コーンフェリーツアー最終戦「コーンフェリーツアー選手権」。来季のPGAツアー出場権を懸けた過酷なサバイバルレースで生まれた逆転劇。大会前のポイントランキングで22位。杉浦悠太のわずかひとつ下のランク(昇格圏外)からスタートしたオースティン・ヒットは、最終日に「66」を叩き出し、通算20アンダーで圧巻の逆転優勝を飾った。コーンフェリーツアー通算78試合目で掴み取った悲願の初勝利。3部ツアーであるPGAツアーアメリカズで3度、さらに今季の「アドベントヘルス選手権」を含め何度も「2位」に泣かされてきた“2位コレクター”が、最も過酷な最終戦でついに頂点を極めた。大会結果を反映した最終ポイントランキングを「6位」へと急浮上させ、自らの手でPGAツアーへの切符を掴み取った。

前夜のメッセージ「Just go out and win」と覚悟

しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。ホールアウト後のインタビューで、彼は極限状態にあった自身の精神状態をこう生々しく告白している。

「昨晩は緊張で眠れなかった。リーダーボードを見てトップ10に入れば……などと考えるのではなく、『勝つしかない、自分にはそれしか道はないのだ』と思い込ませようとした」

重圧に押し潰されそうになる中、迷いを完全に吹き消したのが、PGAツアーで活躍する友人ベン・グリフィンから前夜に届いた「明日誰かが勝つ。そして勝ったやつが昇格するんだ(Just go out and win)」というシンプルなメッセージだった。

日曜日のコースは断続的な雨と風が吹き荒れる過酷なコンディションだったが、ショットの調子が万全ではなかった彼にとって、この雨は恵みとなった。

「スウィングが100パーセントの状態ではなかったからこそ、雨のおかげで『軽くコントロールして打つ』戦略に徹することができた。それが功を奏したんだ」

さらに、彼には目に見えない「運」も味方した。3番ホールのティーショット。完全にアウトオブバウンズ(OB)へ向かっていたボールは、木に当たって奇跡的にフェアウェイへと跳ね返ってきたのだ。

「天国から父がボールをフェアウェイに投げ返してくれたのかもしれない」

ヒットは、亡き父への思いを口にしながら、この信じられないバウンドを振り返った。

10番での勝負手、そして母との涙の抱擁

勝負を決定づけた最大のハイライトは、10番ホール(パー5)で訪れた。ティーショットを右ラフに入れ、前日・前々日と攻め方に苦しんでいた場面。ここで彼の脳裏をよぎったのは、10番での攻略法について語り合ったグリフィンからのもうひとつの言葉だった。

「安全にプレーする必要はない。少しアグレッシブに行くべき瞬間が必ず来る。それが勝つための方法だ」

ヒットはその金言に従って力強く振り抜き、2打目でクリーク(小川)越えを見事に成功させてフェアウェイへ。ボールが川を越えた直後、彼はキャディに「今がその(アグレッシブに行くべき)瞬間だった」と打ち明けた。そしてピンまで109ヤードの3打目、50度のウェッジから放たれたボールはそのまま直接カップイン。勝負を決定づける劇的なイーグルとなった。

そして18番で優勝を決め、感涙にむせぶヒットの不意を突いたのは、会場に駆けつけていた母親の姿だった。18番グリーン上にサプライズで現れた母と抱き合い、人目をはばからず涙を流すヒット。亡き父が見守り、母と喜びを分かち合った瞬間だった。

【動画】オースティン・ヒット、ホールアウト後に母が出迎える【コーンフェリーツアー公式X】

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通算20アンダーでの見事な戴冠。それは単なる技術の勝利ではない。極限の重圧に耐え抜く覚悟、雨という自然の助け、木に当たる奇跡のバウンド、そして背中を押した友人の言葉と家族の絆。そのすべてが完璧に噛み合って生まれた優勝劇だった。

画像: コーンフェリーツアー選手権で優勝したオースティン・ヒット。ポイントランクは22位から6位にジャンプアップし、逆転でPGAツアー昇格を決めた

コーンフェリーツアー選手権で優勝したオースティン・ヒット。ポイントランクは22位から6位にジャンプアップし、逆転でPGAツアー昇格を決めた

わずか1ランク、1ストロークの差で昇格を逃し、酷烈な現実に直面した杉浦悠太ら敗者たちの影には、こうした人知を超えたドラマが存在していた。すべてを引き寄せる爆発力と運を持った者だけが、PGAツアーという最高峰の舞台へと足を踏み入れることを許されるのである。

写真/Getty Images


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