「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会」で今季国内女子ツアー1勝目を飾った山下美夢有。正確無比なショットとパットを武器に、吉澤柚月とのプレーオフを制したスウィングをプロゴルファー・中村修が解説する。

国内メジャーの舞台で米ツアー組を国内勢が迎え討つ

改めてリーダーボードを振り返ると、優勝した山下美夢有をはじめ、勝みなみ、竹田麗央、畑岡奈紗、岩井明愛ら米国女子ツアー参戦組(11名)に対し、プレーオフで惜敗した吉澤柚月、桑木志帆、仲村果乃、河本結ら国内勢が迎え討つ図式となりました。特に最終日は上位陣の誰もに優勝のチャンスが残されており、最後まで目が離せない白熱した展開となりました。

画像: プレーオフで敗れはしたが大舞台で活躍した吉澤柚月

プレーオフで敗れはしたが大舞台で活躍した吉澤柚月

通算9アンダーでホールアウトした山下美夢有と吉澤柚月によるプレーオフへ突入し、1ホール目で確実にパーをセーブした山下が勝利を掴み取りました。敗れはしたものの、最終日をノーボギーで回り単独2位となった吉澤の健闘や、難セッティングに挑む選手たちのハイレベルなショット、深いラフからのマネジメント、勝負どころで見せる表情には、多くのゴルフファンがハラハラドキドキさせられたはずです。

画像: 「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会」で強さを見せて勝利した山下美夢有

「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会」で強さを見せて勝利した山下美夢有

難コースで際立った100ヤード以内の精度

深いラフと厳しいピン位置により総合力が問われるセッティングの中、山下のマネジメント力と100ヤード以内の精度が際立っていました。

その裏には、前年覇者として挑んだ「AIG全英女子オープン」でのまさかの予選落ちがありました。しかし彼女は、その2週間後の米ツアー「CPKC女子オープン」で2位に9打差をつける歴史的圧勝を飾ります。この復活劇の背景には、パー5のティーショットで無理にドライバーを持たず、得意な距離を残すという「原点」のプレースタイルを貫いたこと、そして1〜2ヤード刻みで打ち分ける正確なウェッジショットを取り戻したことがありました。

安定したリズムとテンポが強さの秘訣

今大会でも、首位タイで迎えた正規の18番でティーショットをラフに入れながら、そこから打ち出した82ヤードの3打目をピンそばにピタリと寄せてパーをセーブ。プレーオフではしっかりとフェアウェイを捉え、2オン2パットのパーで締めくくりました。

山下は普段から「テンポとリズムを一定にする」重要性を口にします。飛距離を出したい場面やタフなラフからのショットでは、トッププロであっても力みが生じがちです。

しかし、大会期間中で2番目の難易度を誇った18番で見せた冷静なマネジメント、そしてラフからでも乱れない一定のテンポとリズムにこそ、彼女の真の強さが表れていました。

スウィングの始動は「体主導」

連続写真から、リズムとテンポを一定に保つポイントを探ってみましょう。

スウィングの動き出しに注目すると、ヘッドや手元からではなく、体幹の動きに連動して始動していることが分かります。安定したアドレスから体幹を緩めずに体主導で一気にトップまで引き上げ、太く大きな筋肉をしっかり伸ばすことでダウンスウィングへのエネルギーを蓄えています。

画像: 体を主体に始動し、一定のリズムでトップまで一気に上げる

体を主体に始動し、一定のリズムでトップまで一気に上げる

スウィングのテンポが狂うと、切り返しのタイミングや体の動かし方にズレが生じます。ツアー会場でも、切り返しの“間”や「右ひざが前に出るタイミングが速い」と指摘する父・勝臣さんのアドバイスを耳にすることがありました。

もう一つの特徴は、バックスウィングからインパクトにかけての左への軸移動の少なさです。タイガー・ウッズやマキロイのように左足体重へ大きく移動しながら叩くタイプもいますが、山下は骨盤をボールより右サイドに置いたまま回転させています。そのため、右ひざが早い段階で前に出てしまうと振り遅れにつながり、ミスの原因になってしまうのでしょう。

骨盤の位置をフロント(左)・センター・リア(右)などのタイプ別に分類する理論があるように、最も効率よく力を出せる骨盤の位置には個人差があります。再現性が高く力を出せる自分本来の型を理解しておくことは、練習の方向性を間違えないためにも極めて重要なポイントです。

画像: 骨盤をボールの右サイドに置いて回す

骨盤をボールの右サイドに置いて回す

プレーオフをともに戦った吉澤の相棒・扇慎之介キャディは、正規の18番でラフに入れたティーショットを、プレーオフの土壇場で修正してフェアウェイへ置いた山下の姿に「流石だと思いました」と語っています。自分の飛距離とプレースタイルを信じ抜き、世界を舞台に戦う山下美夢有。これからどこまで勝利を重ねていくのか、今後の活躍が非常に楽しみです。(敬称略)

写真/岡沢裕行


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