国内女子ツアー「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」に参戦中の山下美夢有と桑木志帆。海外女子メジャー「AIG女子オープン」優勝を成し遂げた2選手の最新クラブセッティングから読み取れる特徴を、プロゴルファー・中村修に解説してもらった。

山下・桑木のクラブセッティング詳細

海外、それもメジャー大会で結果を残した山下と桑木の2選手。現在参戦中の国内女子ツアー「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」でも2日目終了時点で4位タイ(桑木)、6位タイ(山下)と上位争いに加わっている。

画像: 山下美夢有(左)と桑木志帆(右)。現在ソニー日本女子プロゴルフ選手権に参戦中(写真/岡沢裕行)

山下美夢有(左)と桑木志帆(右)。現在ソニー日本女子プロゴルフ選手権に参戦中(写真/岡沢裕行)

そんな両名の最新クラブセッティングにはどのような特徴があるのか。「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」で確認できた、最新のクラブセッティングの詳細は以下の通りだ。

画像: 左が山下美夢有、右が桑木志帆のクラブセッティング

左が山下美夢有、右が桑木志帆のクラブセッティング

【山下美夢有のクラブセッティング】
1W:スリクソン ZXi(9度)・フジクラ スピーダーNX GOLD(4SR)
3W・5W:スリクソン ZX MkⅡ(15・18度)・フジクラ スピーダーNX GREEN(5SR)
4UT・5UT:スリクソン ZX MkⅡ(22・25度)・フジクラ ベンタスHB BLUE(7S)
6I:スリクソン ZXi5・トゥルーテンパー ダイナミックゴールド(8R)
7I~PW:スリクソン ZXi7・トゥルーテンパー ダイナミックゴールド(8R)
48度:クリーブランド RTZ・トゥルーテンパー ダイナミックゴールド(8R)
52・58度:クリーブランド RTZ・トゥルーテンパー ダイナミックゴールド(9R)
PT:テーラーメイド スパイダー ツアーX クランクネック
BALL:スリクソン Z-STAR XV

【桑木志帆のクラブセッティング】
1W:ブリヂストン BX1LS(9度)・三菱ケミカル ディアマナBB(5S)
3W:ブリヂストン B1ST(15度)・三菱ケミカル ディアマナWB(5S)
3UT・4UT:ブリヂストン BX2HT(19・22度)・三菱ケミカル テンセイプロ1kハイブリッド(7S)
5I~PW:ブリヂストン 241CB・日本シャフト NSプロ850GH(S)
48・52度:ブリヂストン BITING SPIN2・日本シャフト NSプロ950GH(S)
58度:ブリヂストン BITING SPIN プロトタイプ・日本シャフト NSプロ950GH(S)
PT:ピレッティ GSS ツアーオンリー
BALL:ブリヂストン B XS

アイアン、UTに「両者の特徴が出ています」

ではそれぞれのセッティングの特徴をプロゴルファー・中村修に解説してもらおう。

大前提として、山下と桑木は身長や持ち球が違う。そのため「共通点があるというわけではありません」と中村。一方で、「両選手ともショートゲーム巧者であり、それぞれのこだわりが感じられます」という。

「日本でもそうですが、とくに海外ではグリーンのコンディションや風の吹き方が毎試合違っていますし、当然すべてのショットをフルスウィングできるわけではありません。とくに、両選手が優勝したAIG女子オープンの場合は風が吹くリンクスコースでの開催が多いですよね。

毎試合異なる環境に対応する必要ができ、なおかつピンを狙う時に自分はどのくらいのロフトの番手だと打ちやすい、狙いやすいのか。これって結構好みで変わってきて、本当に1番こだわるところです。打った感触と弾道が一致していることが大事ですからね」(中村、以下同)

そして両選手の特徴が、グリーンオンを狙うことができるアイアンの構成に表れているという。

画像: 山下は米女子ツアー参戦時にアイアンを「スリクソン ZXi7」へ変更。ただし7~PWまでの採用で、6番は「ZXi5」のコンボセッティングとなっている

山下は米女子ツアー参戦時にアイアンを「スリクソン ZXi7」へ変更。ただし7~PWまでの採用で、6番は「ZXi5」のコンボセッティングとなっている

「山下選手の場合、2025年の米女子ツアー本格参戦を機に、アイアンも海外の環境に合わせて変更したそうです。ダンロップの担当者によれば、海外の芝対策で操作性と抜けを良くするため『ZX5mk2』から『ZXi7』に替えたとのこと。

6番を『ZXi5』にしたコンボセットなのも特徴的な点で、これも米女子ツアー参戦後の変更点ですね。

アイアンで重視されるのはグリーンを狙った時にしっかりと止められるかどうかです。そのためにはスピン量はもちろんですが、何より落下角度(ランディングアングル)が重要です。これが鈍角だとランが多くなってしまいますから。落下角度は45度が1つの目安になっていて、6番もZXi7だとヘッドスピードや入射角がより必要になってきますが、比較的やさしいモデルであるZXi5なら、クラブ自体が低重心になっていて、より高さを出しやすい。さらにスピン量も少なくて風の影響も受けにくいというわけです。
 
そして山下選手は身長も150cmと小柄でヘッドスピードがとても速いわけではないですが、理論値並みに高いミート率で飛ばす選手です。ヘッドスピードがあるわけではないので、6番アイアンでもグリーンで止められる高さを出すためのZXi5採用したわけです。また、身長に合わせてアイアンのライ角も約2度フラットにするなど、細かく調整しています」(中村、以下同)

