オランダのベルナルダスゴルフで開催された欧米女子の対抗戦「ソルハイムカップ」最終日。8対8の同点で迎えた運命のシングルス戦を制し、15対13で欧州チームが2021年以来となる単独勝利を飾った。米国チームには世界ランキング1位のネリー・コルダをはじめ、米女子ツアー(LPGA)で圧倒的な強さを誇るトッププレーヤーたちが顔を揃えていた。それにもかかわらず、彼女たちはなぜアウェイの地で競り負けたのか。敗軍の将となった米国チームのキャプテン、アンジェラ・スタンフォードの言葉と両チームの明確な戦略差から、その敗因が浮き彫りとなった。

「なぜか欧州の選手はパットが入る」——主将の嘆きとデータによる裏付け

最終日の激闘を終え、記者会見に臨んだスタンフォード主将は潔く敗戦を認めた。

「欧州チームは今日、本当に素晴らしいプレーをした。背水の陣で失うものは何もないという状況で、その通りのプレーを見せた。我々も全力を尽くしたし、決して悪いプレーをしたとは思っていない」

しかし、勝負を分けた決定的な差について問われると、彼女は長年抱き続けている“ある疑問”と本音を吐露した。

「ただ、我々はパットが足りなかった。昔からずっと言っていることだけど、なぜか欧州の選手のほうがいつもパットが上手い。理由は今でも分からない。心当たりはあるけれど、今は言わないでおきます(笑)」

ショットのスタッツで互角以上に渡り合えていても、ことグリーン上での勝負になると欧州勢に軍配が上がる。この「欧州のパットが入る」背景には、データに基づいた明確な戦略が存在していた。欧州主将アンナ・ノードクビストは前日までのデータ分析において「今大会で最も多くバーディを獲っているトップ4」に欧州のチャーリー・ハル、カルロタ・シガンダ、ロッティ・ウォードが入っていた点に着目。なかでもショット・パッティングともに調子の高かったハルをシングルス第1組に抜擢し、序盤からリーダーボードを欧州の青色に染め上げてチーム全体に勢いをもたらす緻密な采配を振るっていたのだ。

米国選手を狂わせた「普段と違うグリーン速度」と天候の差

では、なぜ世界最高峰の米ツアーで戦う選手たちがこれほどまでにパットに苦しんだのか。そこには「グリーンスピードの違い」という罠と、環境変化への適応力の差が潜んでいた。

スタンフォード主将は、敗戦の全責任を背負い込むように一つの後悔を口にした。

「今回のグリーンは、7月に視察に来た時よりも明らかに遅かった。雨の影響ではないと思う。これが私の責任。選手たちに『もっと強く打て、もっと打て』と徹底して叩き込めなかった自分を蹴り飛ばしてやりたい」

米国主将が「雨の影響ではない」と自身に矛先を向けたのに対し、欧州主将ノードクビストは「7月の視察時は猛暑と乾燥でグリーンが固く速かったが、大会前の連日の雨と今週の雨でグリーンが非常に柔らかくなった」と天候によるコース物理の変化を正確に捉えていた。欧州側はこの雨を「幸運の兆し」とポジティブに捉えており、環境変化に対する精神的な受け止め方の差も現れていた。

画像: ジェニファー・クプチョなどロングパットを決めた選手もいたが、全体的にはグリーン上で欧州チームに分があった(Photo by Maddie Meyer/Getty Images)

ジェニファー・クプチョなどロングパットを決めた選手もいたが、全体的にはグリーン上で欧州チームに分があった(Photo by Maddie Meyer/Getty Images)

米ツアーの高速グリーンに慣れきった選手たちにとって、遅いグリーンに合わせてインパクトの強さをアジャストすることは容易ではない。「パットの打ち方を変えるというのは本当に難しいこと」と主将自身が語るように、長年培ってきたタッチの感覚を数日で修正するのは世界トッププロであっても至難の業であった。

アウェイの圧力とモメンタムの奪い合い

勝負の局面では、アウェイ特有の重圧とモメンタム(勢い)のコントロールの差も浮き彫りとなった。

土曜日の午後に米国チームに追いつかれて8対8の同点にされた際、欧州チームはホテルへ戻るチームバスの中で名曲『Sweet Caroline』を全員で熱唱。敗北感を一瞬で吹き飛ばし、日曜日のシングルスへ向けて気分を素早くリセットしていた。

【動画】優勝後のバスの中でも『スウィート・キャロライン』が歌われた【ソルハイムカップチームヨーロッパ公式X】

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さらに、地元大ギャラリーの大歓声を「13人目のプレーヤー」として味方につけた欧州勢に対し、米国のポーラ・クリーマー副主将も「欧州ギャラリーの熱気が凄まじく、米国チームが本来乗るべき勢いを生み出すのが難しかった」とアウェイの重圧を認めている。

勝利を決定づけた場面では、強心臓と無欲のプレーが光った。チーム勝利を決める15点目を挙げたカルロタ・シガンダは、2023年大会に続き2大会連続で優勝決定ポイントを獲得した史上2人目の選手となった。「アウェイでアメリカを倒す瞬間が最高の快感」と語るシガンダの勝負強さ、そしてカップ奪還に必要な14点目を獲得した22歳のルーキー、ロッティ・ウォードがスコア計算を誤解したまま「これがチームの勝利を決めるパット」と知らずに集中して沈めた無欲のエピソードなど、土壇場での精神力が勝敗を分けた。

2年後のリベンジに向けて

アウェイ特有の芝、そして想定外のグリーンスピード。そのわずかな環境の変化への適応力が、最終的なスコアの差となって表れた。

敗戦の悔しさを滲ませながらも、スタンフォード主将は米国チームの結束を誇りに思っている。

「彼女たちは決して揺らがなかった。この敗北は、プレーした彼女たちのほうが痛感しているはず。でも良いニュースは、2年後のケンタッキー(地元開催)でこの雪辱を果たす機会があるということです」

アウェイの洗礼を受けた米国チームは、この苦い経験を糧に、2年後の奪還を誓う。


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