
パッティングが好調の青木瀬令奈
好スコアの要因はパッティングだ。今週のグリーンの速さはおよそ9フィート。前週のニトリレディスやCAT Ladiesの10.5フィートに比べるとかなり重く、通常であれば距離感の調整に大いに苦しむはずのコンディションだ。
しかし、大会直前までの過酷な大移動が味方をした。北海道でのニトリレディスから千葉での日本女子オープン最終予選会(2日間)、そして岐阜でのゴルフ5レディスへと入る過酷な強行軍スケジュール。
そもそも、日本女子オープンはJGA(日本ゴルフ協会)が主催する独立したナショナルオープンで、今季のシード選手であっても自動的に本戦出場権(本戦シード)が約束されているわけではない。「NEC軽井沢72ゴルフ」終了時点のメルセデス・ランキング上位30名まで(などのJGAが定める出場資格)に入っていなければ本戦出場権は得られず、たとえレギュラーツアーのシード選手であっても最終予選会に出場しなければ本戦に出られないという厳しい経緯がある。今季メルセデス・ランキング32位に位置する青木も、このわずかな差によって予選会を戦う必要があり、北海道の釧路から千葉を経由する強行軍が生まれることとなった。
だが、その大移動が結果的に味方をした。最終予選の会場だった袖ケ浦CC新袖Cは、ニチレイレディスが開催されるコース。ここのグリーンの速さが、今大会と同じく9フィート付近だったのだ。「急激に重いグリーンへ行くのではなく、よく知るコースで予選を挟んだことで徐々にタッチに慣れることができた」という。
さらに、日本女子オープン予選会のレギュレーションでは距離計の使用が認められており、グリーンブック(グリーンリーディングメモ)なども手元で活用することが可能だった。コースをよく知っている優位性に加え、これらを利用できたことが、日本女子オープン出場権獲得はもちろん、大移動のバタバタの中での素早い調整を後押しした。
キャディを務める大西翔太コーチから「グリーンのコンパクション(硬さ)や重さに負けないよう、ストロークが緩まずにしっかりヒットしよう」と、この速さに適した打ち方のアドバイスを受けた。これが功を奏し、迷いのないパッティングで8つのバーディにつなげた。
今季の青木は決して平坦な道ではなかった。7月の明治安田レディス前日、大西コーチの運転する車で交差点で信号待ち中に後続車から追突され、首と背中の痛みが悪化して2日目に棄権。その後も目の角膜がはがれるトラブルなどが重なった。
万全でない体でも青木はできる限り休むことなく出場を続けるというプロとしての深い信念がある。所属先である「リシャール・ミル」の協力のもと、プロアマ戦やチャリティイベントにゲストとして深く携わってきた経験が青木の姿勢を支えている。プロにとっては年間何十試合もあるうちの「1試合」に過ぎなくても、主催者や楽しみにしているファンにとっては、その大会はかけがえのない「1分の1の試合」なのだ。
主催者側の熱い想いや準備の重みを肌で知っているからこそ、簡単に諦めて欠場はしない。「試合でしか調整できない感覚がある。完璧でなくても、今できるスウィングや攻め方を探すことで気づきがある」と語る。逆境でこそ「不運のあとはいいことがある」と前を向く強さが、青木の生命線だ。今季24試合に出場してメルセデスランキング32位と安定しており、この好結果が背中を押し、精神面でも「体は120パーセント元気」と笑顔を見せる。
明日以降に向けては「目の前の一打に集中し、今あるコンディションで最善を尽くします」と意気込んだ。不運を最高の幸運へと変える青木が、再び主役に躍り出る。
※2026年9月4日21時38分、一部加筆修正しました。