対して桑木の場合はアイアンは5番からで、1モデルで統一されている。

画像: 桑木が採用するアイアンはブリヂストン「241CB」。桑木がメーカーとテストを重ね、調整が加えられている

桑木が採用するアイアンはブリヂストン「241CB」。桑木がメーカーとテストを重ね、調整が加えられている

「桑木選手はフェードヒッターで入射角が深く、スピン量が多少多くなります。身長163cmで、ヘッドスピードも計測で44.5m/s(ドライバーショットの場合)という数値が出るくらい出力できるタイプです。だからアイアンも5番から採用し、コンボにもしていないんです。出力がありますから、アイアンに限らず全番手Sフレックスを採用していますしね。
 
また、アイアンに関しても約8年使っていた『ツアーB X-CB』から『241CB』にスイッチしています。メーカー担当者によれば『厚い打感とソールの抜けにこだわり、ジュニア時代から替えられなかったアイアンからようやく切り替えられたモデル』とのことで、実際メッキをかけたりソールを削ったりと、かなり調整していて、いわゆる吊るしとは違う専用モデルのような仕上がりになっています。
 
アイアンだけでなく、選手たちはメーカーの担当者と何度もテストを重ね、様々な状況で自分の思う感触と弾道が得られるクラブを煮詰め、セッティングを作っています。これは桑木・山下選手に限らず言えることです」

5番アイアンを採用したぶん、ドライバーを除くウッド類が3W、3UT、4UTの3本構成になっている桑木。対して山下の場合は3W、5W、4UT、5UTと、地面から打つウッドを4本採用しているが、なかでもUTのシャフトのフレックスに注目してほしいと中村は言う。

画像: 山下はユーティリティ「スリクソン ZX MkⅡ」を2本採用。より飛距離を安定させるためSフレックスのシャフトを採用している

山下はユーティリティ「スリクソン ZX MkⅡ」を2本採用。より飛距離を安定させるためSフレックスのシャフトを採用している

「ドライバーからFWまではSRフレックス、アイアン以降はRフレックスのシャフトを採用していますが、UTの2本のみSフレックスなんです。これは山下選手にとって『UTもピンを狙う番手』ということの表れです。しなりが大きくなって飛び過ぎてしまうことを防ぐためのSだと考えられます。
 
ヘッドスピードの兼ね合いで、ドライバーやFWは飛ばす番手だからしなりが大きくなっても良いSR、アイアン以降はシャフト自体が重くなり安定感があるためRフレックス採用というわけです」

58度のバウンス角が両者「少なめ」

ショートゲームで重要となるのがウェッジ。両者ともに48・52・58度の3本構成だが「どちらの選手も工夫を凝らしています」と中村は言う。

画像: 山下はクリーブランド「RTZ」ウェッジを採用。48・52・58度の3本構成となっている

山下はクリーブランド「RTZ」ウェッジを採用。48・52・58度の3本構成となっている

「山下選手は、日本で戦っている時はバウンス角が10度でしたが、現在は8度になっていて、少し減らしていますね。またフルショットを打つ機会が多い48度だけ、アイアンからの流れで80g台のシャフトにしていて、52・58度は飛距離の調整が必要となるため90g台のシャフトを差していますね。
 
桑木選手は、メーカー担当者によれば『(58度に関しては)彼女の得意なロブショットを打ちやすくしたいと言う意見を取り入れたオリジナル形状』とのこと。正確に何度かはわかりませんが、ロブショットを打ちやすいように、ということならバウンスが少なめになっていると思われます。
 
両者とも、58度のバウンスが少なくなっていることで、地面やバンカーが硬い時にも跳ねにくいというメリットがあります。そしてバウンスが少なめのほうが地面が硬い時も対応しやすいし、フェースを開いて打つことでバウンスを調整することもできます。地面が軟らかいコースでは技術でカバーしているわけですね。
 
現地に行ったわけではないので実際どうだったかはわかりませんが、AIG全英女子オープンは地面が硬いコースが舞台になることが多いので、このバウンスが機能したのではないかと思います」

画像: 桑木はブリヂストン「BITING SPIN2」(48・52度)と「BITING SPIN プロトタイプ」(58度)の3本構成。58度に関しては得意なロブウェッジが打ちやすくなるよう調整されたオリジナル形状

桑木はブリヂストン「BITING SPIN2」(48・52度)と「BITING SPIN プロトタイプ」(58度)の3本構成。58度に関しては得意なロブウェッジが打ちやすくなるよう調整されたオリジナル形状

また「細かい部分ですが、ソールの形状にも好みが出ています」と中村。

「トレーリングエッジを半月状に削って、フェースを開きやすくして操作性を上げた『ハームムーンソール』という形状があります。
 
両者ともハームムーンソールのウェッジを採用していますが、桑木選手は52・58度はハームーンソールで、48度はそういう風にはなっていません。一方、山下選手の場合58度はややハーフムーンソールのようになっていますが、52度の時点で『ハームムーンには見えないな』という感じになっています。
 
操作性を求める程度はもちろん、実際にボールを打ってその後地面にバウンスが当たる時の感触がどのような感じであれば『良い』と思うのかという違いも出ていますね。当然、身長やクラブの入射角の差も影響しています」

ウェッジに関してはアプローチからフルショットまで、より広い範囲で使う番手。だからこそ、様々な状況を想定し、最適な感触や飛び方、弾道の高さが自分のイメージと一致するように調整しているということだ。

中村が指摘してくれたように、バウンス1つでも選手によって異なる調整がなされている。こういった知見を踏まえ、土日の日本女子プロでのプレーを見てみると、より観戦を楽しめるのではないだろうか。


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