入りできるシステム(詳細はクリック)。ロッティ・ウォードとキアラ・ロメロの2人が到達している。

「大学は私の第二の家族。一生に一度しか経験できない大学ゴルフのチームとして、全員でナショナルチャンピオンシップを目指す大きな挑戦をどうしても全うしたいの」

個人の成功以上に仲間との絆を重んじるマリン。オキーフもまた、現在のトップアマチュア界全体を覆う熱量について力強く言い切る。

「このスポーツは、誰よりも努力して相手を上回ろうとするもの。前日の自分自身を上回るために、私たちは全員がハードワークしているの」

才能だけで頂点に立ったわけではない。次世代のスター候補たちの底知れぬポテンシャルは、この異常なまでの努力と熱い情熱によって支えられているのだ。

プロの厳しいセッティングと、午後になると牙をむく「ポアナ芝」の罠

舞台となるコロンビア・エッジウォーターCCは、深い木々に囲まれた伝統的なレイアウトが特徴だ。さらに、グリーンやフェアウェイに使用されている「ポアナ(Poa Annua)芝」は、午前中は非常に高速でスムーズなものの、午後になると成長して表面に小さな凹凸(bumps)ができやすくなり、完璧に打ったパットでもラインを外れてしまうという難しさを持っている。

画像: 全英女子アマの王者バレンタイン・デロン(写真/R&A提供)

全英女子アマの王者バレンタイン・デロン(写真/R&A提供)

直近の2カ月間、ヨーロッパのリンクスコースで強風と硬い芝を相手に戦い抜いてきた全英女子アマ覇者のデロンは、「ここはリンクスとは全く違う」とコースの性質を冷静に分析する。

フランス出身のデロンにとって、アメリカのバージニア工科大学への進学は「人生で最も大きく、そして最高の選択の一つ」だったという。「全米の大学システムの中で勉強とゴルフを両立させ、世界中から集まるエリートアマと毎週競い合う環境こそが、自分のゲームをプロレベルに磨き上げてくれた」と語る彼女は、その成果を披露する今大会を心待ちにしている。

「ターゲットをしっかり絞り、良いテンポで真っすぐ打つこと。そして、とても速いグリーンでのスピードコントロールが何よりも重要になるわ」

画像: オーガスタ女子アマを制したマリア・ホセ・マリン(写真/岩本芳弘)

オーガスタ女子アマを制したマリア・ホセ・マリン(写真/岩本芳弘)

一方、オーガスタ女子アマを制したマリンは「まずは大いに楽しむこと」とリラックスした表情を見せつつも、「ティーショットを真っすぐ打つ必要があるコースだけど、私は自分のドライバーにとても自信がある」と強気な姿勢を見せる。

オキーフもまた、コースの罠を正確に把握している。

「最大の防御は木々に囲まれたフェアウェイね。少しでも間違った側に外せば、完全にブロックされてしまう。間違いなくフェアウェイとグリーンをキープし続ける週になるわ」

未来のLPGAを背負うスター候補たち

画像: 左からマリア・ホセ・マリン、ファラ・オキーフ、バレンタイン・デロン

左からマリア・ホセ・マリン、ファラ・オキーフ、バレンタイン・デロン

世界最高のプロフェッショナルたちが集うLPGAツアー。アマチュア界の女王たちは、自分たちの現在の実力がこの最高峰の舞台でどこまで通用するのか、その挑戦を誰よりも心待ちにしている。

デロンが「世界最高の選手たちと自分のゲームを比較できるのは本当に素晴らしい機会」と目を輝かせれば、マリンも「自分自身を世界のトップ・オブ・トップと測り合わせる場所」と闘志を燃やす。

恐れを知らない次世代のスター候補たちが、プロの高い壁にどう挑み、時間帯で表情を変えるポアナ芝をいかに攻略していくのか。今週末の中継では、優勝争いの行方とともに、未来のLPGAツアーを背負って立つ彼女たちの躍動にもぜひ注目してほしい。


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