神奈川県・大箱根カントリークラブ(6657ヤード・パー72)で国内女子ツアー「CAT Ladies 2026」が開幕した。3年前、この地で劇的な優勝を飾った蛭田みな美。開幕前、「16番……17、18番は結構鮮明に覚えていますね」と語っていた彼女。今季前半は予選落ちが目立ち苦しんだが、復調の兆しを見せて大会初日を首位と1打差の通算5アンダーの3位タイで終えた。大里桃子、佐藤心結と同組となった前半9ホールに帯同し、現在の状態とプレーの根底にあるものを探った。
画像: 初日を5バーディノーボギーとし、5アンダーで3位タイにつけた蛭田みな美。プレー後は、サインを求めるファン一人一人に丁寧に向き合っていた

初日を5バーディノーボギーとし、5アンダーで3位タイにつけた蛭田みな美。プレー後は、サインを求めるファン一人一人に丁寧に向き合っていた

淀みないルーティンと、ファンへ見せる誠実な素顔

画像: ティーオフ前の練習。打撃場を後にした後は約30分間でさまざまな練習を行っていた。途中で仲宗根澄香と談笑する姿も

ティーオフ前の練習。打撃場を後にした後は約30分間でさまざまな練習を行っていた。途中で仲宗根澄香と談笑する姿も

朝の練習場から感じ取れたのは、蛭田のキビキビとした無駄のない動きだ。取材に応じたり、ファンに対応する彼女のイメージは、どちらかというと柔らかな印象だ。しかし、ティーオフ前の約30分間に、バンカー・4カ所からのアプローチ、そしてパッティングと、迷いのない練習メニューを次々に消化していた。

画像: たいてい先頭を歩いていた蛭田

たいてい先頭を歩いていた蛭田

そして7時22分、アウトコースからスタートし、同組の大里や佐藤が序盤からバーディを先行させるなか、自身は6番までパーが続く「我慢のゴルフ」を強いられた。しかし、2人には「ナイスバーディ」と声をかけながら、自身はペースを崩さず冷静に攻略していった。

画像: スタートホールの1番では、ピン位置が奥の広いグリーンに対してかなり手前にボールが乗った。父・宏さんと十分に相談し、ウェッジを選択していた

スタートホールの1番では、ピン位置が奥の広いグリーンに対してかなり手前にボールが乗った。父・宏さんと十分に相談し、ウェッジを選択していた

目を引いたのは、箱根の大自然に映える白のパンツスタイルで大股気味にスタスタ歩いていく姿だ。大半は先頭を進んでいたため、キャディである父との間には距離感があり、会話は少ないように見えた。しかし、そこはプロ11年で築き上げた阿吽の呼吸。その都度確認ではなく、「必要なときに大事な相談を」。そんな関係性を大事にしているように見えた。

「キレ」のあるショットと、完璧を求める探究心

画像: 9ホールのうち、ほぼ全ホールで「ナイスショット!」との声かけがあり、安定感のあるティーショットを披露

9ホールのうち、ほぼ全ホールで「ナイスショット!」との声かけがあり、安定感のあるティーショットを披露

全体を通しては5バーディノーボギーという安定した結果だった。前半のパーが続いていた間も、ティーショット後はほぼ全ホールで「ナイスショット!」とのギャラリーからの声援があり、「長いから、入ったらパーオンはかなり難しいのかな」と警戒していたラフには一度も入らなかった。

画像: 周囲は歓喜していても、本人はどこか満足いかなげな表情が多々見られた

周囲は歓喜していても、本人はどこか満足いかなげな表情が多々見られた

しかし蛭田自身は、完璧に見えるショットの後でも意外にも首を傾げ、独り言をつぶやいている姿が印象に残る。

実は昨年の後半戦、彼女はスランプに陥っていた。お盆の時期に試した新しいアイアンが合わず、元のクラブに戻しても感覚が狂い、持ち球がドローのドライバーまでもが右へ大きく曲がるようになっていたのだ。その不調は「いつ右に出るかわからないから怖くなった」と振り返るほどだった。

この苦悩を抱えたまま終えた昨シーズン。そこから始まった今シーズンも、前半戦までは予選落ちを目にすることも多かった。そこで復調のきっかけになったのは、弾道の変更だと明かしてくれた。

「アイアンはナチュラルドローをイメージして打っていたんですけど、『なんかこれ、ダメだな』と思ってフェードに戻したんですよ。そしたらバーディチャンスにつくようになって。かなりまとまってきているので、そこは前半とは違うかなと思います」

首を傾げる様子は、まだどこかに残る“不安”と“慎重さ”の表れなのかもしれない。周囲が湧いても、自身はスウィングの細部と今も向き合い続けているのだろう。

笑顔の奥に秘められた、ストイックな素顔

画像: (前半帯同後、上がりホールの18番へ)バーディパットを前に珍しく肩で息をする姿も見られ、終盤まで緊張感が途切れることはなかった(左)。ホールアウト後に取材対応に向かう蛭田(右)

(前半帯同後、上がりホールの18番へ)バーディパットを前に珍しく肩で息をする姿も見られ、終盤まで緊張感が途切れることはなかった(左)。ホールアウト後に取材対応に向かう蛭田(右)

「タフなので、少ないバーディチャンスだと思うけど、それを決めて頑張りたい」と前日に語った通り、通算5アンダーで3位タイにつける好スタートを切った初日。ギャラリーの声援には丁寧に会釈(もはやお辞儀)を返し、取材陣には天然な笑顔を見せる。対応がいい女子プロはたくさんいるが、蛭田のファンサは“一人一人に向き合う”という言葉がぴったりのものだ。

しかし今回新たに発見したのは、柔らかな表情の裏に隠された「慎重さ」と、様々な経験をして乗り越え続けてきた、大人の女性が醸し出す「ハツラツさ」というギャップだ。バーディの喜びよりも自身の調子を慎重に確かめ、次の一打に集中力を高めていく姿。そして3年前の優勝時と比べた成長を問いかけても「特にないなぁ(笑)。あははは」と笑い、「まずは予選通過を目指したい。またここでいい成績を残せれば一番いい」と答える姿勢には、蛭田の素顔がにじんでいた気がする。

自然体でありながら、極めて慎重。そのひたむきな歩みを見ていると、3年前、プロ8年目にして手にしたあのツアー初優勝の歓喜を、この思い出の舞台で再び再現してくれるのではないか。そんな期待を抱いてしまうものだ。(文/川野真美)


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