雨で2度の中断。過酷な環境も「これがアイルランド」
開幕前の練習ラウンド。ラームはわずか3ホールをプレーしたところで激しい雨に見舞われ、中断を余儀なくされた。その後、再開を試みたものの再び雨で中断。アマチュアであれば、心が折れてすぐにクラブハウスへ引き返したくなるような天候の洗礼だ。
しかし、メジャー2勝を誇るラームは公式会見で平然とこう語った。
「リンクスゴルフは長くやっているから、何を期待すべきかは分かっているよ」
そして、アイルランド特有の過酷な天候について、冗談交じりに笑い飛ばしてみせた。
「(今日のように)太陽が出て晴れていることのほうが異常なんだ。風と雨こそがここの普通の状態だよ」
どんな悪天候も「想定内」。自然の猛威に抗うのではなく、それを受け入れるメンタリティこそが、彼がリンクスを知り尽くした男である何よりの証拠だ。
さらに、コースの素晴らしさについて問われたラームは、こんなエピソードを披露した。
「LIVの同僚であるティレル・ハットンが仲間とプライベートで回りに来て大絶賛していたんだ。滅多に人を褒めないティレルが褒めるんだから、ここは本物だよ」
毒舌で知られる同僚をも唸らせた難コースのクオリティに、彼自身も全幅の信頼を寄せている。
強風を切り裂く「2番アイアン」と用具へのこだわり
ギア(用具)好きのゴルファーなら、「プロは風の強いコースでどうクラブを変えるのか?」という疑問を抱くことだろう。ラームは自身のクラブセッティングの哲学について、明確なこだわりを持っている。
「私はあまり頻繁にクラブを変える人間ではないし、いじりすぎるのも好きではない。通常、年の初めに決めたセッティングから、シーズン途中で変えることはほとんどないんだ」
しかし、そんな彼でもリンクス特有の強風に対しては、唯一の例外的なアプローチをとるという。
「唯一の変更は、週によって5番ウッドか2番アイアンを変えることくらいだね」
そして、今週のアイルランドオープンに向けて、彼は力強くこう宣言した。
「明らかに今週は2番アイアンの週になるだろう」
高く舞い上がる5番ウッドではなく、風の下を低く鋭くくぐり抜ける2番アイアンの弾道。吹き荒れるリンクスの風を切り裂くための、彼の明確な戦略である。
雑音を遮断し、目の前のリンクスへ集中する圧倒的貫禄

LIVゴルフの個人戦で3年連続年間王者に輝いたジョン・ラーム(写真は26年LIVゴルフ・インディアナポリス)
LIVゴルフの今季終了後、初のDPワールドツアー参戦となったラーム。会見でLIVの今後の不透明な情勢や自身の身の振り方について問われると、「インディアナポリス(LIV最終戦)以降、新しい情報はないよ」と短く答えるにとどめた。
しかし、この会見が行われたまさにその日の午後、LIVゴルフは米国でチャプター11(会社更生手続き)の適用を申請し、選手たちが過半数の株式を所有する「選手オーナー制」へと舵を切ることを電撃発表する。巨大な波乱が巻き起こる直前であっても、一切揺らぐことなく目の前のリンクス攻略だけに集中していたラーム。
2017年(ポートスチュワート)と2019年(ラヒンチ)でアイルランドオープンを制している「過去2度のチャンピオン」は、リンクスを制した歴代王者としての誇りが、その佇まいから溢れ出ている。
雨風すらも「この地域に来る魅力と挑戦の一部」と語るラーム。自然と闘うのではなく、自然に順応する彼の姿勢には、トッププロとしての圧倒的な余裕と凄みが漂う。今週末、強風吹き荒れるアイルランドの空を、彼の2番アイアンがどのような弾道で切り裂くのか。その一打一打から目が離せない。
写真/LIVゴルフ
