巨額のオイルマネーを背景に誕生し、新たな局面を迎えている世界男子ゴルフ界の勢力図。その中心に立つローリー・マキロイが、「アムジェン アイルランドオープン」の公式会見で、9月8日に米国連邦破産法第11条(チャプター11)に基づく会社更生手続きを申し立てた「LIVゴルフ」の将来について言及した。PGAツアー、そしてDPワールドツアーの絶対的看板選手である彼は、契約や資金面で揺れる「LIV 2.0」の現状をどう見ているのか。マキロイ独自の予測から、ゴルフ界再編のゆくえを紐解く。

「LIVを去る選手が出てくる」──法的ロジックに基づくマキロイの見解

サウジアラビアの政府系ファンド(PIF)の資金をベースにスタートしたLIVゴルフだが、現在その構造は大きな転換点を迎えている。PIFによる無制限の資金投入から、他社ファンド(BC Partners Credit等)を交えた事業再生と「選手オーナー制(LIV 2.0)」への移行が進む中、選手たちはどのような動向を見せるのか。

「私が彼らの立場にいるわけではないが、当初のLIVに比べると、資金面から見て『LIV 2.0』ははるかに魅力が薄れているように見える」

マキロイは、トップ選手たちにとって金銭的なメリットが低下しつつある現状を冷静に指摘した。さらに、今回のチャプター11申請が選手に与える影響について、明確な法的ロジックに基づいて次のように予測する。

「未来を完璧に予測することはできないが、破産申請によって契約違反が生じ、選手たちが法的拘束から解放されて自由の身になれば、間違いなくLIVを離脱する者が出てくるだろう」

かつてPGAツアーの急先鋒としてLIV批判の先頭に立ち、「(PGAツアーへの)復帰には厳しいペナルティを課すべきだ」と主張していたマキロイ。しかし理事職を辞し、さらに2025年にマスターズを制して悲願のキャリアグランドスラムを達成、欧州でもセベ・バレステロス(6度)を超え、コリン・モンゴメリーの最多記録(8度)に迫る絶対王者となった今、そのスタンスは大きく進化を遂げている。感情論を排し、実力者の復帰による競技レベル向上を歓迎する姿勢には、世界ゴルフ界を牽引する「知将・包容力のあるリーダー」としての威厳が漂う。

他ツアーへの波及効果と「ゴルフのエコシステム」

画像: LIVゴルフの崩壊がDPワールドツアーの隆盛に繋がると予見するローリー・マキロイ(写真は26年全英オープン)

LIVゴルフの崩壊がDPワールドツアーの隆盛に繋がると予見するローリー・マキロイ(写真は26年全英オープン)

では、LIVを離脱した実力者たちはどこへ向かうのか。マキロイは、PGAツアーの現行ルールにより、即時復帰が困難な彼らがDPワールドツアー(欧州ツアー)に戻ってくる可能性に言及し、それを前向きに評価している。

「LIVには、ゴルフのトーナメントを強化し、より競争力を高めることができる素晴らしい選手がたくさんいる。彼らが戻ってくることは、DPワールドツアーにとって良いことだと捉えている」

かつては激しく対立した選手たちであっても、彼らがツアーに戻ることで大会のレベルが上がるのであれば歓迎する。そこには、ゴルフという競技全体の価値を高めたいというマキロイの確固たる意志が存在する。

また、マキロイが描くこの「欧州ツアー強化」のシナリオに、現場の指揮官も即座に同調してみせたのが、2027年ライダーカップで欧州キャプテンを務めるルーク・ドナルドだ。

同大会の会見でLIVの破産申請について問われたドナルドは、「キャプテンとして最高の選手たちが選出可能になるのは大歓迎だ。ジョン(・ラーム)やティレル(・ハットン)のような選手がDPワールドツアーの試合に多く出られれば、自動選出枠(上位6名)に入る道筋が格段にひらける」と語り、LIV離脱組の欧州ツアー復帰が最強チーム結成に向けた最大の追い風になると明かした。

秋の5カ月間を活用する「グローバルエコシステム」構想

さらにマキロイは、単に復帰を歓迎するだけでなく、2027年以降を見据えた具体的なスケジュール構想を提示してみせた。

PGAツアーのレギュラーシーズンが8月で終了することに着目し、「9月から翌年1月までの5カ月間、PGAツアーのトップ選手たちには出場する試合がなくなる。彼らやLIV離脱組がこの空白期に欧州や世界各国の国際大会に組み込まれれば、トーナメントはよりハイレベルになり、プロゴルフ界全体の健全な循環構造にとって非常に良い結果をもたらすはずだ」と強く主張する。

対立と分断から、共存と再編へ。マキロイの言葉からは、世界中のファンが熱狂できる最高峰のトーナメント構想への期待が込められている。揺れ動く「LIV 2.0」の行方と、実力者たちの帰還。絶対王者が描くグランドデザインとともに、世界ゴルフ界の勢力図は新たなフェーズへと突入しようとしている。

写真/R&A


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