GMやマーベルも経験した「チャプター11」の現実
米国において、チャプター11を利用した企業の再建は決して珍しいことではない。例えば、自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)は2009年に申請したが、その後見事にV字回復を果たし、現在も業界トップクラスに君臨している。航空業界のアメリカン航空や、今や世界的な映画シリーズを展開するマーベル・エンターテインメントも、過去にこのチャプター11を経験し、より強力な企業として蘇った成功例だ。
一方で、チャプター11は「魔法の杖」ではない。再建計画が上手く進まず、結果的に事業継続を断念して清算(消滅)に追い込まれたケースもある。米国のトイザらス(2017年申請)や、大手ビデオレンタルのブロックバスター(2010年申請)などは、再建の道を模索したものの、最終的に市場から姿を消した。
LIVゴルフが歩むのは、GMやマーベルのような「大復活」の道か、それともトイザらスのような「消滅」の道か。それは、今後の再建計画と新たなビジネスモデルにかかっている。
今回のLIVゴルフの発表から、この法的手続きの真の狙いと、今後の再建に向けた全貌を事実に基づいて整理する。
最大の狙いは「選手によるマジョリティ(過半数)所有」への移行
今回の発表における最も重要なポイントは、LIVゴルフが事業の清算ではなく、「選手ファーストなオーナーシップモデル」の確立を目指している点だ。
リリースによれば、再建後の新会社は選手たちがマジョリティ(過半数)を所有することが想定されており、現在その実現に向けて選手たちと詳細な協議を進めているという。
これまではサウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)という巨大スポンサー主導の体制だったが、チャプター11の法的手続きを活用して資本構造を抜本的に見直し、選手自身の利益とリーグの長期的な成功を直接的にリンクさせる「選手オーナー制」へと移行することが、今回の手続きの最大の目的である。
実際、LIVゴルフがこれまでに築いたビジネス規模は大きく、リーグ立ち上げ以来、開催市場で創出した経済効果は15億ドル(約2200億円)を突破。2026年シーズンには57名の選手が5大陸10カ国で競い合い、世界250以上の地域、約10億世帯にその熱戦が届けられている。この巨大な価値とグローバルなプラットフォームを「保護し、さらなる成長へ導く」ための戦略的決断が、今回の再建劇だ。
取締役会特別委員会のジーン・デイビス委員長も「すべての選択肢を検討した結果、これが最も責任ある道だと確信している」とコメントを寄せ、経営・ガバナンスの抜本的強化に自信をのぞかせる。
LIVゴルフのスコット・オニールCEOは声明で次のように述べている。
「このプロセスにより、画期的な取引を追求し、LIVゴルフの次の章を始めるための構造と時間が得られます。それは、ファンを中心に据え、革新的な選手第一のオーナーシップモデルの上に築かれ、グローバルなゴルフエコシステムの一部となるものです」

スコット・オニールCEO(写真は26年LIVゴルフ・インディアナポリス)
資金繰りと今後のスケジュール:2027年初頭の再出発へ
チャプター11の手続き期間中、事業を継続するための資金(DIPファイナンス)として、PIFが裁判所の承認を条件に4960万ドル(約74億円)を提供することに合意している。
さらに、チャプター11の手続きが終了(エマージェンス)した暁には、BC Partners Creditおよびその他のマイノリティ(少数)投資家が、再建後のLIVゴルフの資本増強のための資金を提供する予定となっている。
また、LIVゴルフは世界中で事業を展開しているため、国際的な資産と運営を保護する目的で、イギリス(イングランドおよびウェールズ)においても米国チャプター11手続きの承認を求める手続きを行っている。
今後のスケジュールについて、LIVゴルフは裁判所や関係者の承認を得ることを前提に、「2027年初頭にチャプター11から脱却し、新時代をスタートさせる」というマイルストーンを掲げている。
「チャプター11」という劇薬を用いて、単なるプロツアーから「選手がオーナーとなるスポーツリーグ」への脱皮を図るLIVゴルフ。2027年の新体制発足に向け、法廷と水面下での急ピッチな交渉が続くことになる。
写真/LIVゴルフ提供

