21歳のジャクソン・コイブンがプロ転向2カ月もたたないうちにプレジデンツカップのメンバーに選ばれるなど、大学ゴルフ部からすぐにプロの世界で活躍する若手が次々に登場する昨今のゴルフ界。そんな時代に異色の苦労人ジョー・ディーンがDPワールドツアーで初優勝を飾った。ニック・ファルド主催のハスクバーナ・ブリティッシュマスターズで最終日9アンダー63のコースレコードを叩き出し、逆転でトロフィーを掲げたのだ。世界ランク292位の元デリバリーマンが歩んだ道とは?
画像: ハスクバーナ・ブリティッシュマスターズを制したジョー・ディーン

ハスクバーナ・ブリティッシュマスターズを制したジョー・ディーン

イングランドのシェフィールドで94年に生まれたディーンは、アマチュア時代イングリッシュアマ(全英アマとは別)で優勝するなど地元では有望視される選手だった。

しかし10年前22歳でプロ転向してからは鳴かず飛ばず。下部ツアーのさらに下のミニツアーを転戦しているうちにコロナ禍がやってくる。ゴルフの収入はほとんどない。そこで競技を続ける資金を稼ぐため彼は4年間スーパーマーケットの食料品を配達する仕事を始めた。

「あの仕事は楽しかったですよ。良い友人にも出会えましたし、地に足をつけた生活を送ることができました。コーチから『ゴルフの結果で自分を定義するな』とよくいわれていましたが、成績が悪くても人間性が劣るわけではない、というのを実感しました」

23年末のQスクール(最終予選)で念願のDPワールドツアーの出場権を獲得した。だが24年のはじめまで彼は宅配トラックのハンドルを握り続けた。

「あの生活から抜け出すのは難しかった」と振り返るが、いま思えば「ゴルフを仕事にできるのは本当に素晴らしいこと」に気づかされた。

24年の2月、ケニアオープンで2位に入ったあと配送業を引退した。6月のKLMオープンでも2位に入りポイントランク37位でシードを確定させた。25年は73位と振るわなかったが、今年は全英オープン直前に行われたラストチャンス予選会で貴重なメジャー大会の出場権を獲得した。

勝利の女神となったのはキャディを務めてくれた婚約者エミリーさん。彼女も全国レベルではないものの地域レベルの優秀なゴルファーでプレーヤーの心理をよくわかっている。

「ヤーデージは自分で計測するしラインも自分で読みます。でも彼女が隣にいてくれて、たわいのない会話を交わしてくれることで落ち着いてプレーすることができました」

本戦(全英オープン)では予選落ちに終わったがその週2人は婚姻届を提出した。

5週間後、ブリティッシュマスターズでもエミリーさんがバッグを担ぎ最終日9バーディ、ノーボギーの完璧なゴルフをアシスト。2位グループに3打差をつける圧勝だった。

地元のヒーロー、憧れのファルドからトロフィーを受け取ると「これまでの苦しい時間や努力がついに報われました。本当にうれしい」と言葉を詰まらせたディーン。

優勝賞金は人生最大の51万ユーロ(約9500万円)。トラック運転手時代の時給3千円から2年ちょっとで4日間で1億円近い額を稼ぐようになるとは本人も思ってもいなかった。

写真/Getty Images

【動画】ハスクバーナ・ブリティッシュマスターズ最終日のハイライトをチェック【DPワールドツアー公式YouTube】

画像: Round 4 Highlights | 2026 Husqvarna British Masters www.youtube.com

Round 4 Highlights | 2026 Husqvarna British Masters

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