キャプテンズピックの成功と、世界1位・コルダへの肉薄
今大会の欧州チームは、ノードクビスト主主将の慧眼が光った。彼女がキャプテンズピック(主将推薦)として選出した4名の選手は、プレッシャーのかかる大舞台で「8勝4敗1分(勝ち点率.654)」という2013年大会(.875)以来となる驚異的な成績を叩き出し、チームの屋台骨を支えたのである。周囲から「ルーキー2人を組ませるのはリスク」と見られていたナスタシア・ナドーとミミ・ローズのペアを初日から抜擢して勝利させ、ナドーがチーム最多タイの3ポイントを獲得する大ブレイクを果たしたのも、主将の分析力と勇気の賜物だ。
最終日のシングルス戦で会場を沸かせたのは、そのルーキーのひとり、ミミ・ローズが見せた堂々たる戦いぶりだった。彼女の対戦相手は、世界ランキング1位に君臨する絶対女王ネリー・コルダ。普通であれば名前負けしてしまうところだが、ローズは怯むことなく女王に立ち向かった。
結果こそ4&2で敗れたものの、ローズは15番ホールまでコルダに食い下がる健闘を見せた。これにはノードクビスト主主将も「ミミは世界1位の選手を15番まで追い詰めた。彼女たちルーキーが恐れ知らずにプレーしてくれたことを、心から誇りに思う」と最大級の賛辞を贈っている。
電撃戦術が生んだモメンタムと「13人目のプレーヤー」
この欧州の快進撃を支えたのは、データ分析に基づく主将の電撃采配だった。ノードクビスト主将は前日までのデータから「今大会で最も多くバーディを奪っている上位4選手」の中に欧州のシガンダ、ハル、ウォードの3名が入っていることを見抜いていた。それまで勝ち星のなかったチャーリー・ハルを「調子自体は非常に高い」と判断してシングルス第1組に抜擢すると、ハルは見事に3&2で先勝。リーダーボードは序盤から欧州の青色に染まり、チーム全体に爆発的な勢い(モメンタム)をもたらした。
実は、ソルハイムカップの歴史において、最終日シングルス戦を8対8の同点で迎えたケースは過去7回あるが、その7回すべてでホームチームが勝利またはカップを保持(6勝0敗1分)している。地元の熱狂的な大ギャラリーはまさに「13人目のプレーヤー」として欧州勢を後押ししたのだ。
無欲のルーキーと「彼女にチャンスはない」シガンダの決定打
若手が勢いづけたチームの勝利を、最もドラマチックな形で決定づけたのは、22歳のルーキーと情熱のベテランだった。
欧州チームの勝利を確定づける14点目を勝ち取ったのは、ルーキーのロッティ・ウォードだった(オーストン・キムに2&1で勝利)。土曜日まで勝ち点に恵まれず落胆していたウォードだが、主将から「バーディ数では全体3位」というデータを示されて自信を取り戻していた。17番のショートパットを沈めた瞬間、彼女は「これがチームの勝利を決めるパットだとは知らず、自分のマッチに勝つことだけに集中して打っていた」という無欲の境地で大仕事を成し遂げた。
そして、15ポイント目を奪い欧州の優勝を決定づけたのは、スペインのカルロタ・シガンダだった。彼女はジェニファー・クプチョを相手に4&2で完勝し、2023年大会に続き「2大会連続で欧州の優勝を決定づけるポイントを獲得した史上2人目の選手(カトリオナ・マシュー以来)」という歴史的な偉業を成し遂げた。
前日のマッチで、上がり2ホールに神がかり的なプレーを見せていたクプチョに対し、シガンダは内に秘めていた凄まじい“殺気”を笑顔で明かした。
「彼女と対戦すると知って、本当に嬉しかった。昨日の彼女のプレーは素晴らしかったけれど、『今日は彼女にチャンスはない。絶対に倒してやる』と思っていた。明確な意志を持って、ただチームのために戦ったの」
勝負を決める瞬間の、この冷徹で残酷なまでの闘争心こそが、シガンダの圧倒的な強さの源泉だ。
国とチームを背負うゴルフの醍醐味

優勝した欧州チームのメンバーたち(Photo by David Cannon/LET)
プロゴルフは通常、個人戦のスポーツだ。しかし、ソルハイムカップのようなチーム戦には、個人の名誉や賞金を超越した特別な力が宿る。
「自分以上の大きな存在(チームや国)のために戦う時、なぜか最高の力が引き出される。大好きなチームメイトのために勝つこと、これが私がゴルフをする理由よ」とシガンダは語った。
冷徹な殺気と、チームへの深い愛情。データ分析に基づいた科学的采配と、若手たちの無欲な躍動。相反する要素が極限のメンタルゲームで融合した時、アウェイの猛者たちを退ける絶対的な強さが生まれるのである。
